講演情報

[S07-04]南大西洋下D″領域の3次元S波速度構造推定に向けた波形インバージョン手法の正確性向上のための改良

*大鶴 啓介1、河合 研志1 (1. 東京大学)
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D″領域はマントルの最下部数百kmを占める熱境界層であり、マントルのダイナミクスを解明する上で重要な存在である。D″領域には、太平洋下とアフリカ下の2箇所に巨大S波低速度域(LLSVP)が存在することが知られている。これらは高温または化学組成(もしくはその両者の組み合わせ)の異常によるものと考えられるが、詳しいことは未だわかっていない。
アフリカLLSVPの西側境界付近にはファラロンスラブが沈み込んできていると考えられており、両者の相互作用の様子を詳細に解像することができればLLSVPの正体の解明に大きく近づくことができると期待される。特に、LLSVPの成因に迫るためには地震波速度異常の振幅も重要な情報となる。しかし、LLSVPが存在する南半球は地震波によるサンプリングが乏しい上、低速度異常の解像は特に難しく、これまで行われてきた全マントルトモグラフィーによる構造推定では水平方向に1000 km程度の解像度しか実現できていない。
我々の研究グループで開発されてきた波形インバージョン法は低速度異常の推定にも有効な手法であり、この領域の構造を水平方向数百kmの高い解像度で推定できると期待できる。しかしこの手法には、推定したモデルにおける摂動の振幅が、使用する波形の周期帯や対象領域を分割したボクセルのサイズに依存してしまうという課題があった。この問題はボクセルサイズが地震波の波長に比べて大きくなるほど顕著であり、解像度が比較的低い領域でボクセルサイズを大きく取る際に特に問題となる。
本研究では、推定したモデルの振幅が安定しない原因が、ボクセル内の偏微分係数波形をボクセルの中心点におけるもので代表させる近似であることを特定した。そこで、ボクセル内の各地点での偏微分係数波形を補完して足し合わせることで以前より正確な偏微分係数波形を計算する手法を開発した。この手法を用いて波形インバージョンを行うことで、あまり解像度の良くない領域においても摂動の振幅も含めてより正確な構造を推定できると期待される。
この新しい波形インバージョン手法を、アフリカ大陸の地震波観測網によって蓄積されてきているデータに適用することで、アフリカLLSVP西側境界域にあたる南大西洋下のD″領域の詳細な3次元S波速度構造を推定する。本発表ではこの構造推定結果とその解釈について紹介する。