講演情報

[S08-18]局所応力分布に制御される6メートル長実験断層の破壊過程

*山下 太1、福山 英一2,1、大久保 蔵馬1、松本 圭晶1 (1. 国立研究開発法人防災科学技術研究所、2. 京都大学大学院工学研究科)
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南海トラフ等のプレート沈み込み帯で巨大地震が発生する際、断層全域が一度に破壊する場合だけでなく、その一部のみが破壊する場合や、残りの領域が時間差をおいて破壊する場合など、様々なパターンで断層が破壊することが知られている。破壊する領域の大きさに応じて地震の規模や引き起こされる被害は大きく異なるため、なぜ破壊が途中で止まるのかを理解することは重要であるが、そのメカニズムの全容は必ずしも明らかではない。一方、室内実験では模擬断層上において破壊の停止が再現されるとともに、破壊停止の条件を破壊先端におけるエネルギー収支の観点から説明できることが示されている(例えばBayart et al., 2018, JGR; Ke et al., 2018, GRL)。ただしそれらの実験における断層破壊の停止は制御されたものではないため、破壊停止条件のより系統的な調査や個別に発生する断層破壊が互いに与える影響の理解は困難であった。そこで我々は、停止をはじめとする断層破壊過程のより深い理解のため、模擬断層上の応力分布を制御可能な大型岩石摩擦試験機(Yamashita et al., 2024, JpGU)を用いた実験研究を行った。

試験機のフレーム内には低摩擦ローラーのついたテーブルの上に2本の変はんれい岩試料が積み重ねられており、その接触面(模擬断層面)の大きさは長さ6 m、幅0.5 mである。上側試料とフレームの間には西から東にNL1からNL6と名付けられた6本の油圧ジャッキが設置されており、これらのジャッキにより断層面に垂直応力が与えられる。断層面へのせん断応力は、フレームに固定されたせん断油圧ジャッキにより下側試料の西端面に荷重を加える事で与えられる。断層の両側に沿ってひずみゲージアレイが設置されており、その計測から局所的なせん断応力τ及び垂直応力σがそれぞれ130 mm、260 mmの間隔でモニターされている。

実験は前後半2つのフェイズからなり、前半では垂直応力を載荷した後、一定の載荷速度でせん断応力を上昇させる。このフェイズではスティックスリップが繰り返し発生しており、ひずみゲージアレイを使った測定により、断層端のどちらか一方から始まった破壊が一方向に伝播していることが明らかとなっている。この特徴は有限要素法による静的なモデリングと調和的である(Yamashita et al., 2024, JpGU)。後半では垂直・せん断応力共に載荷した状態で、一つの垂直載荷ジャッキの荷重を徐々に低下させる。これにより局所的な垂直応力が低下しτ/σが上昇する。その結果、除荷したジャッキ付近で震源核が形成され、双方向に伝播する断層破壊が引き起こされる。このことは、本試験機を用いた実験において任意の場所から破壊を起こせることや、その結果として生じる応力変化により断層面上の応力分布をある程度制御できることを示している。

我々は実験GB01-051においてこの特長を利用し、断層破壊過程の制御をおこなった。前半では垂直応力2.8 MPa、一定載荷速度0.01 mm/sの条件でせん断実験をおこない、後半では最初にNL1を除荷しイベントUL-01を引き起こした。続いて荷重を載荷し巨視的な垂直応力とせん断応力を元のレベルに戻した後、再びNL1を除荷してUL-02を引き起こした。UL-01、02どちらもNL1付近から明瞭な震源核形成を経て断層全体が破壊するイベントで、巨視的なせん断応力の降下量はそれぞれ72.0 kPa、63.6 kPaだった。その後、断層東側の局所的せん断応力を低下させるためNL3を除荷し、連続した3つのイベント(UL-03、04、05)を発生させた。そして巨視的なせん断応力を元のレベルに戻した後、再びNL1を除荷してUL-06を発生させたところ、期待通り途中で破壊が停止し、断層東側では局所的な応力降下量Δτが負となった。また、巨視的なせん断応力降下量はわずか9.6 kPaであった。局所的な応力状態を確認したところ、前半の最後に発生したスティックスリップイベント後の局所的なせん断応力値を残留応力τr(≒動的摩擦強度)と定義した場合、UL-06発生前の初期せん断応力τ0がτrより小さい領域とΔτが負の領域の分布が調和的であった。さらに破壊先端近傍の局所的なせん断応力の極大値τmaxとτrを比較したところ、τmax<τrとなる領域がバリアとなり破壊が停止したことが明らかとなった。これらの結果は、破壊が始まる地点や断層全体に載荷された巨視的な応力値が同じであっても、局所的な応力分布によって生じる断層破壊過程やイベントの大きさが異なることを示す良い事例であると考えられる。引き続き様々な条件での破壊過程を再現し、破壊停止の詳細な条件を明らかにする予定である。