講演情報
[S08-20]臨界核サイズの静的応力降下量および垂直荷重への依存性:大型岩石摩擦実験による検討
*松本 圭晶1、大久保 蔵馬1、山下 太1、福山 英一2,1 (1. 国立研究開発法人防災科学技術研究所、2. 京都大学大学院工学研究科)
臨界核サイズ (Lc)は,地震の核形成過程を特徴づける基本的なパラメータであり,理論的には静的応力降下量に関係することが示されている(Andrews, 1976, JGR).また, Lcは断層面に作用する法線応力に依存すると考えられ,摩擦実験に基づく先行研究もこれを支持している(Latour et al., 2013, GRL; McLaskey, 2019, JGR).しかし, Lcの静的応力降下量および法線応力との依存関係を詳細に検討するためには,広い範囲にわたる Lcを観測可能な十分な断層サイズと,高密度の計測システムが必要である.従来の岩石摩擦実験では装置規模の制約により,これらの条件を満たすことが難しく, Lcと静的応力降下量および法線応力の関係を直接的に調べることは困難であった.
本研究では,防災科学技術研究所に設置された大型二軸摩擦試験機を用いて,自然地震に近いスケールの模擬断層上で繰り返し破壊核形成を発生させ,その空間的な成長過程を高密度に設置したひずみゲージで観察した.これにより,各イベントの Lc,破壊核付近の垂直荷重と静的応力降下量を計測して,三者の関係性を実験的に調査した.実験に用いた岩石試料はインド産変斑レイ岩であり,上部試料(6.0 m × 0.5 m × 0.75 m)と下部試料(7.5 m × 0.5 m × 0.75 m)を積み重ね,両者の接触面(6.0 m × 0.5 m)を模擬断層とした.上部ブロックの両側面には,模擬断層から 15 mm離れた位置に 130 mm間隔でひずみゲージを設置し, 1 MHzで連続収録を行った.垂直荷重は6基の油圧ジャッキにより加え,下部ブロックには一端からせん断荷重を与えて,反対端は自由端とした.
各実験では,断層のせん断応力がマクロなせん断強度に近づいた状態でせん断ジャッキを固定し,その後,中央部の油圧ジャッキによる垂直荷重を徐々に低下させることで,断層中央部の法線応力を減少させ,破壊核形成を誘発した.発生したイベントに対して,ひずみデータから局所的なせん断応力を算出し, 50 μsの窓を用いた移動平均で平滑化した後,せん断応力のピークの時空間的変化から破壊伝播速度(Vr)を推定した.McLaskey(2019, JGR)と同様に, Vrが 0.1Vs(Vs = 3700 m/s)以下の領域の長さを Lcと見なし,上部ブロック両側面のひずみデータからそれぞれ独立に見積もったうちの大きい方を代表値とした.
様々な垂直荷重条件下で発生したイベントから得られた Lcは 0.4〜4.0 mの範囲に分布した.まず,各イベントの Lcの領域内における初期せん断応力と残留応力(イベント発生から 0.1 s後のせん断応力)の差を平均し,静的応力降下量として評価した.その結果, Lcと静的応力降下量の間には,1乗に反比例する明瞭な関係が認められた.この関係はマクロな垂直荷重の違いによらず一貫しており, Lcが局所的な静的応力降下量と相関があることが示された.
さらに,破壊核付近の垂直載荷荷重と静的応力降下量の関係を調べたところ,両者の間に正の相関が確認された.すなわち,断層中央部の垂直荷重を減少させるほど,イベント発生時の静的応力降下量が小さくなる傾向が得られた.また, Lcと垂直荷重の関係を調べると,垂直荷重の増加に伴い Lcが減少する傾向が認められ,先行研究(Latour et al., 2013, GRL; McLaskey, 2019, JGR)と整合的であった.ただし,この関係は, Lcと静的応力降下量の関係ほど明瞭ではなく,イベント間にばらつきが認められた. Lcと垂直荷重の間の弱い相関関係は,静的応力降下量が垂直荷重に依存することを介して間接的に表れている可能性がある.これらの観測結果は, Lcが本質的には静的応力降下量に依存している可能性を示すとともに, Lcの理解には断層近傍における高密度観測が重要であることを示唆する.
本研究では,防災科学技術研究所に設置された大型二軸摩擦試験機を用いて,自然地震に近いスケールの模擬断層上で繰り返し破壊核形成を発生させ,その空間的な成長過程を高密度に設置したひずみゲージで観察した.これにより,各イベントの Lc,破壊核付近の垂直荷重と静的応力降下量を計測して,三者の関係性を実験的に調査した.実験に用いた岩石試料はインド産変斑レイ岩であり,上部試料(6.0 m × 0.5 m × 0.75 m)と下部試料(7.5 m × 0.5 m × 0.75 m)を積み重ね,両者の接触面(6.0 m × 0.5 m)を模擬断層とした.上部ブロックの両側面には,模擬断層から 15 mm離れた位置に 130 mm間隔でひずみゲージを設置し, 1 MHzで連続収録を行った.垂直荷重は6基の油圧ジャッキにより加え,下部ブロックには一端からせん断荷重を与えて,反対端は自由端とした.
各実験では,断層のせん断応力がマクロなせん断強度に近づいた状態でせん断ジャッキを固定し,その後,中央部の油圧ジャッキによる垂直荷重を徐々に低下させることで,断層中央部の法線応力を減少させ,破壊核形成を誘発した.発生したイベントに対して,ひずみデータから局所的なせん断応力を算出し, 50 μsの窓を用いた移動平均で平滑化した後,せん断応力のピークの時空間的変化から破壊伝播速度(Vr)を推定した.McLaskey(2019, JGR)と同様に, Vrが 0.1Vs(Vs = 3700 m/s)以下の領域の長さを Lcと見なし,上部ブロック両側面のひずみデータからそれぞれ独立に見積もったうちの大きい方を代表値とした.
様々な垂直荷重条件下で発生したイベントから得られた Lcは 0.4〜4.0 mの範囲に分布した.まず,各イベントの Lcの領域内における初期せん断応力と残留応力(イベント発生から 0.1 s後のせん断応力)の差を平均し,静的応力降下量として評価した.その結果, Lcと静的応力降下量の間には,1乗に反比例する明瞭な関係が認められた.この関係はマクロな垂直荷重の違いによらず一貫しており, Lcが局所的な静的応力降下量と相関があることが示された.
さらに,破壊核付近の垂直載荷荷重と静的応力降下量の関係を調べたところ,両者の間に正の相関が確認された.すなわち,断層中央部の垂直荷重を減少させるほど,イベント発生時の静的応力降下量が小さくなる傾向が得られた.また, Lcと垂直荷重の関係を調べると,垂直荷重の増加に伴い Lcが減少する傾向が認められ,先行研究(Latour et al., 2013, GRL; McLaskey, 2019, JGR)と整合的であった.ただし,この関係は, Lcと静的応力降下量の関係ほど明瞭ではなく,イベント間にばらつきが認められた. Lcと垂直荷重の間の弱い相関関係は,静的応力降下量が垂直荷重に依存することを介して間接的に表れている可能性がある.これらの観測結果は, Lcが本質的には静的応力降下量に依存している可能性を示すとともに, Lcの理解には断層近傍における高密度観測が重要であることを示唆する.
