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[S08-21]スロースリップイベントの発生間隔と速度・状態依存摩擦則のパラメター推定

*加藤 尚之1 (1. 東京大学地震研究所)
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速度・状態依存則を用いた数値シミュレーションにより周期的に発生するスロースリップイベントを再現し,シミュレーションで得られたイベントの発生間隔と1自由度バネ-ブロックモデルに基づく発生間隔の理論値との比較を行い,理論値がシミュレーション結果をよく説明する条件を調べた.また,この結果を利用してプレート境界の摩擦パラメターを推定する可能性について議論した.
 均質無限弾性体中の平面断層に速度・状態依存則に従う摩擦がはたらくとする.円形の速度弱化域(a−b<0)と,その周囲の速度強化域(a−b>0)を仮定し数値シミュレーションを行った(a, bは速度・状態依存摩擦則のパラメター).速度弱化域の半径rvwと摩擦パラメターから決まる不安定すべり発生のための臨界半径rcが近いときには周期的にスロースリップイベントが発生する.本研究では周期的に発生するスロースリップのみに着目し,非周期的に発生するイベントや地震性すべりイベントは対象外とする.1自由度バネ-ブロックモデルに基づきRuina (1983)が不安定すべり発生の条件を導いた際,ブロックの振動の周期も得られており,周期はa,b,特徴的すべり量L,載荷速度の関数で表される.バネ定数kと臨界バネ定数kcの比(弾性体の場合はrvw/rcで置き換える)を用いて周期の理論値を補正すると,速度弱化域のa/b(< 1)が1に近い場合はシミュレーションで得られたスロースリップイベントの発生間隔Trを良く説明する.a/bが0に近くなると,rvw/rcが1に非常に近い場合を除き,シミュレーションで得られた発生間隔は理論値よりも大きくなり,速度強化域の摩擦パラメターにも依存するようになる.これは,イベントのすべりが速度弱化域の外側まで伝播していくことが原因と考えられる.
 シミュレーションでは,イベントの発生間隔Trのほかにイベントの継続時間τも調べた.τ/Trは概ね0.02~0.1であり,rvw/rcが大きくなるほど小さくなる傾向があった.
 Kano et al. (2024)は,速度・状態依存則を仮定したモデルを用い,豊後水道で発生するスロースリップイベントのモーメント時間変化を説明するような摩擦パラメターを推定した,イベントの発生間隔を再現するようにパラメターを推定しているわけではない.彼らの推定した摩擦パラメターを用いて,本研究で結果に基づいてTrを計算すると5.55~5.95年になり,観測されている発生間隔約6年に近い値が得られる.
 スロースリップ発生の条件(rvw/rcとa/b),Tr,τ/Trが得られれば,スロースリップ発生域の摩擦パラメターの推定に役立つ可能性がある.

文献
Kano, M. et al. (2024), Earth Planets Space, 76, 57, doi:10.1186/s40623-024-02004-9.
Ruina, A. L (1983), J. Geophys. Res., 88, 10359-10370.