講演情報
[S09-02]大地震前後および流体による断層破壊過程の特徴変化: 日本における小地震の地震波放射エネルギーの網羅的推定から
*織茂 雅希1、吉田 圭佑1 (1. 東北大学理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)
大地震前後で断層破壊過程の特徴が変化する可能性 (e.g., Chaves et al., 2020; Folesky & Kummerow, 2024) や地殻内流体が断層破壊過程に影響を与える可能性が指摘されている (e.g., Goertz‐Allmann et al., 2011; Orimo et al., 2025; Yoshida et al., 2017). 具体的には, 岩盤のダメージによる応力降下量の一時的減少 (e.g., Chaves et al., 2020), 断層帯の透過率上昇に伴う間隙水圧低下や断層端における応力集中などによる応力降下量の一時的増加 (e.g., Folesky & Kummerow, 2024) などが報告されている. 地殻内流体が発生に関与したと考えられている群発地震活動 (e.g., Yoshida et al., 2017) や前駆的地震活動 (e.g., Chen & Shearer, 2013) において応力降下量が小さい地震群の存在が報告されている.
しかしながら, 大地震前後での断層破壊過程の変化や地殻内流体による断層破壊過程の変化は断片的にしか調べられていないため, 上記が典型的な現象かどうかは分かっていない. 上記を検討するために, 本研究では地震波放射エネルギーに着目する. 具体的には, 地震波エネルギー (ER) を地震モーメント (M0) で規格化した規格化エネルギー (eR) (e.g., Kanamori et al., 1993; Yoshida & Kanamori, 2023) を用いる. eR を網羅的に推定することにより, 大地震前後での断層破壊過程の変化や地殻内流体による断層破壊過程の変化が典型的な現象であるかどうかを調べる.
日本における大地震 (Mw>6.0) 震源域と地殻内流体が豊富に存在すると考えられる火山地域で発生した小地震 (2.0<Mjma<3.0) を対象に, 震源スペクトルを用いて eR を推定する. 初めに, 地震波の後続波を用いるコーダ規格化法 (e.g., Aki, 1980; Aki & Chouet, 1975) に基づいてサイト特性と非弾性減衰 Q-1 を推定した. 次に, 観測スペクトルからサイト特性と非弾性減衰 Q-1 の影響を取り除くことにより各地震の震源スペクトルを推定した (Orimo et al., 2025; Takahashi et al., 2005; Yoshida et al., 2017). 最後に, 震源スペクトルから ER と M0 を推定することにより各地震の eR を推定した. その結果, 地域毎に 500 ~ 5000 個の小地震の eR を推定することができた. 得られた eR は 10-5 ~ 10-4 の間に分布しており, 先行研究 (e.g., Abercrombie, 1995; Baltay et al., 2011; Ide & Beroza, 2001) の推定値と同程度であった. eR は1桁程度ばらついて分布していた. 断層破壊過程が多様であることを示唆している.
大地震前後での断層破壊過程の特徴の違いを調べるために, 大地震震源域における eR の時間変化を調べた. Mw<6.3 本震震源域においては本震前後で eR に顕著な時間変化が見られなかった. 一方, Mw>6.4 本震震源域では, eR が本震直後に一時的に増加する傾向が見られた. 本研究の結果のみに基づいてその要因を断定することは難しいが, 断層帯の透過率上昇による間隙水圧の低下 (e.g., Sibson, 1992), 断層端における応力集中 (e.g., Das & Henry, 2003), 余効すべりに伴う載荷速度増加による断層の不安定化 (e.g., Kato et al., 1992) などに起因している可能性がある. 得られた結果は, ある一定以上の規模 (本研究では Mw>6.4 ) の大地震では, その前後で断層破壊過程が変化することが典型的な現象であることを示唆する.
流体が断層破壊過程に与える影響を調べるために, eR と最近傍火山からの距離の関係を調べた. その結果, 多くの地域において火山近傍で発生した地震の eR が相対的に小さい傾向が見られた. 解析対象域内の火山直下には, マグマや流体を反映した低速度域 (e.g., Hasegawa et al., 2005; Zhao et al., 2018) や高減衰域 (e.g., Nakajima et al., 2013; Wang et al., 2017) が存在することが知られている. 得られた結果は, 流体よって断層破壊過程の特徴が変化することが典型的な現象であることを示唆する. 具体的には, eR が応力降下量と放射効率の積に相関すること (e.g., Kanamori & Brodsky, 2004) に基づくと, 流体によって応力降下量や破壊伝播速度が低下していた可能性がある.
しかしながら, 大地震前後での断層破壊過程の変化や地殻内流体による断層破壊過程の変化は断片的にしか調べられていないため, 上記が典型的な現象かどうかは分かっていない. 上記を検討するために, 本研究では地震波放射エネルギーに着目する. 具体的には, 地震波エネルギー (ER) を地震モーメント (M0) で規格化した規格化エネルギー (eR) (e.g., Kanamori et al., 1993; Yoshida & Kanamori, 2023) を用いる. eR を網羅的に推定することにより, 大地震前後での断層破壊過程の変化や地殻内流体による断層破壊過程の変化が典型的な現象であるかどうかを調べる.
日本における大地震 (Mw>6.0) 震源域と地殻内流体が豊富に存在すると考えられる火山地域で発生した小地震 (2.0<Mjma<3.0) を対象に, 震源スペクトルを用いて eR を推定する. 初めに, 地震波の後続波を用いるコーダ規格化法 (e.g., Aki, 1980; Aki & Chouet, 1975) に基づいてサイト特性と非弾性減衰 Q-1 を推定した. 次に, 観測スペクトルからサイト特性と非弾性減衰 Q-1 の影響を取り除くことにより各地震の震源スペクトルを推定した (Orimo et al., 2025; Takahashi et al., 2005; Yoshida et al., 2017). 最後に, 震源スペクトルから ER と M0 を推定することにより各地震の eR を推定した. その結果, 地域毎に 500 ~ 5000 個の小地震の eR を推定することができた. 得られた eR は 10-5 ~ 10-4 の間に分布しており, 先行研究 (e.g., Abercrombie, 1995; Baltay et al., 2011; Ide & Beroza, 2001) の推定値と同程度であった. eR は1桁程度ばらついて分布していた. 断層破壊過程が多様であることを示唆している.
大地震前後での断層破壊過程の特徴の違いを調べるために, 大地震震源域における eR の時間変化を調べた. Mw<6.3 本震震源域においては本震前後で eR に顕著な時間変化が見られなかった. 一方, Mw>6.4 本震震源域では, eR が本震直後に一時的に増加する傾向が見られた. 本研究の結果のみに基づいてその要因を断定することは難しいが, 断層帯の透過率上昇による間隙水圧の低下 (e.g., Sibson, 1992), 断層端における応力集中 (e.g., Das & Henry, 2003), 余効すべりに伴う載荷速度増加による断層の不安定化 (e.g., Kato et al., 1992) などに起因している可能性がある. 得られた結果は, ある一定以上の規模 (本研究では Mw>6.4 ) の大地震では, その前後で断層破壊過程が変化することが典型的な現象であることを示唆する.
流体が断層破壊過程に与える影響を調べるために, eR と最近傍火山からの距離の関係を調べた. その結果, 多くの地域において火山近傍で発生した地震の eR が相対的に小さい傾向が見られた. 解析対象域内の火山直下には, マグマや流体を反映した低速度域 (e.g., Hasegawa et al., 2005; Zhao et al., 2018) や高減衰域 (e.g., Nakajima et al., 2013; Wang et al., 2017) が存在することが知られている. 得られた結果は, 流体よって断層破壊過程の特徴が変化することが典型的な現象であることを示唆する. 具体的には, eR が応力降下量と放射効率の積に相関すること (e.g., Kanamori & Brodsky, 2004) に基づくと, 流体によって応力降下量や破壊伝播速度が低下していた可能性がある.
