講演情報

[S15-20]令和6年能登半島地震の震源域の建物被害に寄与した強震動特性の解明を目的とした観測微動データに関する検討

*伊藤 恵理1、川瀬 博2、山中 宏起3、松島 信一4、長嶋 史明4 (1. 建築研究所 国際地震工学センター、2. 日本建築総合試験所、3. 京都大学大学院工学研究科建築学専攻、4. 京都大学防災研究所)
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本研究の最終目的は、令和6年能登半島地震の震源域において、強震動の特性が建物被害に与えた影響を把握することである。将来発生する内陸地殻内地震の被害評価に資する情報として、当該地震の強震動が、どのように建物被害に寄与したかを解明することは重要である。そのためには建物被害に寄与する強震動の特性と建物そのものの特性を分析する必要があるが、今回、発表者らは、まず建物被害に寄与する強震動の特性について分析した。本発表では、大被害を生じた市街地で計測した微動記録から求めた水平上下スペクトル比(MHVR)から、近年提案した手法(VACF法)を用いて推定した水平動のサイト増幅特性(HSAF)を示すとともに、それを踏まえて実施した面的な微動観測の初動解析結果を報告する。
 川瀬ほか(2025)によると、K-NET、KiK-net強震観測地点のうち、被害が甚大だった珠洲市のISK002、輪島市のJMA_E10では、一般化スペクトル分離解析(GIT)で得られた地震基盤から地表までのHSAF(以下、観測HSAFと表記)は1Hzをピークとするやや低振動数領域で80倍から100倍に達する顕著なピーク値を有していることが分かった。これらの値は、被害が少なかった珠洲市のJMA_CCA、輪島市のISK003と比較して5~10倍も大きい値である。
 Ito et al. (2020)では、日本国内の強震観測地点1,600地点以上でGITにより得られた個々の地点の上下動サイト増幅特性(VSAF*)の平均値に相当する上下動補正関数(VACF)により、地震動水平上下比(EHVR)を補正して擬似水平動サイト増幅特性(pHSAF)を推定する手法(VACF法)を提案している。前述した珠洲市のISK002、輪島市のJMA_E10における特異なHSAFを再現するため、このVACFをMHVRへ適用し、pHSAFを求めた。その結果、観測HSAFと周波数特性はよく類似したものが得られたが、ピーク振幅が過少となった。
 一方で、各地点固有のVSAF*をMHVRへ適用し、再度pHSAFを求めると、VACFを使用した場合よりも観測HSAFがよく再現された。このことは、HSAFが特異に大きいサイトでは、水平動も上下動も通常の一次元地盤増幅仮定では説明がつかず、二次元および三次元共振を考慮する必要がある可能性を示唆している。また、澤田ほか(2012)が示した重力異常の分布において輪島市・珠洲市が周辺よりも低い値となっていることも、地震基盤より浅い地盤の構造が三次元盆地状となっていることを示唆している。
 以上の結果を踏まえ、堆積岩で形成される地震基盤より上部の盆地構造を明らかにすることを目的に、珠洲市・輪島市において、0.2Hz~2Hzのやや低振動数帯域をターゲットに、面的微動観測を行った。輪島市内中心部では250m間隔、周辺部では500m間隔で、合計75地点、珠洲市は範囲が広いため、市内中心部で500m、周辺部1km間隔で合計47地点において単点微動観測を行った。また、、盆地を横切る直交2測線で同時観測(リニアアレイ観測)を行った。その上で、このアレイ測線上の観測地点において、微動の原波形と、0.1-0.5HzのButterworth型のバンドパス・フィルターをかけた波形の比較を行った。この理由は、盆地に二次元および三次元共振現象が生じている場合には異なる観測地点間で同位相となるはずで、その現象を確認するためである。この周波数範囲は二次元および三次元共振現象が生じていると推定される範囲として選定した。その結果、幅約4kmの範囲において、フィルター後の波形は伝播性状(同一形状の波形が時間ずれを持って伝播しているように見える性状)を示しておらず、特に中心部の観測地点群で同位相の傾向を示しており、二次元および三次元盆地共振が生じている可能性が考えられる。
 今後全地点のデータを活用し、ピーク振動数の空間分布をもとに二次元および三次元共振現象が生じている空間領域を把握する予定である。それとともに、EHVRあるいはpEHVRを用いた速度構造インバージョンを実施し、二次元および三次元共振をコントロールしている深部構造を把握するなど、より詳細な検討を行いたい。また本震時の被害分布を説明するために、現地の建物の振動性状を把握し、面的に再現された地震動を用いた被害分布の再現に向けた準備を進めたい。
 なお本研究は、東京大学地震研究所・京都大学防災研究所拠点間連携共同研究2024-K-03「令和6年能登半島地震の震源域の強震動特性が建物被害に及ぼした影響の解明」の支援を受けて実施した。