講演情報
[S16-02]空間自己相関法により Rayleigh 波減衰係数を推定する試み
*木村 春里1、盛川 仁1 (1. 東京科学大学)
表層地盤の速度構造を推定することは、地表面における地震動を予測する上で重要であり、そのための手法は数多提案されている。なかでも、非破壊的に原位置における地盤構造を推定することのできる空間自己相関(SPAC)法は、完全にパッシブな方法であり実施に要するコストが低いことからも広く用いられている。
一方で、おなじく地表面における地震動の予測において重要な役割を有すると考えられる、表層地盤の減衰構造を推定するための手法はそれほど多く提案されていない。とりわけ、パッシブな手法で局所的な減衰構造を対象とするような手法は数えるほどしか提案されていない。先述のSPAC法を拡張する形で減衰を推定する研究は、Nakahara (2012)による基礎研究に端を発するParolai et al. (2014)やCho & Iwata (2021)などがあるが、これらは伝播する波が減衰するという点の他に、従来のSPAC法における波動場に対する仮定とは異なる仮定をおいている。具体的には、任意の方位から任意のパワーで平面波として到来する波の重ね合わせとして波動場が構成されるとする従来のSPAC法の仮定とは異なり、空間的に均質にランダムに存在する点震源から発せられる波の重ね合わせとして波動場が構成されるとしている。このような不整合は、通常のSPAC法が正しく機能していることを認めるならば、疑問符を付さずに受け入れることはできない。これらのSPAC法に基づくアプローチの他に、SPAC法とその適用先が類似する周波数-波数スペクトル(FK)法を拡張することで減衰を推定する手法も提案されている(Abbas et al. 2025)。同手法は一定程度の性能を有するように思われるが、その理論的根拠には明確でない部分がある。以上のように、パッシブな手法により局所的な減衰構造を推定するための手法は未だ確立されているとは言えない。
本研究は、従来のSPAC法において仮定する波動場のスペクトル表示を修正し、指数減衰の影響を組み込むことにより、減衰を考慮したSPAC法の理論的基礎を整備するものである。先述した既存のアプローチと異なり、本研究で取るアプローチでは、減衰の影響を考慮する点以外は従来のSPAC法と同様の仮定をおく。この仮定のもと、従来のSPAC法における定式化を踏襲してSPAC係数を理論的に導出した。結果として、減衰を考慮した上で得られるSPAC係数は、従来のSPAC 法におけるそれと極めて類似した形となり、とりわけその実部はほとんど従来のそれと同一のものとなった。一方で、従来は波動場が等方的であることの確認などにしか用いられることの無いSPAC係数の虚部は、減衰のレベルを反映してその値が変化することがわかった。
減衰の値の大小に対して、減衰を考慮したSPAC係数の虚部が十分に大きく変化し、種々のノイズに埋もれないことを確認するため、合成データによる検証を行った。具体的には、数値的に合成した波動場を用いて、観測記録の有限性に起因する確率論的誤差や、波動場の非等方性による方位エイリアシング、そしてデータロガーや周辺環境等によるインコヒーレントノイズの条件を変え、減衰を考慮したSPAC係数の虚部が理論値からどの程度はずれるかを確認した。その結果、従来のSPAC法で用いられる三角形アレイを使用する場合には方位エイリアシングの影響を強く受ける一方で、確率論的誤差やインコヒーレントノイズに対しては十分に頑強であることがわかった。また、従来のSPAC法と同様に、円周上の観測点数を増やせば方位エイリアシングの影響も軽減できることがわかった。
一方で、おなじく地表面における地震動の予測において重要な役割を有すると考えられる、表層地盤の減衰構造を推定するための手法はそれほど多く提案されていない。とりわけ、パッシブな手法で局所的な減衰構造を対象とするような手法は数えるほどしか提案されていない。先述のSPAC法を拡張する形で減衰を推定する研究は、Nakahara (2012)による基礎研究に端を発するParolai et al. (2014)やCho & Iwata (2021)などがあるが、これらは伝播する波が減衰するという点の他に、従来のSPAC法における波動場に対する仮定とは異なる仮定をおいている。具体的には、任意の方位から任意のパワーで平面波として到来する波の重ね合わせとして波動場が構成されるとする従来のSPAC法の仮定とは異なり、空間的に均質にランダムに存在する点震源から発せられる波の重ね合わせとして波動場が構成されるとしている。このような不整合は、通常のSPAC法が正しく機能していることを認めるならば、疑問符を付さずに受け入れることはできない。これらのSPAC法に基づくアプローチの他に、SPAC法とその適用先が類似する周波数-波数スペクトル(FK)法を拡張することで減衰を推定する手法も提案されている(Abbas et al. 2025)。同手法は一定程度の性能を有するように思われるが、その理論的根拠には明確でない部分がある。以上のように、パッシブな手法により局所的な減衰構造を推定するための手法は未だ確立されているとは言えない。
本研究は、従来のSPAC法において仮定する波動場のスペクトル表示を修正し、指数減衰の影響を組み込むことにより、減衰を考慮したSPAC法の理論的基礎を整備するものである。先述した既存のアプローチと異なり、本研究で取るアプローチでは、減衰の影響を考慮する点以外は従来のSPAC法と同様の仮定をおく。この仮定のもと、従来のSPAC法における定式化を踏襲してSPAC係数を理論的に導出した。結果として、減衰を考慮した上で得られるSPAC係数は、従来のSPAC 法におけるそれと極めて類似した形となり、とりわけその実部はほとんど従来のそれと同一のものとなった。一方で、従来は波動場が等方的であることの確認などにしか用いられることの無いSPAC係数の虚部は、減衰のレベルを反映してその値が変化することがわかった。
減衰の値の大小に対して、減衰を考慮したSPAC係数の虚部が十分に大きく変化し、種々のノイズに埋もれないことを確認するため、合成データによる検証を行った。具体的には、数値的に合成した波動場を用いて、観測記録の有限性に起因する確率論的誤差や、波動場の非等方性による方位エイリアシング、そしてデータロガーや周辺環境等によるインコヒーレントノイズの条件を変え、減衰を考慮したSPAC係数の虚部が理論値からどの程度はずれるかを確認した。その結果、従来のSPAC法で用いられる三角形アレイを使用する場合には方位エイリアシングの影響を強く受ける一方で、確率論的誤差やインコヒーレントノイズに対しては十分に頑強であることがわかった。また、従来のSPAC法と同様に、円周上の観測点数を増やせば方位エイリアシングの影響も軽減できることがわかった。
