講演情報
[S19-01]東北沖地震震源断層掘削:IODP Exp. 405 JTRACK航海概要
*小平 秀一1、氏家 恒太郎2、Conin Marianne3、Regalla Christine4、Kirkpatrick James5、Fulton Patrick6、前田 玲奈1、奥津 なつみ1、江口 暢久1、IODP Exp.405 Science Party7 (1. 海洋研究開発機構、2. 筑波大学、3. University of Lorraine、4. Northern Arizona University、5. University of Nevada、6. Cornell University、7. IODP Exp.405 Science Party)
2011年東北地方太平洋沖地震(Mw9.1)は、日本海溝浅部のプレート境界断層において極めて大きな地震時すべりを伴い、甚大な津波を引き起こした。この地震の震源断層の構造および物理過程の解明を目的として、2012年にはIODP第343次航海(JFAST)が実施され、断層帯試料採取、掘削同時検層、温度計測により、巨大断層すべりを起こした断層の摩擦特性や地震時の応力変化に関する重要な知見が得られた。しかし、地震後の一点の掘削データ・試料からは断層帯の構造や応力状態の時空間変化は未解明であった。そこで、これらの課題に対応するため、2024年9月から12月にかけてIODP第405次航海(JTRACK)が実施された。JFAST掘削点近傍(海溝から約6 km陸側)のC0019孔では、前縁プリズムから海洋地殻に至るコア試料の取得に成功し、断層帯および周辺の構造・岩相・変形様式を詳細に記載することが可能となった。掘削同時検層では深度約960 mbsfまで掘削し、断層周辺の現在の応力状態評価を可能とする物理検層データも取得した。さらに二基の孔内観測装置をJFAST孔とJTRACK孔に設置し、長期的な温度計測を開始した。これにより、断層帯の水理構造や流体移動から、断層すべり挙動に影響する物理環境の時系列変化を明らかにすることが期待される。温度計は2025年10月に回収・再設置予定である。また、海溝から約8 km沖側のC0026孔では、沈み込み前の堆積層の掘削・検層を行い、その岩相・物性・堆積環境を明らかにした。これらの堆積物は将来的にプレート境界断層に取り込まれ、その摩擦特性やすべり挙動に影響を与えると考えられる。本航海で得られたコア試料、物理検層データ、長期温度計測記録は、断層帯の構造・物性・応力状態の時空間変化に関する前例のない情報を提供し、巨大浅部地震すべりの発生メカニズムの総合的解明に大きく貢献するものである。また、JTRACKでは科学調査に加え、航海中に教育・広報活動を積極的に展開し、乗船者によるオンライン配信やメディア発信、教育プログラムを通じて、海洋掘削の意義や地震災害理解の重要性を国内外に広く発信した。本講演ではJTRACKの航海概要と初期成果について報告する。
