講演情報
[S21-03]月面地震観測ネットワーク構築に向けたレーザー干渉式広帯域地震計の開発
*新谷 昌人1、小野寺 圭祐2、川村 太一3、辻 健4、田中 智5 (1. 東京大学地震研究所、2. 岡山大学惑星物質研究所、3. パリシテ大学地球物理研究所、4. 東京大学大学院工学系研究科、5. 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)
本研究は月面上に地震観測網を展開し、月の内部構造や内部活動を明らかにすることを目標としている。1960~1970年代のアポロ計画で月面に複数の地震計が設置され、月の地震活動や内部構造に関してさまざまな知見が得られているが、地震観測点が5箇所と少数であり、月の表側に限られているため、月の裏側のデータが欠落しており月の全球的な解析には不十分である。また、月面地震観測における課題の一つが散乱波の影響であり、短波長の地震波が月面表層付近のレゴリス層によって強く散乱され、内部境界層に対応する地震波形が不明瞭になることが知られている。これを回避するためにはレゴリスの空間スケールより十分長い波長の地震波を観測することが有効と考えられる。NASAの火星着陸探査機InSightでは火星における広帯域地震観測が行われ、そのデータから火星表層付近の散乱波の影響を避けるため0.1Hz以下の低周波の地震波を検出できる広帯域地震計の有用性が示されている。
これらの背景を踏まえ、本研究では広帯域地震計が組み込まれ、月面上で長期観測できる地震観測モジュールの開発を行っている。アポロ計画の地震観測の知見によると、地球と比べて月の地震活動度は低く、背景雑音も極めて小さいことから、検出性能が高く月面環境で長期間動作し、さらに電力・サイズ・重量等のリソースが少ない地震計が必要である。これらの条件をクリアするため、本研究グループではレーザー干渉計を用いた広帯域地震計の開発を行っている。レーザー干渉計は、光波長を基準とした高い変位検出性能と優れた環境耐性があり、月面上に展開される地震計に適している。一方、広帯域地震計には長周期の振り子が使用されるため、ロケットで打ち上げ、宇宙で使用するためにはリソースの制約や長周期振り子の耐振性能等の構造上の課題をクリアする必要がある。国内で開発された宇宙探査用地震計としては、2004年に打ち上げを予定していたLUNAR-A計画で月面に打ち込むペネトレータタイプの地震計が開発されており、地上試験を経て宇宙実証できる技術レベルのものが完成していた。ただし、プロジェクトが中止されたため月面実証する機会が失われていた。そこで本研究では開発期間を短縮するため、レーザー干渉計とLUNAR-Aの地震計振り子を組み合わせ、広帯域地震計と同等の制御を適用することで小型のレーザー干渉式広帯域地震計を試作し性能評価を行った。
小型化のためレーザー干渉計部分をユニット化し、単一波長(1550nm帯)のレーザーダイオードから光ファイバー経由で干渉計ユニットに光源が導入される。LUNAR-A振り子のマスには再帰鏡が付けられ、レーザー干渉計測によりマスの変位が高精度に検出される。干渉信号は干渉計ユニットから光ファイバー経由で取り出し、光検出器で電気信号に変換される。この信号を振り子のマスにフィードバックし、広帯域地震計として動作させる。3.3Hzの固有振動数の振り子を用いた結果、0.1Hz~50Hzで平坦な速度特性を持つ広帯域地震計が構成された。さらに、レーザー波長を基準とする地震計出力の校正を試行し、高精度に地震計単体で実行できることが示された。これは、月面の長期観測において、観測データの質を担保するために有用である。
現在、レーザー干渉式広帯域地震計のパッケージ化を行い、月面における長期観測が可能な地震観測モジュールとして開発を進めている。本観測モジュールは民間企業による月面着陸機打ち上げの機会を活用し、まず第一歩として月面極域における観測実証を目指している。その後も月面での有人活動等に伴う打ち上げ機会を利用して月面上での観測点を増やし、全球的な広帯域地震観測網を構成することが長期的目標である。本研究では月面上の長期観測を想定した開発を進めているが、同様の極限環境である地球上の地下深部や火山地域、海底等に設置する広帯域地震計への応用も可能と考えている。講演では、地震計の開発状況や性能評価結果、今後の実証スケジュール等についても報告する。
これらの背景を踏まえ、本研究では広帯域地震計が組み込まれ、月面上で長期観測できる地震観測モジュールの開発を行っている。アポロ計画の地震観測の知見によると、地球と比べて月の地震活動度は低く、背景雑音も極めて小さいことから、検出性能が高く月面環境で長期間動作し、さらに電力・サイズ・重量等のリソースが少ない地震計が必要である。これらの条件をクリアするため、本研究グループではレーザー干渉計を用いた広帯域地震計の開発を行っている。レーザー干渉計は、光波長を基準とした高い変位検出性能と優れた環境耐性があり、月面上に展開される地震計に適している。一方、広帯域地震計には長周期の振り子が使用されるため、ロケットで打ち上げ、宇宙で使用するためにはリソースの制約や長周期振り子の耐振性能等の構造上の課題をクリアする必要がある。国内で開発された宇宙探査用地震計としては、2004年に打ち上げを予定していたLUNAR-A計画で月面に打ち込むペネトレータタイプの地震計が開発されており、地上試験を経て宇宙実証できる技術レベルのものが完成していた。ただし、プロジェクトが中止されたため月面実証する機会が失われていた。そこで本研究では開発期間を短縮するため、レーザー干渉計とLUNAR-Aの地震計振り子を組み合わせ、広帯域地震計と同等の制御を適用することで小型のレーザー干渉式広帯域地震計を試作し性能評価を行った。
小型化のためレーザー干渉計部分をユニット化し、単一波長(1550nm帯)のレーザーダイオードから光ファイバー経由で干渉計ユニットに光源が導入される。LUNAR-A振り子のマスには再帰鏡が付けられ、レーザー干渉計測によりマスの変位が高精度に検出される。干渉信号は干渉計ユニットから光ファイバー経由で取り出し、光検出器で電気信号に変換される。この信号を振り子のマスにフィードバックし、広帯域地震計として動作させる。3.3Hzの固有振動数の振り子を用いた結果、0.1Hz~50Hzで平坦な速度特性を持つ広帯域地震計が構成された。さらに、レーザー波長を基準とする地震計出力の校正を試行し、高精度に地震計単体で実行できることが示された。これは、月面の長期観測において、観測データの質を担保するために有用である。
現在、レーザー干渉式広帯域地震計のパッケージ化を行い、月面における長期観測が可能な地震観測モジュールとして開発を進めている。本観測モジュールは民間企業による月面着陸機打ち上げの機会を活用し、まず第一歩として月面極域における観測実証を目指している。その後も月面での有人活動等に伴う打ち上げ機会を利用して月面上での観測点を増やし、全球的な広帯域地震観測網を構成することが長期的目標である。本研究では月面上の長期観測を想定した開発を進めているが、同様の極限環境である地球上の地下深部や火山地域、海底等に設置する広帯域地震計への応用も可能と考えている。講演では、地震計の開発状況や性能評価結果、今後の実証スケジュール等についても報告する。
