講演情報
[S21-08]土星衛星タイタン離着陸探査Dragonflyにおける地震観測パッケージの開発状況
*白石 浩章1、三谷 烈史1、川村 太一2、小野寺 圭佑3、山田 竜平4、田中 智1、村上 英記5、Lorenz Ralph6、Mehr Lauren6、Sotzen Kristin6、Hacala Ryan6 (1. 国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系、2. パリシテ大学, パリ地球物理研究所, フランス国立科学研究センター、3. 岡山大学惑星物質研究所、4. 会津大学 復興創生支援センター、5. 高知大学、6. ジョンズホプキンス大学応用物理学研究所)
2019年に米国NASAのニューフロンティア計画の4番目として採択された土星衛星タイタン離着陸探査ミッション「Dragonfly」はタイタンにドローン型の離着陸機を投入し、複数の着陸地点で化学分析、気象観測、及び地球物理的観測をおこない生命前駆物質とそれらを進化させるに至った古環境を調査する。ヒートシールドの役割をもつ大型カプセルに搭載されたDragonfly探査機は2028年7月にファルコンヘビーロケットにより打ち上げられ、2034年12月にタイタン大気圏に高速で突入する。パラシュートによる減速と動力飛行により、北半球赤道付近にあるSelkクレータ(直径約70km)近傍の砂丘地帯に降り立って約3年間の離着陸と科学観測を実施する。Dragonfly探査機には、DraGMet(Dragonfly Geophysical and Meterological Package)と呼ばれる物理観測と物性測定を行う12種類のセンサー群が搭載されるが、その1つとしてJAXA宇宙科学研究所が月・惑星探査用に開発してきたものをベースとする短周期地震計が含まれている。タイタン内部で発生する地震動や大気誘因の揺動を観測するための地震計パッケージ(DraGMet SEISmometer)の主要部分を構成する短周期地震計、プリアンプ回路、風除けカバーを日本側が担当する。窒素大気を主成分とする1.5気圧の大気とマイナス180℃の極低温という過酷なタイタン表層で安定して稼働できる観測装置とするため、その環境を模擬する極低温加圧チャンバーを開発した。そして、機能試作モデルおよびエンジニアリングモデルを製作して耐環境性を向上させる改良を施したり、センサー性能の温度依存性を調べたりしてきた。25年1月、DraGMet詳細設計審査が開催され、フライトモデル/フライトスペアの製作開始が承認されたことを受けて、同年2月から製作を開始し、同8月までに国内設備での宇宙環境耐性・性能試験を完了した。このうち、フライトモデルは地震計、プリアンプ回路、風除けカバーを一体化するアセンブリを行って探査機システムを担当する米国ジョンズホプキンス大学応用物理学研究所に輸出済みである。今後はウィンチリール機構やデータ処理回路との機械的結合と電気的噛み合わせ、本組み後の環境試験を経て26年夏ごろに探査機システムに合流する予定である。本講演では、Dragonflyミッションにおける地震観測の概要とフライトモデルの性能試験結果について報告する。
