[3a2001-04] スポーツ人類学／口頭発表①

13:36 〜 13:56

[12人-口-04] 場所から門戸へ中国武術訓練場における空間秩序の変化

*李 恩熙¹ (1. 日本体育大学)

武術を練習する者にとって、身分は非常に重要である。公園で武術を練習している人でさえ、他の人から「何の拳を練習しているのか、誰に師事しているのか、どの門戸のものか」と尋ねられる。「門戸」は武術における基本的な概念であり、実践者は自分の身分を構築するために「門戸」に所属する。候は、「門戸」の本質は「結党」であり、自らの共同体を形成し、より多くの生存資本を獲得することだと考えている。陳は、「門戸」は師弟制度を関係の中心として構築された特殊な集団組織と捉え、共有文化と共通の利益要求の2つの基本条件を満たし、安定した構造を形成すると考えた。これらの学者の説明によれば、「門戸」は、「伝承する」空間として存在するものである。しかし、最初の原点に戻っても、「門戸」がどのようにして生まれたのかはまだ説明されていない。「門戸」は空から現れるものではない。「門戸」の生成の最初の「土地」、つまり訓練場に戻る必要があると考えている。
　したがって、本研究の目的は、武術訓練場の内部空間と「門戸」空間の関係性を明らかにすることである。研究方法では、参与観察、半構造化インタビュー、ケーススタディのフィールドワークである
1、訓練場の物理的空間-社会空間
　支配者（師匠）は武術のスキルを「知識」として、空間を通じて権力と知識を実際の権力に変換する。そのため、訓練場の中に権力は空間をツールとして、実践者を規律訓練している。
2、物理的空間-社会的空間から「門戸」空間へ
　「門戸」空間では、上述した権力の階層や境界は「透明化」される。実践者は新たな師匠となり、新たな「門戸」を興すことができる。また、「門戸」空間では内外の区別がなく、皆が「門戸」の一員となる。
　さらに、実践者が師匠となると、新たな物理的空間-社会空間から「門戸」空間への変化が始まり、その新たな師匠が新しい物理的空間-社会空間における権力の支配者となる。