講演情報

[11教-ポ-04]Mary A. Johnstoneの女子体育論の考察1920年代イギリスの学校体育における内容の構想に着目して

*廣兼 志保1 (1. 島根大学)
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メアリー・A・ジョンストンは1890年代末から1930年代初頭にイングランド諸都市の中等教育学校長を務めた人物である。本研究はジョンストンが1924年に出版した著書“The Physical Training of Girls”を一次史料として用い、以下の①~③を考察した。①ジョンストンは19世紀後半から20世紀初頭のイギリスにおける女子を対象とした学校体育をどのように批判していたのか。②①の改善に向けて、ジョンストンは教育目的を体現するどのような理想像を掲げたのか。③少女達の心身の発達に資するために、ジョンストンはどのような身体文化の素材を選択し学校体育の内容を構想したのか。
ジョンストンは19世紀後半のイギリスにおける女子を対象とした学校体育には思慮と一貫性が欠けていたと批判し、中流階級を対象とした中等教育学校においてはジェンティリティを身に付けるためのダンスや立ち居振る舞いの授業が実施された一方で、民衆を対象とした学校では子どもの身体の教育は殆ど実施されていなかったと述べた。また彼女は1923年においても少女のための学校体育には統一された教育目的や普遍的な教育方法や教育の境界線を示す国家としてのシステムが無いという現状を指摘した。
このような現状の改善に向けて、ジョンストンは学校体育の目的を体現する理想の女性像を提示した。それは、心身共にバランスがとれてリズミカルであること、明晰な思考力と素早い決断力と鑑識眼をもち、美しい発声ができること、であった。理想像を実現するためにジョンストンは「全身の発達を提供する」「有害な負担を課さない」「興味ある楽しい活動に満ちている」「自然な指導方法に基づく」「適切な段階設定がされている」「都市の自然からかけ離れた生活を是正できる」「日常生活に浸透する」という条件を満たす学校体育の内容を構想した。

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