[11-1610] ジョイントシンポジウム（日本腎臓ﾘﾊ学会）_CKD・透析患者の身体活動 UP TO DATE　〜理論と実際〜

16:55 〜 17:10

[11-1610-4add] 血液透析患者の身体活動管理の実践

臼井　直人 (医療法人嬉泉会　嬉泉病院　リハビリテーション科　科長)

2008年：立川中央病院 リハビリテーション科
2011年：嬉泉病院 リハビリテーション科
2014年：嬉泉病院 リハビリテーション科 科長
2025年：順天堂大学大学院 医学研究科 腎臓内科学 非常勤助教

透析患者では高齢化と身体機能低下に加え、腎不全や透析治療に起因した尿毒症症状、潜在的な心不全、protein energy wasting（腎不全に起因した低栄養状態）、不安定な血行動態や疲労感、治療に伴う時間的制約などの要因が関与し、身体活動量は大きく低下する。従って身体活動量の管理には、高齢者や慢性疾患患者に対して取り組まれている従来からの標準的アプローチに加え、透析集団特有の影響にも配慮した多面的なアプローチが必要と考えられる。
　我々が実施している透析患者を対象とした多施設共同研究に前向きに登録された375例（69.1±11.8歳）の解析結果によると、国際標準化身体活動質問票（IPAQ short ver.）で評価した週当たりの活動量は中央値で297 Mets・min、快適歩行時間に換算すると週当たり約100分しか歩行を実施しておらず、67％が低活動に該当した。さらに、活動量低下にはいずれの年代においても身体機能低下が関与する一方、以前より低活動の要因として懸念されている透析施設への通院手段（自家用車や施設送迎利用の有無）も身体活動量と関連することが示された。従って、個々の身体機能や自宅周囲の環境などから適切な通院手段を選択することも重要な視点と考えられた。また、透析中の血行動態が不安定な患者では、身体機能低下の有無にかかわらず活動量が低く転倒による骨折リスクが高いことも示唆された。透析日の身体活動量向上の重要性も示されているが、特に透析日は血行動態や運動・活動時の症状などから安全に活動ができる状態かを個々に見極め、多職種でその改善に取り組むことも重要である。
　また、生活範囲の評価指標であるLife-Space Assessmentについての分析結果では、町外まで活動範囲が拡大することでIPAQ short ver.により評価した低活動を概ね脱すること、町外へ行く活動範囲の確保にはSPPBにおいて満点が概ね必要であることが示唆された。生活範囲の観点から活動量を捉え、各段階の生活範囲を制限する障壁を取り除いき、自宅内、自宅周囲、町内、町外へと活動を拡大することも有効なアプローチ手段の一つとなる可能性がある。本講では、我々が実施している多施設共同研究であるREPnet-HD studyの分析結果を中心に紹介し、透析患者の身体活動管理に対する介入法について考察する。