講演情報
[O-3-1]重症患者における糖尿病既往と退院時日常生活動作自立度との関連:多施設コホート研究
*渡辺 伸一1、山内 康太2、内藤 裕治3、篠原 史都4、飯田 有輝5
1. 岐阜保健大学 リハビリテーション学部 理学療法学科
2. 製鉄記念八幡病院 リハビリテーション部
3. 静岡医療センター リハビリテーション科
4. 藤田医科大学病院 リハビリテーション部
5. 愛知淑徳大学 健康医療科学部 医療貢献学科
1. 岐阜保健大学 リハビリテーション学部 理学療法学科
2. 製鉄記念八幡病院 リハビリテーション部
3. 静岡医療センター リハビリテーション科
4. 藤田医科大学病院 リハビリテーション部
5. 愛知淑徳大学 健康医療科学部 医療貢献学科
キーワード:
糖尿病、集中治療室、日常生活動作
【はじめに、目的】
集中治療室(ICU)に入室する重症患者において、糖尿病(DM) の既往が身体機能や日常生活動作(ADL)の回復に及ぼす影響は、これまで十分に検討されていない。特に、退院時ADL自立度に対する影響を多施設コホートデータに基づいて定量的に評価した研究は乏しい。本研究では、大規模前向きコホート「J-RELIFE研究」のデータを用いた二次解析により、DM既往の有無と退院時ADLや身体機能回復指標との関連を明らかにすることを目的とし、個別的理学療法戦略構築のための実証的基盤を提供することを目指す。
【方法、あるいは症例】
本研究は、全国22施設で実施された多施設前向きコホート研究(J-RELIFE研究)を用いた二次解析である。ICUに48時間以上入室し、人工呼吸管理を受けた成人患者423名を対象とし、入室時のDM既往の有無で2群に分類した。主要評価項目は退院時Barthel Index(BI)およびICU入室から歩行自立までの日数、副次評価項目はICU滞在日数、握力、ICU Mobility Scale(IMS)とした。年齢、性別、重症度、併存疾患などの交絡因子を調整した多変量線形回帰分析により関連性を検討した。
【結果】
DM既往あり群(n=101)は、なし群(n=322)と比較して歩行自立までの日数が有意に遅延し(中央値17.1日 vs. 13.7日、p=0.013)、退院時BIも低値を示した(中央値:90 vs. 95、p=0.020)。また、ICU滞在日数(8.6日 vs. 7.0日、p=0.003)、握力(15.8kg vs. 17.8kg、p=0.041)、最高IMS(4.0 vs. 6.0、p=0.002)もDM既往あり群で有意に劣っていた。多変量解析では、DM既往は退院時BIの低下(β=−9.40、p=0.010)および歩行自立までの日数の遅延(β=6.45日、p=0.003)と独立して関連していた。
【結論】
DMの既往は、ICU入室後の重症患者におけるADLの回復や身体機能の回復を遅延させる独立した要因であった。本研究は、日本全国の多施設前向きコホートデータに基づき、交絡因子を調整した多変量解析を行った結果であり、科学的信頼性も高い。本結果は、DMの既往がある患者に対して早期から血糖管理や神経障害への配慮を含めた個別的な理学療法戦略が必要であることを示唆する。
倫理的配慮:【倫理的配慮、説明と同意】
対象者には研究内容を説明し、文書による同意を取得した。本研究は藤田医科大学倫理審査委員会の承認を受けて実施された(承認番号:HM21-077)。
集中治療室(ICU)に入室する重症患者において、糖尿病(DM) の既往が身体機能や日常生活動作(ADL)の回復に及ぼす影響は、これまで十分に検討されていない。特に、退院時ADL自立度に対する影響を多施設コホートデータに基づいて定量的に評価した研究は乏しい。本研究では、大規模前向きコホート「J-RELIFE研究」のデータを用いた二次解析により、DM既往の有無と退院時ADLや身体機能回復指標との関連を明らかにすることを目的とし、個別的理学療法戦略構築のための実証的基盤を提供することを目指す。
【方法、あるいは症例】
本研究は、全国22施設で実施された多施設前向きコホート研究(J-RELIFE研究)を用いた二次解析である。ICUに48時間以上入室し、人工呼吸管理を受けた成人患者423名を対象とし、入室時のDM既往の有無で2群に分類した。主要評価項目は退院時Barthel Index(BI)およびICU入室から歩行自立までの日数、副次評価項目はICU滞在日数、握力、ICU Mobility Scale(IMS)とした。年齢、性別、重症度、併存疾患などの交絡因子を調整した多変量線形回帰分析により関連性を検討した。
【結果】
DM既往あり群(n=101)は、なし群(n=322)と比較して歩行自立までの日数が有意に遅延し(中央値17.1日 vs. 13.7日、p=0.013)、退院時BIも低値を示した(中央値:90 vs. 95、p=0.020)。また、ICU滞在日数(8.6日 vs. 7.0日、p=0.003)、握力(15.8kg vs. 17.8kg、p=0.041)、最高IMS(4.0 vs. 6.0、p=0.002)もDM既往あり群で有意に劣っていた。多変量解析では、DM既往は退院時BIの低下(β=−9.40、p=0.010)および歩行自立までの日数の遅延(β=6.45日、p=0.003)と独立して関連していた。
【結論】
DMの既往は、ICU入室後の重症患者におけるADLの回復や身体機能の回復を遅延させる独立した要因であった。本研究は、日本全国の多施設前向きコホートデータに基づき、交絡因子を調整した多変量解析を行った結果であり、科学的信頼性も高い。本結果は、DMの既往がある患者に対して早期から血糖管理や神経障害への配慮を含めた個別的な理学療法戦略が必要であることを示唆する。
倫理的配慮:【倫理的配慮、説明と同意】
対象者には研究内容を説明し、文書による同意を取得した。本研究は藤田医科大学倫理審査委員会の承認を受けて実施された(承認番号:HM21-077)。
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