講演情報

[O-3-3]透析導入期の高齢慢性腎臓病患者における低強度身体活動時間は虚弱進行リスクと関連する:前向きコホート研究

*平野 裕真1,2、山口 智也1、河野 健一3、大村 朋矢1、藤倉 知行4、山内 克哉5 (1. 浜松医科大学医学部附属病院 リハビリテーション部、2. 浜松医科大学大学院医学系研究科医学専攻、3. 国際医療福祉大学 福岡保健医療学部、4. 浜松医科大学 内科学第一講座、5. 浜松医科大学 リハビリテーション医学講座)
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キーワード:

高齢慢性腎臓病、虚弱、低強度身体活動

【はじめに、目的】
高齢慢性腎臓病(CKD)患者において虚弱進行リスクを低下させることは、心血管リスクや健康寿命延伸の観点から重要である。虚弱進行は透析導入期に顕著であるが、この時期は溢水や不均衡症候群等により全身状態が安定せず、特に高齢者において運動療法の適応が難しい。そこで、高齢者の総身体活動に占める割合が高い低強度身体活動(LPA)に着眼し、LPA時間が多いことが虚弱進行リスクの低下に関連すると仮説を立て、この関連性を明らかにすることを目的とした。
【方法】
2022年8月から2025年4月に透析導入入院した65 歳以上のCKD患者を対象に、LPA時間(退院後の非透析日3日間)および臨床虚弱尺度(CFS)を評価した。LPA時間の中央値により対象者を高LPA群、低LPA群に振り分け、透析導入後3ヶ月における虚弱進行(CFS1以上の増加)有無を評価した。欠測値は多重代入法により補完し、各補完データセットにおいてLPA(高群vs低群)を従属変数、共変量(DAGsで決定;年齢、性別、体重、独居、緊急透析導入、膝伸展筋力、LogCRP、導入時CFS)を説明変数としたロジスティックモデルでOverlap Weights(ATOを推定した傾向スコア)を算出し、重みづけデザインを構築した。重みづけデザインを用いて、修正ポアソン回帰によりリスク比を、一般化線形モデルによりリスク差を推定した。
【結果】
117例のうち27例が除外され、90例が解析対象となった。高LPA群(76.2±6.7歳、LPA時間33.2±13.9分/日)および低LPA群(81.2±5.7歳、LPA時間8.7±5.3分/日)では、傾向スコア重みづけ後の全ての共変量で標準化平均差が0.1未満となり、群間バランスの改善が確認された。Rubinのルールによるプーリングの結果、高LPA群の推定虚弱進行リスクは3.8%となり、低LPA群55.8%と比較して、相対リスク比は0.07(95%CI; 0.01-0.44)、絶対リスク差は−0.52(95% CI; −0.75-−0.28)と有意に低いことが示された。
【結論】
透析導入期の高齢CKD患者においてLPA時間を高く維持することは、虚弱進行リスクの低下と関連する可能性が示された。座位活動減少や生活活動増加を中心とするLPA時間の改善は実現可能性が高く、新たな介入標的として期待される。

倫理的配慮:
浜松医科大学臨床研究倫理委員会の承認 (22-082)を得て実施した。対象者には書面と口頭にて研究内容を説明し参加の同意を得た。

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