講演情報

[21-1220-1add]「動けないから“動かす”へ―SIXPADが創る“動的腎リハ”の新時代」

山本 義浩
トヨタ記念病院 腎臓内科科部長
藤田医科大学腎臓内科学 客員講師
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2005年:高知大学卒業、同年4月より藤田保健衛生大学にて臨床研修
2007年: 藤田保健衛生大学(現;藤田医科大学)腎臓内科入局
2012年:岡崎市民病院腎臓内科
2013年: 博士号取得(藤田保健衛生大学 腎内科学)
2016年:トヨタ記念病院 腎臓内科医長
2018年:トヨタ記念病院 腎臓内科科部長
2019年:藤田医科大学腎臓内科学客員講師兼任
慢性腎臓病(CKD)は、長い時間軸の中で闘病を生活に取り込んでいく必要がある疾患であり、患者自身の行動変容と意欲が治療の質を左右する。完治を前提にしにくいCKDでは、治療を特別な作業として切り離すよりも、日常生活の延長として自然に配置する視点が重要となる。いわば“暮らしの中で無理なく続けられる治療”こそが、長期予後を支える基盤と考える。
 トヨタ記念病院腎臓内科では、食事療法と運動療法を「制限」ではなく「人生の楽しみを守る技術」として提示する理念のもと、教育入院を実施している。人間の基本的な喜びは「美味しく食べること」と「気持ちよく動くこと」に集約され、この二つを損なわず、むしろ磨き直す方法を学ぶ場として、教育入院は治療行為以上に“身体との付き合い方の再発見”を目的としている。
 なかでも、本教育入院を特徴づける核として、理学療法士が運動療法の実践に深く関与する点を強調したい。専門的評価に基づく個別プログラムの提示に加え、患者の生活リズムに寄り添った細やかな提案は、運動を「できるかどうか」ではなく「どうすれば気持ちよく続けられるか」という視点へと導く。こうした支援体制は患者満足度を高め、「運動は苦手だと思っていたが、案外続けられる」という声も多い。理学療法士の存在は、患者の“背中をそっと押す装置”として期待以上の役割を担っている。
 運動療法では、SIXPADによる電気的筋刺激(EMS)を導入支援として活用している。外部刺激によって身体が“動かされる”体験は、運動への心理的距離を縮める効果を持ち、心地よさと簡便さが行動変容の初速を与える。動けない時期には“動かしてもらう”、動けるようになれば“自分で動く”という流れを自然に形成できる点は、CKD患者に適したアプローチとして評価されている。
 CKD治療は、患者が自分に向き合う時間を前向きな経験へと転換する工夫が求められる。本セミナーでは、理学療法士の関与を中心とした当院の教育入院の取り組みと、SIXPADを用いた“動的腎リハ”の可能性について、ランチョンのひと時にふさわしい適度な軽やかさと共に紹介したい。

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