講演情報

[21-1450-2add]高齢心疾患のサルコペニア対策としての身体活動

森沢 知之
一般財団法人 神戸在宅医療・介護推進財団 神戸リハビリテーション病院 リハビリテーション部部長
順天堂大学大学院保健医療学研究科 客員教授
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兵庫医科大学病院リハビリテーション部 
国際医療福祉病院リハビリテーション科
高知医療センター リハビリテーション科 
心臓病センター榊原病院心臓リハビリテーション室 
兵庫医療大学リハビリテーション学部理学療法学科 講師 
順天堂大学保健医療学部理学療法学科/順天堂大学大学院保健医療学研究科 准教授 
心不全患者のサルコペニア有病率には幅があるものの、最近のシステマティックレビュ・メタ解析では30~35%と報告されており(Zhang Y, 2021. Chen R, 2023)、心不全患者の3人に1人はサルコペニアを有していることになる。なかでも左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者のサルコペニア有病率はおおよそ50%にのぼり他の疾患と比較しても高率である。サルコペニアは高齢心不全患者の強力な予後不良因子(再入院・死亡率)であることから、本邦のガイドライン「心不全診療ガイドライン」「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」(日本循環器学会)のなかでもサルコペニアの早期スクリーニングおよび積極的なリハビリテーションの重要性について記載されている。
 サルコペニアは原発性(加齢性変化)と二次性(栄養不良、内分泌異常、身体不活動など)に分類されるが、心不全患者ではさらに慢性炎症や酸化ストレス、骨格筋血流量の低下、血管内皮機能障害などの要因が加わる。サルコペニアを有する心不全患者は(非サルコペニア患者と比較して)身体活動が低いことが複数の研究で示されており、心不全と身体活動は相互に悪循環を形成している。サルコペニアに対する一般的なアプローチは運動療法(有酸素運動、レジスタンストレーニング)や栄養療法であるが、身体活動へのアプローチは心不全のどの重症度ステージ(軽症~重症)においても肝要である。
 心不全患者の身体活動は心肺運動負荷試験の結果を参考に処方されるが、心不全の重症度や目的によって強度や量を調整する必要がある。サルコペニアを有する心不全患者の多くは重症度ステージC(症候性心不全)またはD(治療抵抗性心不全)であり、身体活動の過多は心不全症状を悪化させる危険性があるため、日々の心不全の兆候をモニタリングしながら進める必要がある。
 本シンポジウムでは当院の心不全患者の身体活動に対する包括的な取り組みについて紹介する。

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