講演情報
[P-7-6]前足部切断術後の踵歩行獲得に向けて高速度トレーニングで前脛骨筋の筋質改善を図った一症例
*桜庭 裕香1、宮阪 隼人1、瀧原 純1 (1. 総合病院土浦協同病院 リハビリテーション部)
キーワード:
糖尿病、壊疽、運動療法
【はじめに】
前足部切断術後における踵歩行の獲得は、創部保護と移動能力向上において重要である。踵歩行が困難であった左前足部切断術後の症例に対し、前脛骨筋の筋質改善を目的とした理学療法を行い、踵歩行を獲得したため報告する。
【症例】
本症例は、糖尿病性足壊疽と診断され、左前足部切断術を施行した50歳代の女性である。術後20日に踵歩行が許可されたが、実施困難であり移動は車椅子であった。足関節背屈可動域は左右ともに5°であった。等速性筋力評価(角速度60°/s、50回の求心性収縮)では、足関節背屈の最大トルクは右0.34Nm/kg、左0.20Nm/kgであった。疲労率は、仕事量の開始と終了1/3の差を開始1/3の値で除し算出した結果、右−18.4%、左61.4%であった。超音波評価では、前脛骨筋の表層線維の筋厚(右/左)は1.10/0.92cm、筋輝度は39.6/71.4a.u.、ヤング率は16.8/12.3kPaであった。深層線維の筋厚(右/左)は1.09/1.07cm、筋輝度は94.4/112.0a.u.、ヤング率は16.9/12.4kPaであった。踵歩行における三次元動作分析では、快適速度における左足関節底屈モーメントは立脚終期~前遊脚期で0.19Nm/kgであった。以上より、左前脛骨筋の筋質および筋持久力の低下が、踵歩行困難である要因と考えられた。
【結果】
高速度での筋力トレーニング(足関節背屈運動、120回/分、5日/週、9週)を指導した。トレーニング実施後、足関節背屈の最大トルクは右0.49Nm/kg、左0.47Nm/kg、疲労率は右13.9%、左9.9%と改善を認めた。左前脛骨筋の表層線維の筋厚は0.94cm、筋輝度は78.0a.u.、ヤング率は12.8kPaであった。深層線維の筋厚は1.16cm、筋輝度は82.7a.u.、ヤング率は16.8kPaと改善を示した。左足関節底屈モーメントは立脚終期~前遊脚期で0.00Nm/kgと減少し、踵歩行が可能となった。
【結論】
前足部切断術後に踵歩行が困難であった症例に対して、前脛骨筋の筋質改善を目的とした高速度トレーニングを実施した結果、筋力および筋持久力の向上を認め、踵歩行が可能となった。前脛骨筋の筋質評価に基づく運動療法は、踵歩行の獲得に有効な手段となる可能性がある。
倫理的配慮:
症例に対し発表の主旨、匿名性の確保を口頭で説明し、書面にて同意を得た。
前足部切断術後における踵歩行の獲得は、創部保護と移動能力向上において重要である。踵歩行が困難であった左前足部切断術後の症例に対し、前脛骨筋の筋質改善を目的とした理学療法を行い、踵歩行を獲得したため報告する。
【症例】
本症例は、糖尿病性足壊疽と診断され、左前足部切断術を施行した50歳代の女性である。術後20日に踵歩行が許可されたが、実施困難であり移動は車椅子であった。足関節背屈可動域は左右ともに5°であった。等速性筋力評価(角速度60°/s、50回の求心性収縮)では、足関節背屈の最大トルクは右0.34Nm/kg、左0.20Nm/kgであった。疲労率は、仕事量の開始と終了1/3の差を開始1/3の値で除し算出した結果、右−18.4%、左61.4%であった。超音波評価では、前脛骨筋の表層線維の筋厚(右/左)は1.10/0.92cm、筋輝度は39.6/71.4a.u.、ヤング率は16.8/12.3kPaであった。深層線維の筋厚(右/左)は1.09/1.07cm、筋輝度は94.4/112.0a.u.、ヤング率は16.9/12.4kPaであった。踵歩行における三次元動作分析では、快適速度における左足関節底屈モーメントは立脚終期~前遊脚期で0.19Nm/kgであった。以上より、左前脛骨筋の筋質および筋持久力の低下が、踵歩行困難である要因と考えられた。
【結果】
高速度での筋力トレーニング(足関節背屈運動、120回/分、5日/週、9週)を指導した。トレーニング実施後、足関節背屈の最大トルクは右0.49Nm/kg、左0.47Nm/kg、疲労率は右13.9%、左9.9%と改善を認めた。左前脛骨筋の表層線維の筋厚は0.94cm、筋輝度は78.0a.u.、ヤング率は12.8kPaであった。深層線維の筋厚は1.16cm、筋輝度は82.7a.u.、ヤング率は16.8kPaと改善を示した。左足関節底屈モーメントは立脚終期~前遊脚期で0.00Nm/kgと減少し、踵歩行が可能となった。
【結論】
前足部切断術後に踵歩行が困難であった症例に対して、前脛骨筋の筋質改善を目的とした高速度トレーニングを実施した結果、筋力および筋持久力の向上を認め、踵歩行が可能となった。前脛骨筋の筋質評価に基づく運動療法は、踵歩行の獲得に有効な手段となる可能性がある。
倫理的配慮:
症例に対し発表の主旨、匿名性の確保を口頭で説明し、書面にて同意を得た。
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