講演情報
[P-11-3]肝線維化の進展度が肝細胞癌患者の運動耐容能に及ぼす影響
*八木 陸人1、阿妻 伸幸1、渡邊 大輔1、鳥屋 優太1、小林 敦郎1、田沼 明1、玄田 拓哉2 (1. 順天堂大学医学部附属静岡病院リハビリテーション科、2. 順天堂大学医学部附属静岡病院消化器内科)
キーワード:
肝細胞癌、肝線維化、運動耐容能
【目的】
慢性疾患や悪性腫瘍を有する患者では運動機能の低下が認められ,中でも運動耐容能はいくつかの癌において無病生存期間や死亡率の予測因子として位置付けられる.肝切除術を受けた肝細胞癌(HCC)患者においても,周術期の運動耐容能は長期生存率と関連しているとされる.肝臓においては慢性的な炎症や肝機能低下により線維化が進展し,歩行速度や握力の低下,骨格筋量減少と関連することが報告されている.しかし,肝線維化の進展と運動耐容能の関連性については十分に解明されていない.本研究はHCC患者を対象に,肝線維化の進展と運動耐容能の関連を明らかにすることを目的とした.
【方法】
単施設後ろ向き観察研究とした.対象は局所領域治療(局所焼灼療法または経動脈的化学塞栓療法)目的で入院し,理学療法依頼のあった62名のうち,除外基準に該当する患者を除いた41名となった.肝線維化は年齢およびAST,ALT,血小板数を用いてFIB-4 Indexを算出した.理学療法評価として握力,5回立ち上がり時間,10m歩行速度,6分間歩行距離(6MWD)を測定した.運動耐容能はTroostersらの報告を基に身長・体重・年齢・性別から算出した予測6MWDに対する実測値の達成率で評価した.統計解析はMann-Whitney U検定,Fisherの正確確率検定,および重回帰分析を行った.
【結果】
Shahらの報告に基づき,FIB-4 Index<2.67を低・中等度線維化群(14名),≧2.67を高度線維化群(27名)に分類した.群間比較では握力,歩行速度,骨格筋量には有意差を認めなかったが,6MWD達成率は高度線維化群で有意に低値を示した(p=0.034).さらに,重回帰分析においても年齢,性別,骨格筋量とは独立してFIB-4 Indexが運動耐容能低下と有意に関連していた(p=0.038).
【結論】
HCC患者において,肝線維化の進展は運動耐容能低下と関連していることが明らかとなった.本研究では筋量に差を認めなかったことから,線維化が筋量減少に先行して筋機能の質的変化をもたらし,身体パフォーマンスに影響を与える可能性があると考えられる.今後,理学療法では肝線維化を考慮した運動評価を行い,線維化が高度な症例に対しては有酸素運動を主体とするなど具体的な運動処方の検討を進めることで,より効果的な理学療法戦略の構築が期待される.
倫理的配慮:
本研究の対象患者には,ヘルシンキ宣言に則り書面にて発表の同意を得た。
慢性疾患や悪性腫瘍を有する患者では運動機能の低下が認められ,中でも運動耐容能はいくつかの癌において無病生存期間や死亡率の予測因子として位置付けられる.肝切除術を受けた肝細胞癌(HCC)患者においても,周術期の運動耐容能は長期生存率と関連しているとされる.肝臓においては慢性的な炎症や肝機能低下により線維化が進展し,歩行速度や握力の低下,骨格筋量減少と関連することが報告されている.しかし,肝線維化の進展と運動耐容能の関連性については十分に解明されていない.本研究はHCC患者を対象に,肝線維化の進展と運動耐容能の関連を明らかにすることを目的とした.
【方法】
単施設後ろ向き観察研究とした.対象は局所領域治療(局所焼灼療法または経動脈的化学塞栓療法)目的で入院し,理学療法依頼のあった62名のうち,除外基準に該当する患者を除いた41名となった.肝線維化は年齢およびAST,ALT,血小板数を用いてFIB-4 Indexを算出した.理学療法評価として握力,5回立ち上がり時間,10m歩行速度,6分間歩行距離(6MWD)を測定した.運動耐容能はTroostersらの報告を基に身長・体重・年齢・性別から算出した予測6MWDに対する実測値の達成率で評価した.統計解析はMann-Whitney U検定,Fisherの正確確率検定,および重回帰分析を行った.
【結果】
Shahらの報告に基づき,FIB-4 Index<2.67を低・中等度線維化群(14名),≧2.67を高度線維化群(27名)に分類した.群間比較では握力,歩行速度,骨格筋量には有意差を認めなかったが,6MWD達成率は高度線維化群で有意に低値を示した(p=0.034).さらに,重回帰分析においても年齢,性別,骨格筋量とは独立してFIB-4 Indexが運動耐容能低下と有意に関連していた(p=0.038).
【結論】
HCC患者において,肝線維化の進展は運動耐容能低下と関連していることが明らかとなった.本研究では筋量に差を認めなかったことから,線維化が筋量減少に先行して筋機能の質的変化をもたらし,身体パフォーマンスに影響を与える可能性があると考えられる.今後,理学療法では肝線維化を考慮した運動評価を行い,線維化が高度な症例に対しては有酸素運動を主体とするなど具体的な運動処方の検討を進めることで,より効果的な理学療法戦略の構築が期待される.
倫理的配慮:
本研究の対象患者には,ヘルシンキ宣言に則り書面にて発表の同意を得た。
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