特別企画「実用化現場の最前線」
SSIIは、30年間にわたり「参加者のための学術集会」として画像センシング技術の発展を支え、産業界と学術界の交流を促進してきました。SSII2025では、産業界における実用化・現場課題に焦点を当てた特別企画「実用化現場の最前線」を開催いたします。
本企画では、産業界・産業に関係の深い研究者・開発者・技術者の皆さまをお招きし、実際の現場で直面している課題をインタラクティブ発表形式で共有していただきます。例えば、現在のAI技術でも対応が難しい課題や、理論やアルゴリズム単独では解決が困難な問題など、実務に即したリアルな課題を取り上げ、全参加者で解決に向けたアプローチを共に議論し、模索します。現場課題を起点に、社会実装を見据えた新たな研究開発の方向を見出し、コミュニティ全体として画像センシング技術の未来を共に描く機会とすることを狙いとします。
5月28日(水) 14:45~16:15 (IS1インタラクティブセッション内)

3次元計測・物体認識技術の実用に向けた取り組みと課題
講師:長谷川 昂宏 氏(オムロン)
概要:産業現場における生産性向上,人手不足解消,人的作業ミス防止などを目的として,人手による様々な作業を自動化することが積極的に取り組まれている.こうした作業自動化の技術では,対象となる物体の3次元点群を計測することや位置姿勢を高精度に認識する技術が重要なアプローチの一つとして発展を見せている.一方で産業現場において作業者が日常的に取り扱っている物体の中には,3次元計測や位置姿勢認識が非常に困難な物体が数多く存在し,実用面においては大きな課題となる.本発表では,高難度物体を含めた3次元計測や物体位置姿勢認識技術を実用するうえでの課題を取り上げ,現場課題の理解を深めるとともに解決に向けたアプローチを探索することを目指す.

現場で得られるデータを効率的に活用した高精度な画像認識モデル作成
講師:田中 勇貴 氏(日本電気)
概要:産業現場における画像認識モデルの導入の際には各タスクにおいて高い精度が求められるため、近年注目を集めているVision and Languageモデルなどの大規模モデルでさえも直接適用が困難である。そこで我々は、現場で撮影されたデータを効率的に活用し高い精度を実現する手法の研究開発に取り組んでいる。本発表では、これまでの研究成果から特に実用的なアプローチに焦点を当てて紹介する。
5月29日(木) 16:10~17:40 (IS2インタラクティブセッション内)

社会インフラ点検の現場における画像解析の活用とそのハードル
講師:山下 尚一朗 氏、野村 秀成 氏、成瀬 加奈子 氏(NTTフィールドテクノ)
概要:社会インフラ点検の効率化に向けて、NTT西日本グループの設備点検ノウハウを基にした画像解析AIの導入を推進中。社会全体の課題でもあるこの取組みを進めるうえでのポイントや、その推進を阻むハードルについて紹介・議論を行う。

「傷の気付き(KIZKI)」と呼ぶ画像検査手法の実装を振り返る
講師:青木 公也 氏(中京大学)
概要:「傷の気付き処理」(以降,KIZKI処理と呼称)は,著者が参画していた産学共同の研究グループにおいて,人のやり様に学んで試験的に実装された画像検査手法である.SSIIの協力組織でもある精密工学会IAIPが主催する動的画像処理実利用化ワークショップ(DIA2012)での発表以来,約13年に渡って「キズに気付くとは何ぞ?」と問い続けてきた.本発表では,開発の履歴,これまでの適用事例(産学共同研究実績)を紹介する.それによって,学術・産業応用の一大分野で典型的な実学である画像検査工学における「外観検査の問い」について問題共有を試みる.
5月30日(金) 14:30~16:00 (IS3インタラクティブセッション内)


転生したらLiDARで3D物体認識を開発することになった件
講師:髙木 雅成 氏、石合 弘幸 氏(デンソー)
概要:まず、LiDAR技術の基本とその魅力について解説します。もともと機能部で画像認識に従事していた私が、事業部異動という名の異世界転生を経て、LiDAR認識の量産化に挑戦した冒険譚を語ります。また、LiDARのソフトウェア開発事例を交えながら、量産現場での光と影をリアルに描写し、現地現物の重要性を語ります。さらに、ソフトウェアエンジニアに求められるスキルについて持論を展開します。LiDAR技術の可能性とその未来について、皆さんに新たな視点とインスピレーションをご提供できたらと思います。




画像認識アルゴリズムのシステム実装:現場とともに歩む設計と運用
講師:三輪 祥太郎 氏、進 泰彰 氏、中村 雄大 氏、大坪 舜 氏(三菱電機)
概要:本発表では、「画像認識アルゴリズムのシステム実装:現場とともに歩む設計と運用」と題し、実用現場に根差した3つの開発事例を紹介する。
最先端モデルを、手のひらサイズに:マイコン上で動く人物検知AI
高性能な画像認識モデルを、リソース制約の厳しい組み込みマイコン上で実現。赤外線センサと軽量AIを組み合わせ、省電力かつ高精度な人物検知を可能にした。
親和性と介入性を両立する:現場適応型異常検知AI
平常時には既存システムと調和しながら静かに学習し、異常時には即座に発報。工事現場での運用に適した、共存性と即応性を兼ね備えたエッジAIの設計事例を紹介する。
多様な人・環境に対応せよ:ドライバモニタリングのリアルな挑戦
個人差や走行環境の変化に柔軟に対応し、網羅性と安定性の両立を目指したドライバモニタリングシステム(DMS)を開発。その設計・評価プロセスから得られた知見を共有する。