講演情報

[P01-01]稠密地震観測網を用いたアレイ解析による環境振動検知システムの構築

*Fukuda Kohei1、山田 真澄2 (1. 京都大学大学院理学研究科、2. 京都大学防災研究所)
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地すべり、海底地すべり、氷河の体積移動、ハリケーンによる海洋波浪といった非地震性の現象は長周期の地震波を放出することが知られている。これらの地震波は、地震と異なり振幅が小さく立ち上がりが不明瞭なため、通常の地震検知システムでは震源を捉えることが困難である。しかしながら、これらの波形は周期が長く遠方まで減衰しにくい特徴があるため、広帯域地震計や傾斜計といった長周期の波を記録できる計器には、コヒーレントに伝わる地震波が記録されている。そのため、地震波形記録をアレイ解析し相互相関をとることで、これらのシグナルの小さい現象を検知することが可能である。アレイ解析には稠密な観測網が必要であるが、日本周辺には、F-net、Hi-netといった陸域観測網に加え、S-net、N-netなどの大規模海底観測網が世界有数の密度で展開されており、これは陸海を統合した広域かつ堅牢な環境振動検知システムの構築に極めて有利な環境である。このような背景から、本研究は環境振動を自動的に検知するシステムの構築を試み、自然災害の発生をいち早くとらえることによって、防災・減災への貢献を目指す。

本研究ではAutomated Event Location Using a Mesh of Arrays(AELUMA)法を日本周辺の既存地震観測網に適用した。この手法は、ドロネー三角形分割を利用して稠密に設置された地震観測点を3点ごとの小アレイに分割し、3観測点の波形の3ペアの相互相関解析から、アレイを通過する波の伝播方向とローカルな伝播速度を求める。各アレイで求められた信号の伝播方向と伝播速度、到達時刻を集約し、誤差を最小化するイベントの発生時刻と位置を求める。本来は、インフラサウンドの波源推定のために作成されたシステムであったが、地震の表面波に適用できるように改良され、鉛直成分に加えて水平成分の波を活用する方法も検討された。また、先行研究ではstormquakeや地すべりの震源決定に成功している。このように、環境振動の検出事例が増えてきたことから、日本周辺ではF-net記録を用いた常時観測システムの開発も検討されている。

本研究で対象としたイベントは、2025年7月3日にトカラ列島近海で発生したM5.5の地震である。使用した観測点は日本全国のF-netの上下動成分のデータで、周期は先行研究に倣って20-50秒を利用した。計算には、IRISのホームページから入手したMatlabで記述されたAELUMA法のプログラムを、Pythonに書き換えて使用した。まず、先行研究で検出が報告された地すべりイベント(2011年9月、静岡県・三重県のイベント)を試験的にシミュレーションし、プログラムに問題がない事を確認した。その後、F-netのデータを用いて2025年7月3日にトカラ列島近海で発生したM5.5の地震の検出を試みた。その結果、イベントが観測網の端で発生し、震源―観測点間の距離に大きなばらつきがあるケースでは、単一のイベントを時空間的に分離した複数のイベントとして誤分割してしまう課題が明らかになった。

本発表ではトカラ列島近海での地震などを例に、F-net広帯域データや海底観測網データにAELUMAを適用した結果を示す。また、誤検出の抑制や推定精度の向上に向けた取り組みの現状について報告する。そのうえで、より堅牢なリアルタイムモニタリングシステムの構築に向けた課題や展望について議論をおこなう。