講演情報

[P01-02]局所定常ARモデルを用いた理論グリーン関数波形の初動到着時刻の自動検測

*小割 啓史1,2、竹中 博士1 (1. 岡山大学、2. 阪神コンサルタンツ)
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CMTインバージョンなどの波形インバージョンにおいて,理論波形と観測波形の時刻同期は非常に重要である.両者のP波(あるいはS波)の初動到着時刻を一致させる方法を採用する場合,膨大な理論グリーン関数の初動到着時刻の情報が必要となる.ここで,目視検測を行うのは多大な人的リソースが必要であるし,3次元差分法などの波形計算で実装された地下構造モデルを3次元レイトレーシング用に正確に実装し直して波線追跡することは容易ではない.そこで,理論グリーン関数波形の時系列波形から直接,初動到着時刻を自動で検測するアプローチが考えられる.観測波形において波形記録から初動到着時刻の自動検測を行うためにしばしば利用される方法の一つに局所定常ARモデルを用いる方法があるが,これを理論グリーン関数波形に適用するためには課題があった.本研究ではこの課題を克服し,波形インバージョンで十分通用する精度の自動検測を行うことに成功したので報告する.
 局所定常ARモデルを用いた初動到着時刻の検測を理論グリーン関数波形に適用する場合,次の二つが問題となる.第一に,P波の到着前に続くゼロ列に対してAIC(赤池情報規準)が算出できない点である.第二に,差分法などの数値計算手法によって計算した理論グリーン関数波形の場合,波面の到着前に数値的なエネルギーの染み出しが生じ,期待される到着時刻より早い時刻が読み取られる点である.
 本研究では,理論グリーン関数波形に適当な乱数列を加算することでこれらの問題を解決し,高精度のP波初動到着時刻の自動検出を行った.加算する乱数列の振幅は試行錯誤的に実体波の最大振幅の1~10 %程度を与えると良いことが分かった.また,グリーン関数の単一の成分(例えば,Gzz,z)に対してではなく,
Gzx,x+Gzy,y+Gzz,zのように爆発震源に対する地動の上下動成分を合成し,これに対して上記の処理を行うと検測の成績が良いことも確認した.さらに,この合成波形の初動極性は”押し”であることを考慮する処理を加えた.
 以下,結果の例を示す.図1は,深さ0 km(海水準)から15 kmまで1 km毎に配置した爆発震源に対する方位N251°E,震央距離19.6 kmの地点の理論グリーン関数の上下動成分に対する自動検測の結果である.地下構造は,文部科学省研究開発局・国立大学法人京都大学大学院理学研究科『別府-万年山断層帯(大分平野-由布院断層帯東部)における重点的な調査観測 平成26-28年度成果報告書』の「3.3 断層帯周辺における強震動予測の高度化のための研究」において実施された地震動シミュレーションで用いられた,地盤・地殻・マントル・陸海地形・海水層やフィリピン海プレートまで含む3次元構造モデルである(図1 a).配置した爆発震源の震央は別府湾内に位置し,最浅の震源が海面直下の海水層,震源の深さ1~2 kmが地盤,3~14 kmが上部地殻,15 kmが下部地殻に位置するというバリュエーションに富む.なお,最浅の震源は実際には海水準から深さ25 mの海水層中に配置した.いずれの理論グリーン関数波形においても期待されるP波の初動到着時刻を読み取ることができた(図1 b).発表では,他の地域の構造モデルや震央距離の大きなケースへの適用例も示す予定である. 

謝辞 この研究の一部は,JSPS科研費基盤(B)23K22582の補助を受けています.