講演情報
[P01-04]琉球海溝と日本海溝における全波形トモグラフィに向けた分解能と波形感度の検討
*岡元 太郎1、竹中 博士2、中村 武史3、小松 正直4 (1. 東京科学大学、2. 岡山大学、3. 電力中央研究所、4. 岡山学院大学)
沈み込み帯浅部の速度構造モデルは、地震活動と不均質構造の関連を理解するうえで重要である。しかし東北沖日本海溝では既存の3次元不均質速度構造モデルを用いても、周期数秒程度の地震波全体を再現することは難しい(Okamoto et al., 2018)。これは短波長の速度構造に関する知識が不足していることを示す。我々は、この課題に対処するため、全波形トモグラフィにより構造モデルを改善し、周期数秒以上での波形再現性向上を目指している。本研究では、構造パラメータ摂動に対する地震波波形の感度と、波形トモグラフィの分解能を評価した。対象地域は、東北沖日本海溝および琉球海溝である。
まず東北沖日本海溝について、陸上観測データのみを用いた場合の分解能行列を検討した。全波形トモグラフィは周波数領域におけるブロックインバージョンとして定式化し、理論波形は陸上・海底地形、海水層、堆積層、沈み込む海洋地殻を含む陸海統合3次元不均質構造モデルを用いて計算した。その結果、剛性率の解像度は他パラメータと比べて相対的に高く、特に沿岸から沖合約100 kmまでの第一層(深さ0–8.4 km)で顕著であった。しかしその付近からさらに海溝に近づくにつれて分解能は低下した。これは、海溝付近の地震数(つまり地震波データ)が少ないことや、陸上データのみを用いたことによる観測網の空間的な偏りに起因すると考えられる。
そこで次に、日本海溝海底地震津波観測網(S-net)の海底地震計データを取り入れた場合の解像度を予備的に検討した。本研究では S-net 海底加速度計の3成分データを用いた。波形利用にあたってNakamura & Hayashimoto (2019) の方法により地震計のRoll角度とTilt角度を地震波通過の前後で推定し、解析対象観測点で地震波通過の前後で角度がほぼ変わらないことと、Takagi et al.(2019)で得られたS-netセンサー角度との相違が小さいこと(0.1度未満)の両方を確認した。これらのチェックのうえで、最終的に Takagi et al. (2019) で得られた3つの角度を用いて回転した3成分観測波形を利用した。これらの観測波形を用いたFAMT解析によって海域の浅い地震の震源パラメータを決定した。その結果を使って陸上・海底の両方のデータを同時に用いた全波形トモグラフィに関する分解能行列を検討した。その結果、第一層における剛性率に関する空間解像度が海溝付近を含む広域で改善することが見出された。このことは日本海溝でのトモグラフィ解析における海底地震データの有効性を示すものである。
一方、琉球海溝には現時点でS-netのような恒久的な海底地震観測網は存在しない。そのため、波形トモグラフィで利用できる典型的な地震波経路は海域地震から沖縄本島など島弧観測点への方向となる。このような地震波経路のみであれば、上記の日本海溝の例と同様に、分解能が空間的に制限される可能性がある。しかし、沖縄本島の対岸に大東諸島が位置しており、その観測点のデータを用いることで、典型的な経路とは逆方向の地震波経路を利用できる可能性がある。 本研究では、日本海溝での分解能検討に加えて、琉球海溝における大東諸島データを用いた感度解析の結果を報告する。
謝辞:本研究では、防災科学技術研究所のKiK-net、F-net、S-net、ならびに気象庁の地震波波形データを使用した。本研究は科研費(20K04101, 22H01311)およびJHPCN(jh200059-NAH から jh250084)の助成を受けた。グリーンテンソル波形他の計算には東京科学大学のTSUBAME-3.0, TSUBAME-4.0 スーパーコンピュータを利用した。
まず東北沖日本海溝について、陸上観測データのみを用いた場合の分解能行列を検討した。全波形トモグラフィは周波数領域におけるブロックインバージョンとして定式化し、理論波形は陸上・海底地形、海水層、堆積層、沈み込む海洋地殻を含む陸海統合3次元不均質構造モデルを用いて計算した。その結果、剛性率の解像度は他パラメータと比べて相対的に高く、特に沿岸から沖合約100 kmまでの第一層(深さ0–8.4 km)で顕著であった。しかしその付近からさらに海溝に近づくにつれて分解能は低下した。これは、海溝付近の地震数(つまり地震波データ)が少ないことや、陸上データのみを用いたことによる観測網の空間的な偏りに起因すると考えられる。
そこで次に、日本海溝海底地震津波観測網(S-net)の海底地震計データを取り入れた場合の解像度を予備的に検討した。本研究では S-net 海底加速度計の3成分データを用いた。波形利用にあたってNakamura & Hayashimoto (2019) の方法により地震計のRoll角度とTilt角度を地震波通過の前後で推定し、解析対象観測点で地震波通過の前後で角度がほぼ変わらないことと、Takagi et al.(2019)で得られたS-netセンサー角度との相違が小さいこと(0.1度未満)の両方を確認した。これらのチェックのうえで、最終的に Takagi et al. (2019) で得られた3つの角度を用いて回転した3成分観測波形を利用した。これらの観測波形を用いたFAMT解析によって海域の浅い地震の震源パラメータを決定した。その結果を使って陸上・海底の両方のデータを同時に用いた全波形トモグラフィに関する分解能行列を検討した。その結果、第一層における剛性率に関する空間解像度が海溝付近を含む広域で改善することが見出された。このことは日本海溝でのトモグラフィ解析における海底地震データの有効性を示すものである。
一方、琉球海溝には現時点でS-netのような恒久的な海底地震観測網は存在しない。そのため、波形トモグラフィで利用できる典型的な地震波経路は海域地震から沖縄本島など島弧観測点への方向となる。このような地震波経路のみであれば、上記の日本海溝の例と同様に、分解能が空間的に制限される可能性がある。しかし、沖縄本島の対岸に大東諸島が位置しており、その観測点のデータを用いることで、典型的な経路とは逆方向の地震波経路を利用できる可能性がある。 本研究では、日本海溝での分解能検討に加えて、琉球海溝における大東諸島データを用いた感度解析の結果を報告する。
謝辞:本研究では、防災科学技術研究所のKiK-net、F-net、S-net、ならびに気象庁の地震波波形データを使用した。本研究は科研費(20K04101, 22H01311)およびJHPCN(jh200059-NAH から jh250084)の助成を受けた。グリーンテンソル波形他の計算には東京科学大学のTSUBAME-3.0, TSUBAME-4.0 スーパーコンピュータを利用した。
