講演情報
[P01-05]傾斜を考慮したレシーバー関数イメージングの振幅補正手法
*宮崎 一希1、中島 淳一2 (1. 神戸大学 都市安全研究センター、2. 東京科学大学 地球惑星科学系)
レシーバー関数イメージング手法は地下の地震波速度不連続構造を解析するための強力なツールである。しかし、多くの解析で水平成層構造を仮定しており、傾斜した速度不連続面を対象とした解析にそのまま使用することは難しい。傾斜した速度不連続面で変換されたPs変換波は、水平面で変換されたものと比べて波線、走時、振幅などが異なる (例えばCassidy 1992)。特に振幅は、斜面の最大傾斜方向と入射する地震波のバックアジマスの関係によって変化することが知られており、特に最大傾斜方向の反対側から入射したPs変換波では、Radial成分の極性が反転することがある(例えば Abe et al. 2011)。この問題を回避するために、スラブのような傾斜面を解析する際には使用する波線のバックアジマスを制限する手法が用いられる場合が多い(例えば Tonegawa et al. 2008; Abe et al. 2013)。しかし、この手法では観測された全ての波線を使用できないため、震源分布によっては使用可能なデータ数が大きく制限されるという問題がある。
本研究では、この問題を根本的に解決するため、既知の傾斜面で変換されたレシーバー関数の振幅が同じ速度不連続を持つ水平面で変換されたレシーバー関数と同等になるような振幅補正式を考案した。この補正式では、既知の傾斜面の傾斜角、最大傾斜方向、入射するP波のバックアジマスを関数として、レシーバー関数のRadial成分とTransverse成分を回転した後、振幅の大きさに補正係数を適用する。これにより、傾斜面で変換されたレシーバー関数の振幅を、同じ速度不連続を持つ水平面で変換されたものと同等にすることができる。これはKawakatsu and Yoshioka (2011)によるVectorial receiver function imaging手法を拡張したものである。
振幅補正式の妥当性を評価するため、三層の傾斜面構造における人工的な波形を用いたシンセティックテストを実施した。その結果、振幅補正により、特に傾斜角が大きい場合の不連続面イメージが劇的に改善されることが示された。さらに、北海道下に沈み込む太平洋プレートを対象とした実際の地震データを用いたテストも行なった。この領域では、太平洋スラブの最大傾斜方向が北北西であるのに対し、解析に使用可能な遠地地震(震央距離30–90º)の約74%がトンガ・ケルマデック、フィリピン、スマトラの沈み込み帯で発生したものである。これらの地震波は南東方向から入射するため、傾斜面の解析には不利な条件であるにも関わらず、振幅補正を適用することにより、深さ100 kmまで続く明瞭なスラブ表面と海洋モホ面をイメージすることができた。加えてバックアジマスを制限する手法を用いた場合の約4倍のレシーバー関数を解析に使用することができ、より明瞭なイメージを得ることができた。このように本提案手法を用いることにより、地下の傾斜面をより詳細にイメージすることができる。加えて、傾斜面と水平面について速度不連続の大きさを直接比較し、定量的に議論することも可能になる。
参考文献
Abe Y., Ohkura T., Hirahara K., Shibutani T., 2011. Common-conversion-point stacking of receiver functions for estimating the geometry of dipping interfaces, Geophys. J. Int., 185, 1305–1311.
Abe Y., Ohkura T., Hirahara K., Shibutani T., 2013. Along-arc variation in water distribution in the uppermost mantle beneath Kyushu, Japan, as derived from receiver function analyses, J. geophys. Res., 118, 3540–3556.
Cassidy J., 1992. Numerical experiments in broadband receiver function analysis, Bull. seism. Soc. Am., 82(3), 36 1453–1474.
Kawakatsu H., Yoshioka S., 2011. Metastable olivine wedge and deep dry cold slab beneath southwest Japan, Earth planet. Sci. Lett., 303, 1–10.
Tonegawa, T., Hirahara, K., Shibutani, T., Iwamori, H., Kanamori, H., & Shiomi, K., 2008. Water flow to the mantle transition zone inferred from a receiver function image of the Pacific slab. Earth and Planetary Science Letters, 274, 346–354.
本研究では、この問題を根本的に解決するため、既知の傾斜面で変換されたレシーバー関数の振幅が同じ速度不連続を持つ水平面で変換されたレシーバー関数と同等になるような振幅補正式を考案した。この補正式では、既知の傾斜面の傾斜角、最大傾斜方向、入射するP波のバックアジマスを関数として、レシーバー関数のRadial成分とTransverse成分を回転した後、振幅の大きさに補正係数を適用する。これにより、傾斜面で変換されたレシーバー関数の振幅を、同じ速度不連続を持つ水平面で変換されたものと同等にすることができる。これはKawakatsu and Yoshioka (2011)によるVectorial receiver function imaging手法を拡張したものである。
振幅補正式の妥当性を評価するため、三層の傾斜面構造における人工的な波形を用いたシンセティックテストを実施した。その結果、振幅補正により、特に傾斜角が大きい場合の不連続面イメージが劇的に改善されることが示された。さらに、北海道下に沈み込む太平洋プレートを対象とした実際の地震データを用いたテストも行なった。この領域では、太平洋スラブの最大傾斜方向が北北西であるのに対し、解析に使用可能な遠地地震(震央距離30–90º)の約74%がトンガ・ケルマデック、フィリピン、スマトラの沈み込み帯で発生したものである。これらの地震波は南東方向から入射するため、傾斜面の解析には不利な条件であるにも関わらず、振幅補正を適用することにより、深さ100 kmまで続く明瞭なスラブ表面と海洋モホ面をイメージすることができた。加えてバックアジマスを制限する手法を用いた場合の約4倍のレシーバー関数を解析に使用することができ、より明瞭なイメージを得ることができた。このように本提案手法を用いることにより、地下の傾斜面をより詳細にイメージすることができる。加えて、傾斜面と水平面について速度不連続の大きさを直接比較し、定量的に議論することも可能になる。
参考文献
Abe Y., Ohkura T., Hirahara K., Shibutani T., 2011. Common-conversion-point stacking of receiver functions for estimating the geometry of dipping interfaces, Geophys. J. Int., 185, 1305–1311.
Abe Y., Ohkura T., Hirahara K., Shibutani T., 2013. Along-arc variation in water distribution in the uppermost mantle beneath Kyushu, Japan, as derived from receiver function analyses, J. geophys. Res., 118, 3540–3556.
Cassidy J., 1992. Numerical experiments in broadband receiver function analysis, Bull. seism. Soc. Am., 82(3), 36 1453–1474.
Kawakatsu H., Yoshioka S., 2011. Metastable olivine wedge and deep dry cold slab beneath southwest Japan, Earth planet. Sci. Lett., 303, 1–10.
Tonegawa, T., Hirahara, K., Shibutani, T., Iwamori, H., Kanamori, H., & Shiomi, K., 2008. Water flow to the mantle transition zone inferred from a receiver function image of the Pacific slab. Earth and Planetary Science Letters, 274, 346–354.
