講演情報
[P01-08]Anisotropic Earthquake Seismology:構造起因と震源起因の非ダブルカップル成分の分離に向けて
*川勝 均1、吉澤 和範2、西田 究1、竹尾 明子1、悪原 岳1、山谷 里奈1、高木 涼太3 (1. 東京大学地震研究所、2. 北海道大学、3. 東北大学)
近年のモーメントテンソル(MT)解析により,非ダブルカップル成分(NDC)の存在が広く認識されるようになったが,その起源については依然不明確であり,「断層破壊の複雑性」や「観測誤差の副産物」として片付けられることが多かった.一方,Kawakatsu(2024)は,地震波異方性構造を有する媒質中では,たとえ断層運動が平面で単純であっても,MTが本質的にNDC成分を持ち得ることを示した.特に鉛直異方性構造(PREM)を仮定した数値実験により,正断層と逆断層で系統的に符号の異なるCLVD(偏差NDC)成分が生成されることが示され,GCMTカタログにおける観測事実と一致することが確認された.本研究ではこの成果を基盤とし,「構造起因」と「震源起因」のNDC成分を分離・定量化する手法の確立を目指す.すなわち,震源域の異方性構造を適切にモデル化し,MT解析と統合することで,真の震源像を抽出するための新しい地震学の枠組み,「Anisotropic Earthquake Seismology(異方的地球における地震学)」を提案する.具体的には,(1) グローバルな異方性構造(鉛直・方位異方性)を用いたNDCの影響評価,(2) GCMT解や深発地震の全6成分MT解析を通じたスラブ内異方性の推定,(3) 日本列島周辺での3次元異方性構造モデルの構築と高精度MT解析の統合,を計画している.また,能登半島やトカラ列島で観測された顕著なNDCを持つ地震についても,本手法により構造起因成分を除去し,震源プロセスの物理的理解を深めることを目指す.本提案は,これまで分断されてきた構造解析と震源解析の融合を志向するものであり,異方性という観点から地震活動を再構築する試みである.観測データが豊富な日本列島は,こうした新しい地震学のモデルケースとして理想的であり,本研究が新たな震源科学の基盤形成に寄与すると期待される.
