講演情報
[P02-01]セントロイド水平位置探索手法についての検討
*木村 尚紀1、木村 武志1、浅野 陽一1 (1. 防災科学技術研究所)
はじめに
防災科学技術研究所(防災科研)の即時震源パラメータ解析システム(Accurate and QUick Analysis System for Source Parameters; AQUA)では、M4程度以上の地震を対象として、地震の位置、規模、およびメカニズム情報等の震源パラメータを高精度に自動決定しており、セントロイド水平位置(Centroid Horizontal Location; CHL)を固定したモーメントテンソル解析によるメカニズム情報(AQUA-MT)に加え、最適なCHLにおけるメカニズム情報(AQUA-CMT)を公開している。このAQUAシステムの高度化を目的として、現行の解析より広域の網羅的なCHLの探索を試行したので、その結果について報告する。
データ
日本列島と周辺の2004年9月~2022年4月までのMw6.5以上となる地震を対象とし、さらに、2024/1/1 能登半島地震(Mw7.5)、2024/8/8および2025/1/13日向灘の地震(Mw 7.1、6.7)を追加した。AQUA-CMTの初期震源にはHi-netシステムによる震源情報を用い、モーメントテンソル解析には防災科研広帯域地震観測網(F-net)によるデータを用いた。
解析手法
現行の解析におけるCHLの推定部分のみを変更した。それ以前の、初期震源情報受信からAQUA-MT推定までの解析内容、およびデータ種別、帯域、記録長等のパラメータは、基本的に現行の解析と同じである。
現行のAQUAでは、CHLの探索を以下のように行っている。第1段階では、グリッド間隔を0.05°とし、初期震源の近傍のみに等間隔にグリッド点を配置し、各グリッド点で、セントロイド時刻・深さごとにモーメントテンソルの解析を行い、品質(Variance Reduction; VR)が最大となる解をそのグリッド点における解とする。これを各グリッド点で行い、VRが最大となるグリッド点を最終解の候補とする。候補点が探索範囲の端になった場合は、そのグリッド点を中心にして再度同様の解析を行う。これを繰り返し、VR最大となる候補点を得て、次の段階に遷移する。第2段階では、グリッド間隔を0.01°として、同様の解析を繰り返す。このようにして最終的なCHLを得る。なお、すでに解析したグリッド点では解析を省略する。Mw7.0以上あるいは深さ95km以上の場合は、第1、2段階のグリッド間隔をそれぞれ0.5°、0.1°としている。
以上のように、現行手法では、解析の効率性を重視する観点から、探索範囲は限定的であり、一定の空間範囲を網羅的に探索できているわけではない。そこで、一定の空間範囲を網羅的に探索する修正を行った。
今回の検討では、Dreger et al. (1998)によるadaptive grid search を参考として、一つの試みとして、上記部分を以下のように変更した。すなわち、グリッド間隔を段階的に縮小することとし、Mw7.0以上、深さ95km以上の場合には、グリッド間隔0.5°、0.1°の2段階、これ以外の場合は0.25°、0.1°、0.05°、0.01°の4段階とした。CHLの探索範囲については、地震の規模が増加すると震源断層の破壊域が広域化すると考えられることから、以下の様に設定した。グリッド間隔の最も大きい第1段階において、前者のケースでは初期震源からの探索域の幅W (°)はAQUA-MTのMwに応じて W=1.5+0.5×3(Mw-7.0) とし、後者の場合は、初期震源の震源決定誤差を考慮し、最低1.0°とした。さらに、後続の段階においては前段階のグリッド間隔の2倍以上とした。このように設定したグリッド間隔、探索範囲をもとに、基本的には現行の解析と同様のながれで最終的なCHLを推定した。
結果
最終的なCHLは、解の得られた58地震中、42地震が現行手法の解析結果と同じ位置に推定され、53地震が水平距離10km以内に推定された。VRの変化は、同位置の場合は0.0%であり、それ以外では最大でも0.9%以下であった。水平距離は、深発地震、観測網から離れた観測点のカバレッジが十分でない地震で大きくなる傾向が見られた。方位角ギャップを指標とした場合、方位角ギャップが220°程度以上で、水平距離が明らかに大きくなる傾向が見られる。このことから、カバレッジがある程度良好であれば、現行手法でもある程度CHLが制約出来ていると考えられる。
次に、改良手法により推定したCHLと初期震源位置の水平距離と、Mwの関係を確認したところ、ばらつきが大きく両者の相関は明瞭ではなかった。しかし、前述した深発地震やカバレッジの悪い地震、複合地震と考えられるケース(2012/12/07の地震)を除いたところ、両者が大まかに相関する傾向が認められた。
考察
セントロイド位置は破壊の重心を表し、また地震の規模が大きいほど破壊域が広がると考えられることから、初期破壊位置とCHLの距離が地震の規模と相関することは、この考え方と矛盾しないと言える。ただし、現行の解析と同様に、地震の規模が大きいほど長い帯域の地震波形を解析に用いており、空間分解能は低下すると考えられる。実際に、初期震源位置からCHLの移動によるVRの変化は58地震中45地震で5.0%以下であった。このような制約はあるが、実際に、いくつかの地震については、震源過程の解析で推定された大きなすべり域の中心に近づく方向にCHLが移動することが確認できた。
防災科学技術研究所(防災科研)の即時震源パラメータ解析システム(Accurate and QUick Analysis System for Source Parameters; AQUA)では、M4程度以上の地震を対象として、地震の位置、規模、およびメカニズム情報等の震源パラメータを高精度に自動決定しており、セントロイド水平位置(Centroid Horizontal Location; CHL)を固定したモーメントテンソル解析によるメカニズム情報(AQUA-MT)に加え、最適なCHLにおけるメカニズム情報(AQUA-CMT)を公開している。このAQUAシステムの高度化を目的として、現行の解析より広域の網羅的なCHLの探索を試行したので、その結果について報告する。
データ
日本列島と周辺の2004年9月~2022年4月までのMw6.5以上となる地震を対象とし、さらに、2024/1/1 能登半島地震(Mw7.5)、2024/8/8および2025/1/13日向灘の地震(Mw 7.1、6.7)を追加した。AQUA-CMTの初期震源にはHi-netシステムによる震源情報を用い、モーメントテンソル解析には防災科研広帯域地震観測網(F-net)によるデータを用いた。
解析手法
現行の解析におけるCHLの推定部分のみを変更した。それ以前の、初期震源情報受信からAQUA-MT推定までの解析内容、およびデータ種別、帯域、記録長等のパラメータは、基本的に現行の解析と同じである。
現行のAQUAでは、CHLの探索を以下のように行っている。第1段階では、グリッド間隔を0.05°とし、初期震源の近傍のみに等間隔にグリッド点を配置し、各グリッド点で、セントロイド時刻・深さごとにモーメントテンソルの解析を行い、品質(Variance Reduction; VR)が最大となる解をそのグリッド点における解とする。これを各グリッド点で行い、VRが最大となるグリッド点を最終解の候補とする。候補点が探索範囲の端になった場合は、そのグリッド点を中心にして再度同様の解析を行う。これを繰り返し、VR最大となる候補点を得て、次の段階に遷移する。第2段階では、グリッド間隔を0.01°として、同様の解析を繰り返す。このようにして最終的なCHLを得る。なお、すでに解析したグリッド点では解析を省略する。Mw7.0以上あるいは深さ95km以上の場合は、第1、2段階のグリッド間隔をそれぞれ0.5°、0.1°としている。
以上のように、現行手法では、解析の効率性を重視する観点から、探索範囲は限定的であり、一定の空間範囲を網羅的に探索できているわけではない。そこで、一定の空間範囲を網羅的に探索する修正を行った。
今回の検討では、Dreger et al. (1998)によるadaptive grid search を参考として、一つの試みとして、上記部分を以下のように変更した。すなわち、グリッド間隔を段階的に縮小することとし、Mw7.0以上、深さ95km以上の場合には、グリッド間隔0.5°、0.1°の2段階、これ以外の場合は0.25°、0.1°、0.05°、0.01°の4段階とした。CHLの探索範囲については、地震の規模が増加すると震源断層の破壊域が広域化すると考えられることから、以下の様に設定した。グリッド間隔の最も大きい第1段階において、前者のケースでは初期震源からの探索域の幅W (°)はAQUA-MTのMwに応じて W=1.5+0.5×3(Mw-7.0) とし、後者の場合は、初期震源の震源決定誤差を考慮し、最低1.0°とした。さらに、後続の段階においては前段階のグリッド間隔の2倍以上とした。このように設定したグリッド間隔、探索範囲をもとに、基本的には現行の解析と同様のながれで最終的なCHLを推定した。
結果
最終的なCHLは、解の得られた58地震中、42地震が現行手法の解析結果と同じ位置に推定され、53地震が水平距離10km以内に推定された。VRの変化は、同位置の場合は0.0%であり、それ以外では最大でも0.9%以下であった。水平距離は、深発地震、観測網から離れた観測点のカバレッジが十分でない地震で大きくなる傾向が見られた。方位角ギャップを指標とした場合、方位角ギャップが220°程度以上で、水平距離が明らかに大きくなる傾向が見られる。このことから、カバレッジがある程度良好であれば、現行手法でもある程度CHLが制約出来ていると考えられる。
次に、改良手法により推定したCHLと初期震源位置の水平距離と、Mwの関係を確認したところ、ばらつきが大きく両者の相関は明瞭ではなかった。しかし、前述した深発地震やカバレッジの悪い地震、複合地震と考えられるケース(2012/12/07の地震)を除いたところ、両者が大まかに相関する傾向が認められた。
考察
セントロイド位置は破壊の重心を表し、また地震の規模が大きいほど破壊域が広がると考えられることから、初期破壊位置とCHLの距離が地震の規模と相関することは、この考え方と矛盾しないと言える。ただし、現行の解析と同様に、地震の規模が大きいほど長い帯域の地震波形を解析に用いており、空間分解能は低下すると考えられる。実際に、初期震源位置からCHLの移動によるVRの変化は58地震中45地震で5.0%以下であった。このような制約はあるが、実際に、いくつかの地震については、震源過程の解析で推定された大きなすべり域の中心に近づく方向にCHLが移動することが確認できた。
