講演情報
[P08-01]摩擦発熱を考慮した中速度回転せん断摩擦試験における花崗岩の摩擦挙動の解析
*草田 亘太郎1、福山 英一1 (1. 京都大学)
巨大地震発生時の断層挙動を解明するためには,ある程度早いすべり速度(〜mm/s)で長距離(〜m)のすべりが発生する条件下における断層摩擦を解明する必要がある.このような環境下では,摩擦発熱の影響は無視できない.岩石摩擦における速度・状態依存摩擦(RSF)則は,経験的に速度と状態変数に対する摩擦挙動の依存を説明する一方,その定式化に明示的に温度項を含まないため,比較的長距離かつ高速度のすべり条件下で顕在化する熱活性化に伴う摩擦挙動をうまく表現できないという課題がある.自然地震の断層すべりに重要となる摩擦強度の弱化機構の多くは,摩擦面の温度変化により誘起・加速され得る(e.g. Rice, 2006)ため,温度変化による影響が考慮されていない従来の速度・状態依存摩擦パラメータを低速条件から外挿したのでは,摩擦応答を正しく表現できない.本研究では,地震時の断層すべり速度に近い中速度域(〜mm/s),および長すべり距離(〜m)条件下で回転せん断試験を行い,摩擦挙動の解析と評価を行った.実験には中空円筒状に加工した福建省花崗岩を使用した.室温室内湿潤条件で2MPaの法線応力を加え,すべり速度が5.0×10-3m/sと1.5×10-2m/sの間を行き来するVelocity Step Change Testを行った.実験時に中空円形摩擦面の外縁部温度を非接触放射温度計で連続的に計測した.実験の結果,特に正の速度変化の際,速度増加ステップに対して見られる典型的な弱化挙動とは異なる摩擦挙動を示した.具体的には,ステップ直後に摩擦係数が指数関数的に一旦低下するものの,時間遅れを伴って急激に上昇に転じたのち定常状態に達したデータや,摩擦係数がある一定の値周辺で不安定に擾乱するデータが得られ,従来の速度・状態依存摩擦則の枠組みでは本実験において得られた結果を再現できなかった.遅いすべり速度(〜µm/s)において,摩擦面の温度の急上昇が速度低下ステップに類似した過渡摩擦挙動を誘発することが示されており(Chester, 1994, JGR),本実験における急激な摩擦係数の変化も,長距離・高速度のすべりに伴う摩擦面の継続的な温度上昇が起因している可能性がある.摩擦面の推定温度場を,Chester(1994)による熱活性化の考えに基づく構成則に適用することで,摩擦挙動の再現を試みる.摩擦面の温度は,二次元の軸対象領域における有限要素解析によって,摩擦によるエネルギーが全て熱に変換されるとして推定した.実験において測定された摩擦面外縁部における温度は,有限要素解析によって推定した外縁部の温度と大きく差異はなかった.本実験で得られたデータはChester(1994)の構成則と定性的に整合する傾向を示した.今後,提案されている摩擦発熱を考慮した断層摩擦構成則の適用性評価を行い,室内実験データを適切に解析することで,中速度・長すべり距離における岩石摩擦パラメータの推定を行い,巨大地震発生時の断層摩擦挙動の解明へつなげていきたい.発表では,上記の枠組みに基づく摩擦パラメータの推定と摩擦発熱によるパラメータ較正の影響を報告する.
