講演情報
[P08-02]北海道有珠昭和新山で発生している極微小地震活動
*川池 陸人1、石瀬 素子2、竹尾 明子3、西田 究3、青山 裕4、青木 陽介3 (1. 山形大学大学院理工学研究科理学専攻、2. 山形大学理学部、3. 東京大学地震研究所、4. 北海道大学理学研究院地震火山観測研究センター)
1.背景・目的 有珠昭和新山は,1943-1945年の噴火で形成された標高約400 mの火山であり,溶岩ドームとその周辺に位置する屋根山と呼ばれる潜在ドームから成る.その内部の地震波速度構造を明らかにするため,山体及びその周辺地域で短周期地震計21台を用いた約1ヶ月間の臨時地震観測が2018年に実施された (Takeo et al., 2022).取得した波形には,基盤的地震観測網では観測されないような極微小な地震も多数記録されていた.これらの波形は短い継続時間と高い卓越周波数が特徴であり,溶岩ドーム内で集中して発生していることがわかっている.また,これらの活動の原因として,火山活動に伴う熱との関連が示唆されている (竹尾・他,2024).そこで,我々は,昭和新山で新たに発見された極微小地震活動と熱の関係を明らかにするために,昭和新山の溶岩ドームとその周辺において約3ヶ月間の地震と地温の同時観測を実施した.本研究では,取得した地震記録を用いて,微小地震の検出,震源決定,および微小地震活動と地温の変化の関係についての検討を行った.
2.観測 2024年5月17日-同年9月7日に昭和新山の溶岩ドームとその周辺において,地震と地温の同時観測を実施した.地震観測は,2018年の観測と同じ地震計を溶岩ドーム上に3台,周辺に4台設置した.温度観測は,地面に約1 mの穴を穿孔し,そこに1mの長さの熱電対を埋設して,10分間隔で地温の記録を行った.設置地点は,噴気孔である亀岩付近と,山頂付近の2か所を選定した.
3.データ・解析・結果
a. 微小地震活動 2024年の連続波形記録から極微小地震の検出を行った.検出には,ymaeda_opentools (Maeda, 2025) を用いた.生波形と1 - 90 Hzのバンドパスフィルタを適用した波形について,前後1秒間の平均二乗振幅が,指定した全観測点で2倍以上となる時刻を検出した.指定する観測点の組み合わせを変えながら,上記の解析を7ケース実施した.そして,検出した時刻の波形を目視で確認し,気象庁一元化震源リストやV-net (防災科研) の記録を参考にして昭和新山で発生した極微小地震とその他の地震を区別し,極微小地震の発生時刻をリスト化した.その結果,極微小地震を全観測期間を通じて5985個検出した.
b. 地温測定 亀岩付近の観測点と山頂付近の観測点の平均地温はそれぞれ97.1 ℃,77.6 ℃であった.両観測点ともに,それぞれで独立した地温が低下するイベントが見られた.気象データと比較すると,山頂付近の観測点の地温の低下は降水のタイミングと同期していることが分かった.一方,亀岩付近の観測点の地温の低下については,降雨との同期は見られず,2-5日間かけて地温が低下して元の水準まで上昇するイベントが8回観測された.このときの変化の幅は最大で7-8 ℃であった.
c. 微小地震活動と地温の関係 亀岩付近の観測点において,地温低下イベント発生と同期するようにに1日あたりの微小地震の発生回数が増加する傾向が見られた.これは,微小地震が火山体内部での温度変化によって誘発されている可能性を示唆している.
d. 微小地震の震源 2018年と2024年の観測データについて,振幅が大きいイベントに対して山体上とその周辺の6観測点の記録を用いて震源位置と速度構造(速度一定を仮定)を未知数としたグリッドサーチを行った.初動の読み取りは手動で行った.震源位置は,全観測点ペアでの理論的な到達時間の差と観測到達時間の差が最小値を与える(相対走時残差が最小となる)グリッドを震源と決定した.この際,計算に使用するP波速度は一様として,500 - 2000 m/sで変化させた.走時を計算するグリッドは,昭和新山周辺に水平方向に10 m,鉛直方向に1 m間隔で作成し,地表面よりも下に探索範囲を限定した.現時点では,2018年観測から84イベント,2024年観測から10イベントの微小地震の震源を決定している.これらの平均の相対走時残差が最小となるP波速度は,2018年観測のイベントでは900 m/s,2024年観測のイベントでは1300 m/sと求まった.推定された震源は山体内部の標高150 m以浅,山頂のやや東側に集中しており,先行研究で行われた昭和新山内部の密度推定 (Nishiyama et al., 2017) で溶岩部分と推定された高密度領域と調和的な分布となった.
4.考察 上記の結果から,昭和新山での微小地震は山体内部の溶岩部での微小な破壊に起因していると考えられる.その原因として,山体内部を起源とする冷却現象の発生が考えられる.
謝辞 本研究には,先三松正夫記念館館長の三松三郎氏のご協力をいただきました.また,気象庁・文部科学省が協力してデータを処理した結果を使用しました.ここに感謝の意を表します.
引用文献
Maeda, Y (2025) ymaeda_opentools 2025-08-08a. Zonodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.16777105.
Nishiyama R., Miyamoto S., Okubo S., Oshima H. Maekawa, T. (2017) 3D density modeling with gravity and muon-radiographic observations in Showa-Shinzan lava dome, Usu, Japan, Pure and applied Geophysics, 174, 1061–1070.
Takeo A, Nishida K, Aoyama H, Ishise M, Kai T, Kunihara R, Maeda T, Mizutani Y, Nakashima Y, Nagahara S, Wang X, Ye L, Akuhara T & Aoki Y(2022) S-wave modeling of Showa-Shinzan lava dome in Usu Volcano, Northern Japan, from seismic observations, Geophysical Journal International, 230, 1662-1678.
竹尾明子, 石瀬素子, 川池陸人, 西田究, 青山裕, 青木陽介 (2024) 昭和新山内部の極微小地震活動の震源位置推定, S09P-01.
2.観測 2024年5月17日-同年9月7日に昭和新山の溶岩ドームとその周辺において,地震と地温の同時観測を実施した.地震観測は,2018年の観測と同じ地震計を溶岩ドーム上に3台,周辺に4台設置した.温度観測は,地面に約1 mの穴を穿孔し,そこに1mの長さの熱電対を埋設して,10分間隔で地温の記録を行った.設置地点は,噴気孔である亀岩付近と,山頂付近の2か所を選定した.
3.データ・解析・結果
a. 微小地震活動 2024年の連続波形記録から極微小地震の検出を行った.検出には,ymaeda_opentools (Maeda, 2025) を用いた.生波形と1 - 90 Hzのバンドパスフィルタを適用した波形について,前後1秒間の平均二乗振幅が,指定した全観測点で2倍以上となる時刻を検出した.指定する観測点の組み合わせを変えながら,上記の解析を7ケース実施した.そして,検出した時刻の波形を目視で確認し,気象庁一元化震源リストやV-net (防災科研) の記録を参考にして昭和新山で発生した極微小地震とその他の地震を区別し,極微小地震の発生時刻をリスト化した.その結果,極微小地震を全観測期間を通じて5985個検出した.
b. 地温測定 亀岩付近の観測点と山頂付近の観測点の平均地温はそれぞれ97.1 ℃,77.6 ℃であった.両観測点ともに,それぞれで独立した地温が低下するイベントが見られた.気象データと比較すると,山頂付近の観測点の地温の低下は降水のタイミングと同期していることが分かった.一方,亀岩付近の観測点の地温の低下については,降雨との同期は見られず,2-5日間かけて地温が低下して元の水準まで上昇するイベントが8回観測された.このときの変化の幅は最大で7-8 ℃であった.
c. 微小地震活動と地温の関係 亀岩付近の観測点において,地温低下イベント発生と同期するようにに1日あたりの微小地震の発生回数が増加する傾向が見られた.これは,微小地震が火山体内部での温度変化によって誘発されている可能性を示唆している.
d. 微小地震の震源 2018年と2024年の観測データについて,振幅が大きいイベントに対して山体上とその周辺の6観測点の記録を用いて震源位置と速度構造(速度一定を仮定)を未知数としたグリッドサーチを行った.初動の読み取りは手動で行った.震源位置は,全観測点ペアでの理論的な到達時間の差と観測到達時間の差が最小値を与える(相対走時残差が最小となる)グリッドを震源と決定した.この際,計算に使用するP波速度は一様として,500 - 2000 m/sで変化させた.走時を計算するグリッドは,昭和新山周辺に水平方向に10 m,鉛直方向に1 m間隔で作成し,地表面よりも下に探索範囲を限定した.現時点では,2018年観測から84イベント,2024年観測から10イベントの微小地震の震源を決定している.これらの平均の相対走時残差が最小となるP波速度は,2018年観測のイベントでは900 m/s,2024年観測のイベントでは1300 m/sと求まった.推定された震源は山体内部の標高150 m以浅,山頂のやや東側に集中しており,先行研究で行われた昭和新山内部の密度推定 (Nishiyama et al., 2017) で溶岩部分と推定された高密度領域と調和的な分布となった.
4.考察 上記の結果から,昭和新山での微小地震は山体内部の溶岩部での微小な破壊に起因していると考えられる.その原因として,山体内部を起源とする冷却現象の発生が考えられる.
謝辞 本研究には,先三松正夫記念館館長の三松三郎氏のご協力をいただきました.また,気象庁・文部科学省が協力してデータを処理した結果を使用しました.ここに感謝の意を表します.
引用文献
Maeda, Y (2025) ymaeda_opentools 2025-08-08a. Zonodo. https://doi.org/10.5281/zenodo.16777105.
Nishiyama R., Miyamoto S., Okubo S., Oshima H. Maekawa, T. (2017) 3D density modeling with gravity and muon-radiographic observations in Showa-Shinzan lava dome, Usu, Japan, Pure and applied Geophysics, 174, 1061–1070.
Takeo A, Nishida K, Aoyama H, Ishise M, Kai T, Kunihara R, Maeda T, Mizutani Y, Nakashima Y, Nagahara S, Wang X, Ye L, Akuhara T & Aoki Y(2022) S-wave modeling of Showa-Shinzan lava dome in Usu Volcano, Northern Japan, from seismic observations, Geophysical Journal International, 230, 1662-1678.
竹尾明子, 石瀬素子, 川池陸人, 西田究, 青山裕, 青木陽介 (2024) 昭和新山内部の極微小地震活動の震源位置推定, S09P-01.

