講演情報

[P08-15]海底圧力計と陸上GNSSデータを用いた2024年房総スロースリップのすべり分布の推定

*金澤 志旺1、佐藤 利典2、碓氷 典久3、中東 和夫4、山田 知朗5、篠原 雅尚5 (1. 千葉大学、2. 千葉大学大学院理学研究院、3. 気象研究所、4. 東京海洋大学、5. 東京大学地震研究所)
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1.はじめに
スロースリップ(SSE)は,通常の地震とは異なり,地震波を出さずに断層やプレート境界がすべる現象である。プレート境界で起こるSSEの多くは,海底下で発生している。これを連続的に観測する方法として,海底圧力計(OBP)による上下地殻変動の観測が試みられている。OBPで得られるデータにはSSE以外に,潮汐,海洋変動,海底の季節変動,周辺の大地震による余効変動などの変化が含まれる。これらのSSEに由来しない変化を除去するため,これまで様々な手法が用いられてきた。近年は,マルチチャンネル特異スペクトル解析(MSSA)を適用する方法が開発された(Sato et al., GRL, 2024)。2018年のSSEから約6年後の2024年2月下旬~3月上旬にかけて,房総半島沖で再びSSEが発生した。この研究では,MSSAにより抽出した房総SSEによる変動を用いて,2024年の房総SSEのすべり分布の推定を行った。

2.データと解析方法
用いたデータはOBPデータと気象研究所が開発した海洋モデルデータである。潮汐とトレンドを除去したOBPデータとトレンドを除去した海洋モデルに対してMSSAを適用した。MSSAとは,複数のチャンネル間を似た成分に分解する方法である。次に,各成分でOBPデータと海洋モデルデータの相関を取り,相関の良いもののみを用いて海洋モデルを再構成した。これは,海洋モデルデータから観測データをよく再現できている成分のみを取り出し,海洋モデルの不完全さを補償していることに当たる。OBPデータから再構成した海洋モデルデータを差し引くことでより良く海洋変動を除去することができる。その後,海洋変動を除去したデータに海底の季節変動やSSEによる変動などを表したパラメトリック関数のフィッティングをすることで,SSEによる変動を抽出した。
また,房総SSEのすべり分布の推定のため,上記方法で得られたOBPの上下変動データと,国土地理院の日々の座標値(F5解)による陸上のGNSSデータを用いた。GNSSデータからトレンドと季節変動を取り除き,SSE による変動を抽出した。この変動データを用いて,すべり分布がなめらかである,すべり方向がプレート運動方向に近い,フレームエラー(GNSS 観測網全体の回転,膨張,移動)が小さい,という3つの拘束条件を与えて SSE のすべり分布の推定を行った。拘束条件の強さは ABIC を用いることで客観的に求めた。

3.結果 
OBPデータの解析の結果,SSEのすべりの中心と思われる観測点でわずかに隆起,その周辺の観測点ではほぼ変動なしという結果となった。これは,前回の2018年の房総SSEと比べると変動が小さく,2024年の房総SSEは,規模が比較的小さかったことを示唆している。 
すべり分布については,OBPを入れた結果と陸上GNSSデータのみの結果を比較した。すべり分布は,OBP データを入れた場合の結果は,北西―南東方向に伸び,すべりの領域が2つに分かれた分布をしている。GNSS データのみの場合の結果は,すべりの領域は1つの分布をしている。

謝辞
本研究の遂行にあたり、海洋研究開発機構「新青丸(KS24-13)」、東京海洋大学「神鷹丸」、海洋エンジニアリング(株)「第二開洋丸」を使用させて頂きました。各船長以下、乗組員の方々に感謝します。本研究は文部科学省の「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の支援および科研費(23K03541) の補助を受けました。