講演情報

[P08-21]マルチスケール円形パッチモデルを用いた準動的地震発生サイクルシミュレーション

*中田 令子1、堀 高峰2、青地 秀雄3,4、井出 哲1 (1. 東京大学大学院理学系研究科、2. 海洋研究開発機構海域地震火山部門、3. フランス地質調査所、4. ENS-CNRS PSL, France)
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【はじめに】
本研究では、繰り返し地震などの観測から示唆されているような、地震発生域における空間的な階層構造を理解するために、日本海溝沿いの三陸沖で発生する幅広いマグニチュードの地震に対して、マルチスケール円形パッチモデル [Ide and Aochi, 2005; Aochi and Ide, 2009; Ide and Aochi, 2013]を適用し、準動的な地震発生サイクルシミュレーションを行った。
【手法】
マルチスケール円形パッチモデルは、Ide and Aochi [2013]では、2011年東北地方太平洋沖地震の複雑な動的破壊過程を説明するために用いられたものを参考にした。本研究では、三陸沖に着目するため、最大規模の地震(グループ1)は、1896年明治三陸地震 (M = 8)である。気象庁カタログを基に、1923年1月~2023年3月に発生した、震源深さ60 km以浅、Mj = 5.6以上8.0未満の地震を規模別にグループ分けした。2番目に大きな規模のグループ2は、Mj = 7.1~7.6の6地震、グループ3はMj = 6.6~7.2の9地震、グループ4はMj = 5.6~6.5の362地震である。各グループの地震の震源域は、震央を中心とした同じ半径の円で近似するが、ここでは、グループ1・2・3・4でそれぞれ半径80・40・20・10 kmの円形パッチを配置した。4グループの組み合わせを変えて、8通りのパッチ分布モデルで数サイクル分の計算を行い、結果を比較した。
  地震発生サイクルシミュレーションの数値計算は、先行研究 [Nakata et al., 2016; 2021; 2023]と同様の物理法則・初期値・境界条件・プレート境界面形状等で実施した。各グループのパッチでは、特徴的すべり量を円の半径に比例して変化させることで、空間的に不均質な階層構造を与えた。A-Bはモデル領域全体で一様に、すべり速度弱化とした。
【結果・議論】
短くとも200年、長いもので750年分の計算を行い、各モデルでM>8地震の3~6サイクル分の結果を得た。モデルの階層構造が増えるにつれて、すべり分布や地震の繰り返し間隔などの時空間的特徴について複雑なふるまいを示した。特に、大きいパッチは、その周辺に位置しているパッチのすべり挙動に大きな影響を与えるが、小さいパッチは、大地震の破壊開始過程・前震・余震において重要な役割を果たしていた。例えば、グループ1のみのモデルでは、M8.03の地震が、繰り返し間隔52.067 ± 0.00 年で発生し、破壊開始点はパッチ内部であった。グループ1と4を組み合わせたモデルでは、M>8地震の繰り返し間隔は短くなった。これは、M6前後の地震が、M>8地震発生域の固着はがれを促進したためと考えられる。また、破壊開始点は、大パッチ内部だけではなく、大パッチの端に位置する小パッチ周辺にも分布していた。4階層のモデルでは、M>8地震の破壊は、最大パッチ内部からではなく、すべり域の端に近い小さめのパッチで開始し、より大きなパッチに拡がっていった。本研究の結果は、動的破壊過程だけではなく、地震サイクルにおいても、階層構造モデルが本質的に重要であることを示唆している。