講演情報

[P09-05]分布型音響センシングを用いた津軽海峡周辺の低周波地震の検出

*馬場 慧1,2、荒木 英一郎2、横引 貴史2、天野 格3、酒井 亨3、関口 拓真3、野口 科子4 (1. 九州大学、2. 海洋研究開発機構、3. 電源開発株式会社、4. 地震予知総合研究振興会)
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低周波地震(LFE)は、通常の地震よりも低周波に卓越した波形で特徴づけられ、プレート境界のほか、火山周辺や内陸でも発生している。津軽海峡では、北東部と南東部にLFEクラスターが存在し、これらのLFEは気象庁や地震予知総合研究振興会(以下、振興会)によって定常的にモニタリングされている。しかし、海域や沿岸域で発生するこれらのLFEの検出率を上げるには、陸域だけでなく海域の地震観測データの併用が有効である。津軽海峡では、海底ケーブルを用いた分布型音響センシング(DAS)観測が行われている。DASは、光ファイバーケーブルに沿った歪もしくは歪速度を高密度に計測できるという特徴があり、既に敷設されている海底ケーブルを利用できるため、海底地震計の設置よりも低いコストで海域地震観測を実現できる。本研究では、DASによって観測されるLFEの波形の特徴を調べ、陸上地震計と海域のDASデータの併用による津軽海峡のLFEの検出を行った。使用したDASデータは、2022年10月15日から2023年2月6日、2023年6月28日から2023年10月16日、2024年9月13日から2025年2月16日のデータである。2023年6月から10月の期間の観測には超安定レーザーを使用し、ノイズレベルの低減を図った。陸上地震データについては、振興会が設置したAS-net地震観測網のデータを使用した。
DASで観測されたLFEの波形は、P波やS波の立ち上がりが不明瞭であり、P波やS波の到来を読み取ることが難しいという特徴があった。また、DASの波形では同一のクラスターで発生し震源が近いLFEペアの波形でも相互相関係数が概して低かった。これらの波形の特徴は、海域の強い不均質性のために散乱が強いこと、またDASが散乱波に感度が高いことが原因である可能性がある。
上記のようなDASによって観測されたLFE波形の特徴をふまえ、LFEの検出は、津軽海峡を挟む13点のAS-net地震波形データと、1 kmおきのDASの歪波形データを用いて、エンベロープ相関法(Mizuno & Ide, 2019)によって行った。通常の地震を除去するために、Nakajima & Hasegawa (2021) が定義したFrequency Index valueが-0.55未満のイベントをLFEとして残した。その結果、気象庁や振興会によって検出・震源決定されているLFEに加えて、新たなイベントが検出された。特に津軽海峡南東部のLFEクラスターでは、20個程度の新しいイベントが検出され、LFE活動は1–2ヶ月おきに起こる傾向があった。津軽海峡北東部では、深さ20 km程度のLFEに加え、深さ数kmの震源が浅いLFEが気象庁や振興会によって記録されているが、それらの浅いイベントもDASで観測できていた。今後は震源決定精度の改善のために手法の検討を行う。

謝辞:本研究では、Mizuno & Ide (2019) によるエンベロープ相関法のコードを使用しました。また、振興会による地震観測網AS-netのデータと、振興会による低周波地震カタログおよび気象庁一元化地震カタログを用いました。