講演情報
[P09-08]DONET2観測網による室戸沖における超低周波地震と通常地震の分布
*山本 揚二朗1、矢田 修一郎1、楠城 一嘉2、高橋 成実3 (1. 海洋研究開発機構、2. 静岡県立大学、3. 防災科学技術研究所)
南海トラフ巨大地震発生帯では,これまでM8級の地震が繰り返し発生してきた.また、政府の地震調査委員会は,今後30年以内にM8以上の地震が発生する確率を80%程度と評価している.このような背景から,南海トラフ地震発生帯の地殻活動モニタリングの高精度化が求められている.一方,対象震源域は広範囲に及び,半分以上を海域が占める.このため,陸上観測網のみによるモニタリングは不完全であり,海域観測網の活用が重要である.
熊野灘から紀伊水道にかけて,2012年以降、地震・津波観測監視システムDONET観測網が整備・運用されている.本研究では,DONET観測網による広帯域地震観測データに基づき,観測網内における超低周波地震(VLFE)の活動域を調査した.特に,2018年に紀伊水道で発生したと考えられるスロースリップイベント(SSE)の期間に着目し,SWIFT(Nakano et al. 2008)によるCMT解析を行い,2022年に観測されたVLFE活動(山本・他, 2022)など過去の活動との比較を行った.解析手順はYamamoto et al. (2022a)に準拠した.
解析の結果,DONET2海域の室戸沖において,3か所のVLFE活動域を同定した.これらの活動域は2018年および2022年の双方で共通して確認された.このうちDONET2-nodeF付近およびDONET2-nodeGの南付近の活動域では,それぞれ1か月以上および2週間程度にわたり活動が継続する特徴が,2回のエピソードで共通してみられた.一方,DONET2-nodeGの東側の活動域は,いずれのエピソードでもVLFE活動の開始位置となったが,その後の発展様式は2回で異なった.さらに,2025年4月には,同地点でVLFE活動を確認したが、他の活動域への発展は認められなかった.
さらに,DONET観測網における過去10年分の通常地震について,隣接する陸域のHi-netおよびF-net観測網と統合し,Yamamoto et al. (2022b)による3次元速度構造を用いて,tomoFDD (Zhang and Thurber, 2006)により震源再決定を行った.この結果に基づき,プレート境界(Nakanishi et al. 2018)周辺の通常地震とVLFEの空間関係を評価した.DONET2-nodeF付近では,プレート境界周辺において地震活動が確認できるものの,数が少なく,VLFEのほうが活発であった.また,DONET2-nodeGの東側では,通常地震は海洋性地殻内に集中し,VLFEとは深さ方向にすみ分けている.一方で,DONET2-nodeG付近南側では、VLFE・通常地震ともにプレート境界付近に多く分布した.同領域では,SSE発生時にプレート境界で通常地震が群発した事例が報告されている(Yamamoto et al. 2022b)が,通常地震は空間的に散在しており,震源位置の決定精度に課題がある可能性も示唆される.
今後,他時期のVLFE活動を含めた包括的な検討,通常地震の震源決定の高精度化,および微動活動との比較検討を進める.
引用文献
Nakanishi et al. 2018. https://doi.org/10.1130/2018.2534(04)
Nakano et al. 2008. https://doi.org/10.1111/j.1365-246X.2008.03783.x
Yamamoto et al. 2022a. https://doi.org/10.1186/s40623-022-01573-x
Yamamoto et al. 2022b. https://doi.org/10.1186/s40645-022-00493-4
山本・他 2022. https://confit.atlas.jp/guide/event/zisin2022/subject/S09P-21/advanced
Zhang and Thurber, 2006. https://doi.org/10.1007/s00024-005-0021-y
謝辞
本研究では,防災科学技術研究所が管理・運用するDONET https://doi.org/10.17598/NIED.0008 Hi-net https://doi.org/10.17598/nied.0003とF-net https://doi.org/10.17598/NIED.0005 の波形記録を利用しました.また,JSPS科研費22K03776および公益財団法人セコム科学技術振興財団の助成を受けています.
熊野灘から紀伊水道にかけて,2012年以降、地震・津波観測監視システムDONET観測網が整備・運用されている.本研究では,DONET観測網による広帯域地震観測データに基づき,観測網内における超低周波地震(VLFE)の活動域を調査した.特に,2018年に紀伊水道で発生したと考えられるスロースリップイベント(SSE)の期間に着目し,SWIFT(Nakano et al. 2008)によるCMT解析を行い,2022年に観測されたVLFE活動(山本・他, 2022)など過去の活動との比較を行った.解析手順はYamamoto et al. (2022a)に準拠した.
解析の結果,DONET2海域の室戸沖において,3か所のVLFE活動域を同定した.これらの活動域は2018年および2022年の双方で共通して確認された.このうちDONET2-nodeF付近およびDONET2-nodeGの南付近の活動域では,それぞれ1か月以上および2週間程度にわたり活動が継続する特徴が,2回のエピソードで共通してみられた.一方,DONET2-nodeGの東側の活動域は,いずれのエピソードでもVLFE活動の開始位置となったが,その後の発展様式は2回で異なった.さらに,2025年4月には,同地点でVLFE活動を確認したが、他の活動域への発展は認められなかった.
さらに,DONET観測網における過去10年分の通常地震について,隣接する陸域のHi-netおよびF-net観測網と統合し,Yamamoto et al. (2022b)による3次元速度構造を用いて,tomoFDD (Zhang and Thurber, 2006)により震源再決定を行った.この結果に基づき,プレート境界(Nakanishi et al. 2018)周辺の通常地震とVLFEの空間関係を評価した.DONET2-nodeF付近では,プレート境界周辺において地震活動が確認できるものの,数が少なく,VLFEのほうが活発であった.また,DONET2-nodeGの東側では,通常地震は海洋性地殻内に集中し,VLFEとは深さ方向にすみ分けている.一方で,DONET2-nodeG付近南側では、VLFE・通常地震ともにプレート境界付近に多く分布した.同領域では,SSE発生時にプレート境界で通常地震が群発した事例が報告されている(Yamamoto et al. 2022b)が,通常地震は空間的に散在しており,震源位置の決定精度に課題がある可能性も示唆される.
今後,他時期のVLFE活動を含めた包括的な検討,通常地震の震源決定の高精度化,および微動活動との比較検討を進める.
引用文献
Nakanishi et al. 2018. https://doi.org/10.1130/2018.2534(04)
Nakano et al. 2008. https://doi.org/10.1111/j.1365-246X.2008.03783.x
Yamamoto et al. 2022a. https://doi.org/10.1186/s40623-022-01573-x
Yamamoto et al. 2022b. https://doi.org/10.1186/s40645-022-00493-4
山本・他 2022. https://confit.atlas.jp/guide/event/zisin2022/subject/S09P-21/advanced
Zhang and Thurber, 2006. https://doi.org/10.1007/s00024-005-0021-y
謝辞
本研究では,防災科学技術研究所が管理・運用するDONET https://doi.org/10.17598/NIED.0008 Hi-net https://doi.org/10.17598/nied.0003とF-net https://doi.org/10.17598/NIED.0005 の波形記録を利用しました.また,JSPS科研費22K03776および公益財団法人セコム科学技術振興財団の助成を受けています.
