講演情報
[P09-10]南海トラフ周辺を対象とした新たな三次元地震波速度構造を用いた震源決定の試行(2)~モデルの更新とN-netの導入~
*汐見 勝彦1、松原 誠1、仲西 理子2、藤江 剛2、浅野 陽一1、三好 崇之1 (1. 防災科学技術研究所、2. 海洋研究開発機構)
南海トラフ周辺域は,沈み込むフィリピン海プレートを含む複雑な地下構造を構成している.この海域で発生する地震活動を適確に把握するためには三次元地震波速度構造を用いた震源位置の推定が不可欠である.汐見・他(2024; SSJ)は,過去に実施された構造探査や地震波解析の結果を統合することにより構築された三次元地下構造モデル(BN23.Nakanishi et al., 2024; JpGU)を用いて,日向灘及び紀伊半島南東沖を対象とした震源再決定結果を報告した.Nakanishi et al.(2025; JpGU)は,BN23に新たな構造モデルの情報を加味するとともに,その統合方法の見直しを行うことにより,新たなモデル(BN24)を提案した.今回,BN24を用いた震源再決定を試行するとともに,新たに整備された南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)の沖合システムの検測値も取り込んだ震源再決定を行い,その分布の変化を確認した.
解析方法・データ
防災科研では,一次元地震波速度構造に基づく自動震源決定システム(Hi-netシステム)による震源情報をトリガーとして,三次元地震波速度構造を用いた震源再計算を自動的に実施するシステムを整備,稼働させている(汐見・他, 2022; SSJ).今回,このシステムにBN24及びトモグラフィ解析による構造モデル(MB22.Matsubara et al., 2022; EPS)を新たに採用し,システムの過去震源再計算機能を用いて,日向灘及び紀伊半島南東沖で2003年1月~2025年6月に発生したM2.0以上の地震の震源再決定を行った.震源再決定における走時計算はPseudo-bending法(Koketsu & Sekine, 1998; GJI)を用いた. 2024年7月以降に発生した地震ついては,N-net沖合システムの検測値を含めた.得られた震源再計算結果について,Hi-netシステムによる震源や気象庁一元化震源,フィリピン海プレートの上面形状モデル(Nakanishi et al., 2025)等との比較検討を行った.
結果・議論
日向灘では,全体的に再決定震源は初期震源(Hi-netシステムによる震源)よりも浅くなる傾向が見られた.また,日向灘中部及び南部では,沖合で発生した地震の震央位置が数kmから十数km,九州側に移動した.BN23使用時に特徴的だった日向灘北部の沖合の浅い活動はMB22及びBN24とも確認されず,フィリピン海プレート上面付近の活動として再決定された.日向灘中部域では,BN23を用いて決定した震源はプレート上面よりも浅部に多数の震源が分布する傾向があったが,MB22及びBN24を用いて再決定すると,深さ30km程度まではプレート上面付近,それ以深ではプレート内に震源が位置した.日向灘南部においては,BN23では2024年8月8日に発生したM7.1の地震を含むクラスタがプレート上面よりも数km浅い領域に推定されたのに対し,BN24ではプレート上面付近となった.N-net沖合システムの検測値を導入したことによる変化について,日向灘北部及び中部では震源分布に大きな変化はみられなかったが,日向灘南部ではプレート上面よりも10km以上深い地震活動は,N-net導入後にはほぼみられなくなった.
2016年4月1日に紀伊半島南東沖で発生したMw5.8地震について,Hi-netシステムでは深さを19 kmとしていたが,BN24を用いて再決定した結果,深さ12 kmとなった.この震央のプレート上面の深さは11 km程度とされており,BN23使用時同様,プレート境界型の地震であることと矛盾しない結果となった.
今後は,N-net沿岸システムを含めた震源決定並びに発震機構解決定結果の評価,観測点補正値を含む構造モデルの評価を進める予定である.
謝辞:本研究は,文部科学省「南海トラフ地震等巨大地震災害の被害最小化及び迅速な復旧・復興に資する地震防災研究プロジェクト」の一環として実施している.三次元地下構造モデル(BN23及びBN24),並びに三次元地下構造モデルを用いて震源再計算を行うシステムは,文部科学省「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」において整備を行った.Hi-netシステムでは,気象庁・大学・産業技術総合研究所等の観測データを使用している.また,解析結果の比較検討に気象庁一元化震源カタログを使用した.
解析方法・データ
防災科研では,一次元地震波速度構造に基づく自動震源決定システム(Hi-netシステム)による震源情報をトリガーとして,三次元地震波速度構造を用いた震源再計算を自動的に実施するシステムを整備,稼働させている(汐見・他, 2022; SSJ).今回,このシステムにBN24及びトモグラフィ解析による構造モデル(MB22.Matsubara et al., 2022; EPS)を新たに採用し,システムの過去震源再計算機能を用いて,日向灘及び紀伊半島南東沖で2003年1月~2025年6月に発生したM2.0以上の地震の震源再決定を行った.震源再決定における走時計算はPseudo-bending法(Koketsu & Sekine, 1998; GJI)を用いた. 2024年7月以降に発生した地震ついては,N-net沖合システムの検測値を含めた.得られた震源再計算結果について,Hi-netシステムによる震源や気象庁一元化震源,フィリピン海プレートの上面形状モデル(Nakanishi et al., 2025)等との比較検討を行った.
結果・議論
日向灘では,全体的に再決定震源は初期震源(Hi-netシステムによる震源)よりも浅くなる傾向が見られた.また,日向灘中部及び南部では,沖合で発生した地震の震央位置が数kmから十数km,九州側に移動した.BN23使用時に特徴的だった日向灘北部の沖合の浅い活動はMB22及びBN24とも確認されず,フィリピン海プレート上面付近の活動として再決定された.日向灘中部域では,BN23を用いて決定した震源はプレート上面よりも浅部に多数の震源が分布する傾向があったが,MB22及びBN24を用いて再決定すると,深さ30km程度まではプレート上面付近,それ以深ではプレート内に震源が位置した.日向灘南部においては,BN23では2024年8月8日に発生したM7.1の地震を含むクラスタがプレート上面よりも数km浅い領域に推定されたのに対し,BN24ではプレート上面付近となった.N-net沖合システムの検測値を導入したことによる変化について,日向灘北部及び中部では震源分布に大きな変化はみられなかったが,日向灘南部ではプレート上面よりも10km以上深い地震活動は,N-net導入後にはほぼみられなくなった.
2016年4月1日に紀伊半島南東沖で発生したMw5.8地震について,Hi-netシステムでは深さを19 kmとしていたが,BN24を用いて再決定した結果,深さ12 kmとなった.この震央のプレート上面の深さは11 km程度とされており,BN23使用時同様,プレート境界型の地震であることと矛盾しない結果となった.
今後は,N-net沿岸システムを含めた震源決定並びに発震機構解決定結果の評価,観測点補正値を含む構造モデルの評価を進める予定である.
謝辞:本研究は,文部科学省「南海トラフ地震等巨大地震災害の被害最小化及び迅速な復旧・復興に資する地震防災研究プロジェクト」の一環として実施している.三次元地下構造モデル(BN23及びBN24),並びに三次元地下構造モデルを用いて震源再計算を行うシステムは,文部科学省「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」において整備を行った.Hi-netシステムでは,気象庁・大学・産業技術総合研究所等の観測データを使用している.また,解析結果の比較検討に気象庁一元化震源カタログを使用した.
