講演情報
[P09-13]時空間ETASモデルにおける簡便化された非等方空間カーネル
*岩田 貴樹1,2 (1. 県立広島大学 大学教育実践センター、2. 統計数理研究所)
時空間ETAS (Epidemic-Type Aftershock Sequence)モデル[Ogata, 1998]における誘発(クラスター)成分の空間的拡がり(以下、「空間カーネル」)は、等方的(強度関数が同じ値となるコンター線が円状になる)なものを用いることが標準的である(代表的なものとしてZhuang et al. [2004])。これは取り扱いが簡便となるが、実際の地震活動に対して適切かどうかは疑問が残る。実際、Ogata [1998]においては、前処理として何らかの方法で地震をクラスターごとに分け、それぞれのクラスターの空間分布に合うよう、コンター線が楕円状となるような非等方的な空間カーネルを用いることを提案している。また、Grimm et al. [2022]は各地震について、そのマグニチュードに応じた長さの線分を断層として設定し、その断層からの最短距離で減衰するような非等方的空間カーネルを用いている。これらの方法はより現実の地震活動に対応したものである一方、クラスターあるいは地震ごとに空間カーネルの非等方性の向きを決めており推定が煩雑である。本研究では、これらの研究に比べて比較的簡便化された非等方的空間カーネルを提案する。
本研究で用いる非等方的空間カーネルはOgata[1998]と同様、楕円状のものである。Ogata [1998]ではクラスターごとに楕円の形状、即ち長軸(と短軸)の向き及び楕円率(長軸と短軸の比)を定めるが、ここでは全地震に対してそれらが共通であるとして推定を行う。広域の地震活動解析に対してはかなり無理のある仮定であり、そういったケースに対してはOgata [1998]やGrimm et al. [2022]の空間カーネルが妥当であろうし、あるいはいっそのこと、等方的な空間カーネルを用いる方が適切かもしれない。しかし、限られた小領域における地震活動、特に余震活動においては、各余震の断層の向きはある程度揃っているであろうことから、このように簡便化されたものでも十分なモデル適合性が期待される。
一例として、1995年兵庫県南部地震の余震活動に対する解析例を以下に示す。データは気象庁による一元化震源カタログを用いた。図aに示すような本震震央をほぼ中心とする55km四方の領域を解析対象とした。また、期間は本震発生から数時間後の1995年1月17日12時から、4年後の1999年1月17日12時である。マグニチュードの下限は2.8とし、解析した地震数は228個である(なお、このデータはIwata [2016, 2025]で解析したものと本質的には同じものである)。
このデータに等方的および非等方的空間カーネルを用いた時空間ETASモデルを適用したところ、非等方的空間カーネルを用いた場合の方がAICが17.1よく(小さく)、等方的空間カーネルを用いた場合より有意なモデル改善が達成されている。また、推定された強度関数を時間方向に積分することで得た、モデルによる地震の空間分布においては、等方的空間カーネルの場合(図b)に比べて非等方的空間カーネル(図c)の方が、断層の走向に沿った地震の空間分布を反映しているように見える。これらのモデルによる空間分布と実際の空間分布との合い具合を対数尤度で比較すると、非等方的空間カーネルの方が19.4よい。なお、非等方的空間カーネルにおいて推定された長軸の方位角は52°であり、種々の研究によって得られている兵庫県南部地震の断層方位角、例えばGlobal CMTによる230°(から180°引いた値)とほぼ合致する。
参考文献
- Grimm et al., 2022, BSSA, doi:10.1785/0120210097
- Iwata, 2016, Pageoph, doi:10.1007/s00024-015-1151-5
- Iwata, 2025, JABES , doi:10.1007/s13253-025-00681-x
- Ogata, 1998, AISM, doi:10.1023/A:1003403601725
- Zhuang et al., 2004, JGR, doi:10.1029/2003JB002879
本研究で用いる非等方的空間カーネルはOgata[1998]と同様、楕円状のものである。Ogata [1998]ではクラスターごとに楕円の形状、即ち長軸(と短軸)の向き及び楕円率(長軸と短軸の比)を定めるが、ここでは全地震に対してそれらが共通であるとして推定を行う。広域の地震活動解析に対してはかなり無理のある仮定であり、そういったケースに対してはOgata [1998]やGrimm et al. [2022]の空間カーネルが妥当であろうし、あるいはいっそのこと、等方的な空間カーネルを用いる方が適切かもしれない。しかし、限られた小領域における地震活動、特に余震活動においては、各余震の断層の向きはある程度揃っているであろうことから、このように簡便化されたものでも十分なモデル適合性が期待される。
一例として、1995年兵庫県南部地震の余震活動に対する解析例を以下に示す。データは気象庁による一元化震源カタログを用いた。図aに示すような本震震央をほぼ中心とする55km四方の領域を解析対象とした。また、期間は本震発生から数時間後の1995年1月17日12時から、4年後の1999年1月17日12時である。マグニチュードの下限は2.8とし、解析した地震数は228個である(なお、このデータはIwata [2016, 2025]で解析したものと本質的には同じものである)。
このデータに等方的および非等方的空間カーネルを用いた時空間ETASモデルを適用したところ、非等方的空間カーネルを用いた場合の方がAICが17.1よく(小さく)、等方的空間カーネルを用いた場合より有意なモデル改善が達成されている。また、推定された強度関数を時間方向に積分することで得た、モデルによる地震の空間分布においては、等方的空間カーネルの場合(図b)に比べて非等方的空間カーネル(図c)の方が、断層の走向に沿った地震の空間分布を反映しているように見える。これらのモデルによる空間分布と実際の空間分布との合い具合を対数尤度で比較すると、非等方的空間カーネルの方が19.4よい。なお、非等方的空間カーネルにおいて推定された長軸の方位角は52°であり、種々の研究によって得られている兵庫県南部地震の断層方位角、例えばGlobal CMTによる230°(から180°引いた値)とほぼ合致する。
参考文献
- Grimm et al., 2022, BSSA, doi:10.1785/0120210097
- Iwata, 2016, Pageoph, doi:10.1007/s00024-015-1151-5
- Iwata, 2025, JABES , doi:10.1007/s13253-025-00681-x
- Ogata, 1998, AISM, doi:10.1023/A:1003403601725
- Zhuang et al., 2004, JGR, doi:10.1029/2003JB002879

