講演情報

[P09-14]ETASモデルを用いた新潟県中越地方および岩手・宮城内陸地域の地震活動の時空間解析

*内田 晴海1、岡田 知己1、藤村 遼太郎1、田上 綾香2,1 (1. 東北大学大学院理学研究科、2. 国立研究開発法人産業総合技術研究所)
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ETAS(Epidemic-Type Aftershock Sequence)モデル(Ogata, 1988)は、すべての地震が余震をもつという仮定のもとである期間における対象領域での地震発生率を表す統計モデルで、これを空間に拡張したものが時空間ETASモデル(Ogata, 1998) である。今回対象とした地域は新潟県中越地方と岩手・宮城内陸地域である。新潟県中越地方は日本海東縁変動帯および新潟-神戸ひずみ集中帯に位置しており、過去に2004年新潟県中越地震 (M6.8) や2007年新潟県中越沖地震 (M6.8) といった大規模な地震が発生している地域である。岩手・宮城内陸地域では栗駒山など火山が多くあり、2008年に発生した岩手・宮城内陸地震 (M7.2) の発生には地殻流体が寄与している可能性がある (Okada et al., 2012; Tagami et al., 2024)。本研究ではETASモデルを用いてこれらの地震活動のモデル化を行い、実際の地震活動との乖離について各地震の特徴を踏まえて原因を考察した。 データは気象庁一元化震源カタログ(M3以上)である。新潟県中越地方および岩手宮城内陸地域の2000-2020年の期間を用いた。下限マグニチュードはZMAP (Wiemer, 2000)を用いてM3とした。ETASパラメータの推定には、時間モデルではNishikawa & Ide (2014) の手法を用い、時空間モデルではA. Jalilian (2019)のパッケージを使用した。
 それぞれの地域で大規模な地震の発生を踏まえて期間を分けてETASモデルを適用した。まず、新潟県中越地震、新潟県中越沖地震、宮城県北部地震、岩手・宮城内陸地震等の大規模な地震が発生する前の期間に対してETASモデルを計算すると、時間ETASモデル、時空間ETASモデルの両方で実際の地震活動とモデルがよく合う結果となった。次に、それらの大規模地震を含む時系列では実際の地震活動に対してモデルが過小評価する結果となった。さらに、東北地方太平洋沖地震が発生した2011/03/11を時系列に含む場合については、新潟県中越地方と岩手・宮城内陸地域の両方で地震活動が東北地方太平洋沖地震後に活発化した領域があり、実際の地震活動に対してETASモデルが下回る結果となった。この地震活動が活発化した領域を除いて時間ETASモデルのフィッティングを行うと、新潟県中越地方では東北地方太平洋沖以前のパラメータを東北地方太平洋沖地震後に外挿すると、外挿後のデータに対してモデルは過大評価となり、地震活動が低調になっていることが明らかとなった。岩手・宮城内陸地域でも同様に群発的に地震が発生している領域を除いてパラメータ推定を行うと、東北地方太平洋沖地震直後には地震活動がモデルの予測を上回るが、次第に低調となることがわかった。また、大規模な地震が含まれるデータに対してモデルが実際の地震活動を下回る結果について、ETASパラメータやb値が本震発生直後に時間変化していることが挙げられる。そこで大規模な地震を含む時系列についてより詳細に比較するために、新潟県中越地震と岩手・宮城内陸地震について本震直後の時系列データでフィッティングを行った。新潟県中越地震の本震後1週間のデータに対してフィッティングを行うと、時間モデル・時空間モデルともに実際の地震累積個数に対して大幅に下回るが、本震後3日間のデータに対して計算すると時間モデルと実際の地震活動が合う結果となった。一方で、岩手・宮城内陸地震では本震後1週間のデータに対して時間モデルと実際の地震活動が合う結果となり、時空間モデルでは実際の地震活動を上回る結果となったが、本震後3日間ではどちらのモデルでも実際の地震活動に対してモデルが上回る結果となった。上記の結果はETASパラメータが時間によって変化するが、その変化は地震ごとに異なることに起因すると考えられる。新潟県中越地震ではM6規模の余震が複数回発生しており、これらの2次余震の影響によってパラメータが変化している可能性がある。岩手・宮城内陸地震では規模が大きい余震は少ないが新潟県中越地震に比べて浅い地震が多く発生しており、断層面も比較的単純な構造となっている。このような構造的な特徴がETASパラメータの時間変化に影響している可能性がある。今後はよりETASパラメータの時空間変化により着目した解析を行い、対象領域のテクトニクスや各地震の物理的な特徴と地震活動との関連について詳細に比較していく。