講演情報

[P09-17]高自由度な震源過程モデルの階層クラスタリング:平成5年(1993年)北海道南西沖地震への適用

*原嶋 幸生1、八木 勇治1、奥脇 亮1 (1. 筑波大学)
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日本海沿岸域では逆断層型の地震活動が活発である。これらの地震は、日本海が形成された時期に生じた正断層と、その後の圧縮場で新しく形成された逆断層で発生していると考えられている。この地域で発生する地震では、令和6年能登半島地震のように複数の断層が連動して破壊することで規模の大きな地震となる可能性がある。そのような地震の破壊過程を調べるためには、断層形状の変化や複雑な破壊伝播を表現できる高自由度な震源過程モデルが不可欠である。
ポテンシー密度テンソルインバージョン(PDTI)法は遠地実体波P波を用いた高自由度なインバージョン手法である。PDTI法は従来手法で行われていた断層形状の詳細な仮定をすることなく、形状の異なる複数の断層破壊を含む複雑な震源過程を推定することができる。PDTIモデルを用いた複数の断層セグメント境界や異なる断層の連動性の評価については、余震分布や活断層の情報を統合して解釈されてきた。しかし、海域で発生する地震などでは参照できる情報が限られる場合も多く、さらに個々の地震に対する主観的な解釈が、複数のPDTIモデルを比較する際の困難さにつながる。そこで本研究は、PDTIモデルのもつ情報のみから異なる断層セグメントやその連動破壊の可能性を抽出・整理することを目的として、PDTIモデルを分類する階層クラスタリング手法を開発した。
階層クラスタリングは、データ間の類似度を計算し、樹形図やシルエット法などを用いることで、最適なクラスター数を決定する手法である。そのため、事前にクラスター数を仮定せず、結果に基づいて設定した指標からクラスター数を決定することができる。本研究では、PDTI法によって推定された震源過程モデルに対して、断層形状のパラメータに階層クラスタリングを適用することで、断層破壊の時空間的な特徴を客観的に解釈することを目的とする。
本研究は平成5年(1993年)北海道南西沖地震を対象とする。この地震は日本海の奥尻島北方沖で発生したモーメントマグニチュード(MW)7.7の地震である。余震は、北側は北東–南西、南側は北西–南東と湾曲した分布をしている。また、P波初動に基づいた震源メカニズム解とCMT解の差異が報告されており、断層破壊の複雑性が示唆される。
PDTI法を用いた震源過程解析には28観測点で観測された遠地実体波P波形の鉛直成分を用いた。解析に用いるモデル面は、クラスタリングを適用する際の外れ値の影響を低減するために、実際の断層面との差異に起因するグリーン関数の誤差を少なくする必要がある。そのため、余震分布を参考に非矩形のモデル面を構築した。クラスタリングの適用にあたっては、各要素震源におけるメカニズム解の節面に垂直なnベクトルとすべり方向のνベクトルを入力データとした。クラスターの結合にはウォード法を使用し、データ間のばらつきが最小になるようにクラスタリングを行った。データ間の類似度の指標として、データ間のなす角度を類似度の指標とするコサイン類似度を用いた。形成された階層クラスターから最適なクラスター数を決定するためシルエット法を用い、各クラスターの凝集度と乖離度から分割の適切さを参照して最適なクラスター数を決定した。
PDTI法によって推定された平成5年北海道南西沖地震の震源過程モデルに階層クラスタリングを適用した結果、60秒の震源時間に5つのクラスターが分類された。破壊開始後 (Origin time; OT) 0–10秒では、震央から北東10 kmの領域に、平均走向164°の1つ目の逆断層型クラスターが形成された。OT+10–27秒には、震央から北30 kmの領域に平均走向190°の2つ目の逆断層型クラスターが発生する。このクラスターはOT+16–19秒にかけて一時的に走向が200°に回転しながら南北約60 kmに分布し、その後震央から北25 kmの領域に分布が集中した。OT+15–20秒には、2つ目のクラスターと同時期に震央から東20 kmの領域で、平均走向195°を持つ別の3つ目の逆断層型クラスターが発生した。OT+31–46秒では、震央から南60 kmの奥尻島西沖で平均走向181°の逆断層型の4つ目のクラスターが形成された。さらにOT+39–46秒には、正断層型と逆断層型の混ざった5つ目のクラスターが発生した。
本発表では、分類された個々のクラスターが持つ破壊挙動と、クラスター間での破壊の連動について議論するとともに、断層形状のパラメータと周辺の海底地形との対応について議論する。