講演情報
[P13-01]震源分布のモニタリングとトモグラフィ解析を組み合わせた地下流体流動の推定~奥会津地熱地域での涵養注水試験への適用例~
*岡本 京祐1、青栁 直樹1、椋平 祐輔2、浅沼 宏1 (1. 産業技術総合研究所、2. 東北大学)
奥会津地熱地域(福島県柳津町)では,2015年度から2023年度にかけてJOGMECにより,蒸気生産量安定化のために,地熱貯留層への涵養注水試験が行われていた。これに伴い,産総研では,微小地震モニタリングを用いた地下の流動モニタリングを実施した。本研究では,本格的な連続注水が実施される前の2017-2018年の微小地震データ,および連続注水を開始した2022年以降の微小地震データを用いて,地震波走時トモグラフィ,および減衰トモグラフィを実施した。地震波走時・減衰トモグラフィには,それぞれ,Double-Difference Tomography(Zhang and Thurber, 2003)手法とDouble-Difference seismic attenuation tomography(Guo and Thuber, 2021)手法を用いた。その結果,地熱貯留層内では注水に伴って,地震波速度の増減は複雑な空間分布を示すものの,減衰強度に関しては,特に,注水井近傍からメインの貯留層領域に渡って,顕著な低下が一貫して見られることが分かった。Guo and Thurber (2022)らの米国ガイザース地熱地域における考察を参考にすると,上述の減衰強度の低下は,通常は蒸気卓越状態である貯留層の間隙内が,注水により水で飽和した可能性を示唆する。また,この水で飽和したと考えられる領域は,注水試験中に別途行われたトレーサー試験おいても,注水井からの導通があると認められた領域であり,トモグラフィ結果に基づいた推定結果の妥当性が示された。本研究を通じて,主に減衰強度の変化を把握することで,注水に伴う貯留層内の巨視的な水の流れを把握することが可能であることが分かった。更に,微小地震分布やVp/Vsなどの他の情報と合わせることで,微細な流体経路や間隙水の相状態など,より詳細な貯留層挙動を把握し得ることも示唆された。 本研究は,JOGMEC「地熱貯留層評価・管理技術」研究の一環として実施された。また,地熱技術開発株式会社,奥会津地熱株式会社には,微小地震観測網の整備や各種データの取得・提供等に多大なご協力を頂いた。ここに記して感謝の意を表す。
