講演情報
[P13-02]1997 年鹿児島県北西部地震震源域における3 次元比抵抗構造と本震破壊との関係
*松永 佳大1,7、相澤 広記2、浅森 浩一3、小川 大輝4、宇津木 充5、吉村 令慧6、山崎 健一6、内田 和也2、松島 健2、井上 智裕8、米盛 航平7、重松 弘道7 (1. 気象庁、2. 九州大学・大学院理学研究院・附属地震火山観測研究センター、3. 日本原子力研究開発機構・東濃地科学センター、4. 日鉄鉱業株式会社、5. 京都大学大学院理学研究科・附属地球熱学研究施設火山研究センター、6. 京都大学防災研究所、7. 九州大学大学院 理学府 地球惑星科学専攻、8. 産業技術総合研究所)
1997年鹿児島県北西部地震では、3月26日と5月1日にM6.3、M6.2の地震が発生し、F字型の余震域を形成した。本震のすべり分布がK-net強震動観測点データを用いて推定された (Horikawa 2001)。この地域では比抵抗構造が既に推定されているが (Umeda et al. 2014)、地震の破壊と比抵抗構造の関係を詳細に議論するためにはMagnetotelluric (MT) 観測点数が少なく、空間解像度が十分ではなかった。本研究では、Umeda et al.よりはるかに高解像度の比抵抗構造を推定し、地震の破壊と比抵抗構造の関係を詳細に議論する。本内容はTectonophysics誌で掲載予定である (Matsunaga et al. tectonophysics in press)。
本研究では、2024年4~5月に震源域で広帯域MT調査を行い、計22点の観測点で新たな観測データを取得した。また、過去に九州大学により取得した未発表MT観測データも用いた。Umeda et al.の42点に対し、本研究では計86点の観測点の地磁気・地電位データを比抵抗構造推定に用いた。
解析では、リモートリファレンス法により、人工ノイズの影響を取り除き比抵抗構造インバージョン入力に用いるMT応答関数を推定した。これによりほとんどの点で周期1000秒まで良質なMT応答関数が得られた。また、インバージョン計算への入力データ数をUmeda et al.の168個から、1100個へ増やし、さらにUmeda et al.では考慮されなかった海洋の影響を考慮したインバージョンを行った。インバージョン計算はFEMTIC (Usui 2015, Usui et al. 2017)を用いた。
インバージョン計算の結果、本震震源付近に低比抵抗帯C1、C2とそれらに挟まれた高比抵抗帯R1が推定された。3月の本震のすべり分布 (Horikawa, 2001)と比抵抗構造を比べると、3月の本震はC1の西縁で始まり、C2の東縁で破壊が止まったことが分かった。
C1、C2浅部は軟物質で構成されていると解釈した。C1、C2内部は深さ2~6 kmで地震が少ない一方、6~12kmで地震が多発しているため、低比抵抗帯の深さ2~6 kmは、BT境界を超える高温とは考えにくく、スメクタイト等の導電性粘土鉱物に富む軟物質である可能性がある。実際に北薩トンネルの工事時にはC2付近の地表から深さ300mまでの鉛直掘削で多量のスメクタイトが見出されている (Ooyama et al. 2017)。また、破壊開始点とC1深部との空間的対応からは、この地域では第四紀の火山活動を起こしたマグマ流体が深さ30km以深から上昇し、それが深さ10 km付近での鹿児島県北西部地震の破壊開始に寄与したと考えた。浅部では浸透率の低い粘土を避けるようにして流体の通路 (=C1、C2の縁)が形成され、この地域に温泉や湧水をもたらしていると解釈した。実際、C2の縁では北薩トンネル工事時に大量の湧水が確認されており、またこの湧水により2024年7月にはトンネルが崩落し通行止めとなっている。このことは少なくとも浅部においてC2の縁が浸透性の高いことを示している。このC2の縁に存在すると考えられる流体や、スメクタイトを含む領域が地震の破壊停止に寄与した可能性がある。今回の比抵抗構造と地震破壊との関係は2016年熊本地震による関係 (Aizawa et al. 2021) のものと良く似ており、比抵抗構造推定が内陸地震の空間ポテンシャル評価に有用なことを支持する。
References
Aizawa, K., Takakura, S., Asaue, H. et al. Electrical conductive fluid-rich zones and their influence on the earthquake initiation, growth, and arrest processes: observations from the 2016 Kumamoto earthquake sequence, Kyushu Island, Japan. Earth Planets Space 73, 12 (2021).
Horikawa, H., 2001. Earthquake doublet in Kagoshima, Japan: rupture of asperities in a stress shadow. Bull. Seismol. Soc. Am. 91, 112–127.
Hyndman, R.D., Shearer, P.M., 1989. Water in the lower continental crust: modelling magnetotelluric and seismic reflection results. Geophys. J. Int. 98, 343–365.
Umeda, K., Asamori, K., Makuuchi, A., & Kobori, K. (2014). Earthquakedoublet in an active shear zone, southwest Japan: Constraints fromgeophysical and geochemical findings. Tectonophysics, 634, 116–126.
Ooyama, Y., Kisanuki, J., Miyamoto, Y., Usumoto, N., Shimada, N., Irisa, J., Shimada, K.. 2017. Arsenic Host Minerals in the Shibi-san Granitic Pluton, Kagoshima, and Their Oxidative Dissolution (in Japanese). Journal of the Japan Society of Engineering Geology, Vol.58, No.4, pp.264-278.
Matsunaga, K., Aizawa, K., Asamori, K., Ogawa, H., Utsugi, M., Yoshimura, R., Yamazaki, K., Uchida, K., Matsushima, T., Inoue, T., Yonemori, K., Shigematsu, H., Tectonophysics in press.
Usui, Y., 2015. 3-D inversion of magnetotelluric data using unstructured tetrahedral elements: applicability to data affected by topography, Geophysical Journal International, Volume 202, Issue 2, August 2015, Pages 828–849.
Usui, Y., Ogawa, Y., Aizawa, K., Kanda, W., Hashimoto, T., Koyama, T., Yamaya, Y., Kagiyama, T., 2017. Three- dimensional resistivity structure of Asama Volcano revealed by data-space magnetotelluric inversion using unstructured tetrahedral elements, Geophysical Journal International, Volume 208, Issue 3, March 2017, Pages 1359–1372.
本研究では、2024年4~5月に震源域で広帯域MT調査を行い、計22点の観測点で新たな観測データを取得した。また、過去に九州大学により取得した未発表MT観測データも用いた。Umeda et al.の42点に対し、本研究では計86点の観測点の地磁気・地電位データを比抵抗構造推定に用いた。
解析では、リモートリファレンス法により、人工ノイズの影響を取り除き比抵抗構造インバージョン入力に用いるMT応答関数を推定した。これによりほとんどの点で周期1000秒まで良質なMT応答関数が得られた。また、インバージョン計算への入力データ数をUmeda et al.の168個から、1100個へ増やし、さらにUmeda et al.では考慮されなかった海洋の影響を考慮したインバージョンを行った。インバージョン計算はFEMTIC (Usui 2015, Usui et al. 2017)を用いた。
インバージョン計算の結果、本震震源付近に低比抵抗帯C1、C2とそれらに挟まれた高比抵抗帯R1が推定された。3月の本震のすべり分布 (Horikawa, 2001)と比抵抗構造を比べると、3月の本震はC1の西縁で始まり、C2の東縁で破壊が止まったことが分かった。
C1、C2浅部は軟物質で構成されていると解釈した。C1、C2内部は深さ2~6 kmで地震が少ない一方、6~12kmで地震が多発しているため、低比抵抗帯の深さ2~6 kmは、BT境界を超える高温とは考えにくく、スメクタイト等の導電性粘土鉱物に富む軟物質である可能性がある。実際に北薩トンネルの工事時にはC2付近の地表から深さ300mまでの鉛直掘削で多量のスメクタイトが見出されている (Ooyama et al. 2017)。また、破壊開始点とC1深部との空間的対応からは、この地域では第四紀の火山活動を起こしたマグマ流体が深さ30km以深から上昇し、それが深さ10 km付近での鹿児島県北西部地震の破壊開始に寄与したと考えた。浅部では浸透率の低い粘土を避けるようにして流体の通路 (=C1、C2の縁)が形成され、この地域に温泉や湧水をもたらしていると解釈した。実際、C2の縁では北薩トンネル工事時に大量の湧水が確認されており、またこの湧水により2024年7月にはトンネルが崩落し通行止めとなっている。このことは少なくとも浅部においてC2の縁が浸透性の高いことを示している。このC2の縁に存在すると考えられる流体や、スメクタイトを含む領域が地震の破壊停止に寄与した可能性がある。今回の比抵抗構造と地震破壊との関係は2016年熊本地震による関係 (Aizawa et al. 2021) のものと良く似ており、比抵抗構造推定が内陸地震の空間ポテンシャル評価に有用なことを支持する。
References
Aizawa, K., Takakura, S., Asaue, H. et al. Electrical conductive fluid-rich zones and their influence on the earthquake initiation, growth, and arrest processes: observations from the 2016 Kumamoto earthquake sequence, Kyushu Island, Japan. Earth Planets Space 73, 12 (2021).
Horikawa, H., 2001. Earthquake doublet in Kagoshima, Japan: rupture of asperities in a stress shadow. Bull. Seismol. Soc. Am. 91, 112–127.
Hyndman, R.D., Shearer, P.M., 1989. Water in the lower continental crust: modelling magnetotelluric and seismic reflection results. Geophys. J. Int. 98, 343–365.
Umeda, K., Asamori, K., Makuuchi, A., & Kobori, K. (2014). Earthquakedoublet in an active shear zone, southwest Japan: Constraints fromgeophysical and geochemical findings. Tectonophysics, 634, 116–126.
Ooyama, Y., Kisanuki, J., Miyamoto, Y., Usumoto, N., Shimada, N., Irisa, J., Shimada, K.. 2017. Arsenic Host Minerals in the Shibi-san Granitic Pluton, Kagoshima, and Their Oxidative Dissolution (in Japanese). Journal of the Japan Society of Engineering Geology, Vol.58, No.4, pp.264-278.
Matsunaga, K., Aizawa, K., Asamori, K., Ogawa, H., Utsugi, M., Yoshimura, R., Yamazaki, K., Uchida, K., Matsushima, T., Inoue, T., Yonemori, K., Shigematsu, H., Tectonophysics in press.
Usui, Y., 2015. 3-D inversion of magnetotelluric data using unstructured tetrahedral elements: applicability to data affected by topography, Geophysical Journal International, Volume 202, Issue 2, August 2015, Pages 828–849.
Usui, Y., Ogawa, Y., Aizawa, K., Kanda, W., Hashimoto, T., Koyama, T., Yamaya, Y., Kagiyama, T., 2017. Three- dimensional resistivity structure of Asama Volcano revealed by data-space magnetotelluric inversion using unstructured tetrahedral elements, Geophysical Journal International, Volume 208, Issue 3, March 2017, Pages 1359–1372.

