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[P15-01]source-controlled fmaxの存在可能性について

*小林 剣大1 (1. 東京科学大学)
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地震動の震源スペクトルは大局的にはomega-squareモデル (Aki, 1967; Brune, 1970, 1971) に従うと考えられており,この場合加速度震源スペクトルは高周波数側では平坦特性になる.しかし,観測される地震動の加速度フーリエスペクトルは高周波数側でカットオフ周波数fmaxを超えると平坦特性から減衰特性に遷移することがHanks (1982) によって指摘されている.この高周波数側でのスペクトルの減衰 (High-Frequency Spectral Decay; HFSD) の成因については,震源の効果とするsource-controlled fmaxの考え方と,地表付近の効果とするsite-controlled fmaxやkappaモデルの考え方が提唱されているが,現在に至るまで議論の決着はついていない.強震動予測の精度向上のためにはHFSDのメカニズムを解明することは重要である.
震源スペクトルがomega-squareモデルやそれに準ずるDouble-Corner-Frequency (DCF) モデルに従うならば,震源スペクトルのコーナー周波数は低周波数側に高々2個存在するだけなので,HFSDの成因として震源の効果が直接的に介入しているとは考えにくい.言い換えれば,震源スペクトルに高周波数側で3つ目のコーナー周波数fc3が存在するならば,それがsource-controlled fmaxである可能性がある.
ところで,有限断層からの理論震源スペクトルには,断層長さ,断層幅,すべり速度関数のそれぞれに関連するコーナー周波数fcL, fcW, fcrが存在し,これら3つのコーナー周波数のうち最も高周波数側に存在するのはfcrである.したがって,観測記録のfmaxがfcrとして説明できるならば,source-controlled fmaxの存在を裏付ける有力な根拠の一つになると考えられる.
本研究では,既往研究 (e.g., Wen and Chen, 2012; Iwakiri and Hoshiba, 2012; Gusev and Guseva, 2016; Tsurugi et al., 2020) によって指摘されているfmaxの系統的傾向が,すべり速度関数の影響として説明可能かを検討した.その結果,すべり速度関数の形状に関する動力学的知見 (e.g., Day, 1982; 中村・宮武, 2000; Kaneko and Goto, 2022; Petukhin et al., 2025) を用いることで当該傾向を合理的に説明できることが明らかとなった.
本研究の主たる結論は,HFSDにはsource-controlled fmaxの寄与があり,その正体はすべり速度関数に関連するコーナー周波数fcrであるという点にある.この結果は,震源スペクトルの理解に対しても重要な示唆を与える.一般に,有限断層からの理論震源スペクトルには3つのコーナー周波数が存在するものの,破壊過程の不均質性などの影響によりfcrは十分高周波数側にシフトし,事実上存在しないものとみなされ,これにより震源スペクトルはDCFモデルに従っていると考えられている.しかし,本研究での考察が正しければ,fcrは工学的に重要な周波数帯域に現れるものであり,震源スペクトルはTriple-Corner-Frequency (TCF) モデルで表現されるべきだと考えられる.

謝辞: 東京科学大学の盛川仁教授には,本稿の執筆に際して適切な助言をいただきました.ここに記して謝意を表します.