講演情報

[P15-02]日向灘で発生した地震の応力降下量の地震規模と震源深さ依存性の検討

*倉橋 奨1、宮腰 研1、入倉 孝次郎1 (1. 愛知工業大学)
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2024年8月8日に日向灘を震源とするMw7.0のプレート間地震が発生し,宮崎県日南市で最大震度6弱を観測した.この地震では,南海トラフ巨大地震の震源域内で発生し,地震規模がMw7.0以上であったことから,初めて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発出された.日向灘周辺では,たびたびM6-7クラスの地震が発生しており比較的地震活動が活発な領域である.近年,応力降下量や破壊伝播速度,断層面積などの震源特性のばらつきや,地震規模や震源深さとの関係性について議論されている.狭い領域内でM6-7クラスの地震が発生している日向灘は,これらの検討が可能な領域である.そこで,本研究では,日向灘域のM4クラスの地震およびM6-7クラスの地震を対象に,観測震源スペクトルからコーナー周波数を求め,それに基づいて応力降下量を算出する.対象地震は,2024年8月8日Mw7.0の地震周辺で発生したM4クラスの20地震およびM6-7クラスの5地震の計25地震とした.対象地震の震源深さは,24.5~45kmである.解析には,F-netによるCMT解およびK-NETとKiK-netおよびF-netの観測記録を用いた. 対象の25地震に対して,各地震の観測震源スペクトルと理論震源スペクトルのω-2モデルとのフィッティングからコーナー周波数を算出し,円形クラックモデル(Brune, 1970)を仮定して応力降下量を算出した.対象周波数は,M4クラスの地震は0.5~10Hz,M6-7クラスの地震は0.05~10Hzとした.観測震源スペクトルは,S波着信2秒前から約100秒間における観測フーリエスペクトルから,伝播経路特性と地盤増幅特性を除して算出した.伝播経路特性におけるQ値は佐藤(2025)による値を,地盤増幅特性は全国一次地下構造モデル(Koketsu et al., 2012)における観測点直下の1次元地盤構造モデルから,重複反射理論により算出した.対象観測点は,F-net3地点とK-NETとKiK-netの地中観測点5地点程度を利用した.なお,観測記録の有無により各地震で用いた観測点数は異なる.算出されたコーナー周波数から推定された応力降下量は,M4クラスの地震は0.7~5MPaで平均値は1.8MPa,M6-7クラスの地震は2~10MPaで平均値は4.6MPaとなった.M4クラスの地震とM6-7クラスの地震の応力降下量では,M6-7クラスの地震の方が大きく,ゆるやかな地震規模依存の傾向が見られた.震源深さと応力降下量の関係を比較すると,明瞭ではないが,震源深さが深くなるほど応力降下量が大きくなる傾向が見られた.なお,M6-7クラスのうち,2024年8月8日のMw7.0 の地震を除く4つの地震について,経験的グリーン関数法によるSMGA震源モデルに基づいて応力降下量の推定も行った.各地震ともSMGAは1つで,観測波形を概ね再現することが可能であった.構築されたSMGAの応力降下量は約7~15MPaで平均値は10MPaとなり,観測震源スペクトルから算出した応力降下量の平均値よりも約2倍大きい値となった.これは,観測震源スペクトルから算出した応力降下量は破壊領域全体の平均応力降下量(例えば,Somei et al., 2014)であるのに対し,SMGAの応力降下量は強震動を生成する領域の応力降下量による違いと考えられる.今後も引き続き,応力降下量のデータの蓄積を進めるとともに,応力降下量の地域性(例えばフィリピン海プレートと太平洋プレート)の違いも検討する予定である.