講演情報
[P15-04]既知の断層モデルと比較的単純な波形インバージョン設定を用いた場合の令和6年能登半島地震の震源過程
*柴田 律也1、久保 久彦1、鈴木 亘1 (1. 国立研究開発法人防災科学技術研究所)
2024年1月1日16 時10分頃に発生した令和6年能登半島地震は、気象庁マグニチュードが7.6、F-netのモーメントテンソル解 (MT解, Fukuyama et al., 1998)によるモーメントマグニチュードが7.5と、日本の内陸地殻内地震としては1995年兵庫県南部地震以降最大規模の地震であった。F-netのMT解と余震分布により北東―南西に走向をもつ逆断層型の地震であることがわかる。この地震においては、地震波形や測地データを用いた数多くの震源過程が報告されている (Enomoto et al., 2025; Guo et al., 2024; Kobayashi et al., 2025; Ma et al., 2024; Okuwaki et al., 2024; Xu et al., 2024)。このような大規模な地震の震源過程を迅速に理解することは、その後の余震活動の予測において有用である。そのためには、できるだけ単純なインバージョン設定においてもっともらしい解が得られると望ましい。本研究では、既知の断層モデルをベースにできるだけ単純な設定でインバージョンを行い、観測に整合する震源過程を推定することを目的として、令和6年能登半島地震の震源過程を推定することとした。
本研究では、近地強震波形による波形インバージョン解析によって能登半島地震の震源過程を推定する。ここでは気象庁が16時10分10秒頃に発生したとする、MJMA 5.9の地震から本震までを連続的な断層破壊であったとみなす。解析では24観測点の強震波形記録 (K-NET 8観測点・KiK-net 12観測点・F-net 3観測点・気象庁 1観測点)を用いた。それぞれ、加速度波形を積分し、0.03–0.3 Hzのバンドパスフィルタをかけたのち、5 Hzにリサンプリングしている。インバージョンに用いるタイムウィンドウはS波到達の1秒前から80秒間とした。ただし、佐渡島における観測波形は後半部分に振幅の大きい低周波の後続波が含まれており、このような海域の三次元的な速度構造の影響を避けるため、本解析では前半の40秒のみを解析に用いた。断層面としては、日本海地震・津波調査プロジェクトによる断層モデルをベースに、6枚の断層面を設定した。陸側では傾斜を60度、海側では傾斜を50度としている。破壊開始点はMJMA 5.9の地震の気象庁震源を参考に、北緯37.5091度、東経137.2373度、深さ12.3 kmとしている。
波形インバージョンではSekiguchi et al. (2000)によるマルチタイムウィンドウ法 (Olson and Apsel, 1982; Hartzell and Heaton, 1983)を適用した。この手法は、震源過程を時空間的に離散化することで、観測波形と速度構造に基づき理論的に計算されたグリーン関数から、線形の最小二乗問題の枠組みで震源過程を推定することができる。空間的には断層面を走向・傾斜ともに4 km四方の小断層に分割し、走向方向に29個、傾斜方向に4個の小断層を配列した。各小断層における震源時間関数は、1.6秒幅のスムーズドランプ関数を陸側で24個、海側で20個、0.8秒間隔で並べることにより表現する。各小断層における破壊開始時刻は、仮想の破壊フロントが2 km/sで伝播した場合の、フロントの到達時刻とした。これらのパラメタは、Tarumi and Yoshioka (2025)においてバックプロジェクション法によって推定された震源継続時間 (約45秒)に整合するように設定された。グリーン関数は、藤原・他 (2009)による三次元速度構造を、観測点ごとにその直下の構造を抜き出した一次元速度構造に基づいて、波数積分法 (Bouchon, 1981)と反射・透過係数行列法 (Kennett and Kerry, 1979)によって計算している。KiK-net観測点については速度検層の情報も含めている。各小断層における破壊伝播の効果を含めるために、走向・傾斜ともに5個ずつの点震源を各小断層において配置し、等しい地震モーメントのもとに積算し、各小断層のグリーン関数としている。インバージョンでは、Lawson and Hanson (1974)による非負の拘束を適用した最小二乗問題を解いた。これにより、すべり角はF-net MT解の99度を中心に90度の範囲に制約される。また、Sekiguchi et al. (2000)による時空間のスムージングも適用している。
波形インバージョンの結果、輪島市付近の浅部で最大8.8 m、震源から北東に40 kmの日本海直下の浅部で最大7.9 mのすべりが推定され、モーメントマグニチュードは7.6であった。全体の震源継続時間がおよそ50秒であったのに対し、初めの11秒程度のモーメントレートは15%程度に留まり、これは気象庁が前震とした地震の断層破壊に相当すると考えられる。このような序盤の小モーメントレートの特徴は先行研究と整合的である (Enomoto et al., 2025; Kobayashi et al., 2025; Okuwaki et al., 2024)。断層破壊伝播に着目すると、初めの11秒間は震源付近に破壊がとどまり、破壊開始後27.5秒頃までは南西 (輪島市方面)に向かって大きなすべりを持つ破壊が伝播した。破壊開始後27.5秒ごろからは北東に向かう断層破壊もみられ、断層端に達するまでおよそ20秒を要した。また、得られたすべり分布からOkada (1985)に基づいて地表における変位をフォワード計算したところ、輪島市付近で3 m程度の隆起、珠洲市付近で2 m程度の隆起と、干渉SAR解析 (Fukushima et al., 2024)による上下変位分布と整合的な分布が得られた。
本研究では、近地強震波形による波形インバージョン解析によって能登半島地震の震源過程を推定する。ここでは気象庁が16時10分10秒頃に発生したとする、MJMA 5.9の地震から本震までを連続的な断層破壊であったとみなす。解析では24観測点の強震波形記録 (K-NET 8観測点・KiK-net 12観測点・F-net 3観測点・気象庁 1観測点)を用いた。それぞれ、加速度波形を積分し、0.03–0.3 Hzのバンドパスフィルタをかけたのち、5 Hzにリサンプリングしている。インバージョンに用いるタイムウィンドウはS波到達の1秒前から80秒間とした。ただし、佐渡島における観測波形は後半部分に振幅の大きい低周波の後続波が含まれており、このような海域の三次元的な速度構造の影響を避けるため、本解析では前半の40秒のみを解析に用いた。断層面としては、日本海地震・津波調査プロジェクトによる断層モデルをベースに、6枚の断層面を設定した。陸側では傾斜を60度、海側では傾斜を50度としている。破壊開始点はMJMA 5.9の地震の気象庁震源を参考に、北緯37.5091度、東経137.2373度、深さ12.3 kmとしている。
波形インバージョンではSekiguchi et al. (2000)によるマルチタイムウィンドウ法 (Olson and Apsel, 1982; Hartzell and Heaton, 1983)を適用した。この手法は、震源過程を時空間的に離散化することで、観測波形と速度構造に基づき理論的に計算されたグリーン関数から、線形の最小二乗問題の枠組みで震源過程を推定することができる。空間的には断層面を走向・傾斜ともに4 km四方の小断層に分割し、走向方向に29個、傾斜方向に4個の小断層を配列した。各小断層における震源時間関数は、1.6秒幅のスムーズドランプ関数を陸側で24個、海側で20個、0.8秒間隔で並べることにより表現する。各小断層における破壊開始時刻は、仮想の破壊フロントが2 km/sで伝播した場合の、フロントの到達時刻とした。これらのパラメタは、Tarumi and Yoshioka (2025)においてバックプロジェクション法によって推定された震源継続時間 (約45秒)に整合するように設定された。グリーン関数は、藤原・他 (2009)による三次元速度構造を、観測点ごとにその直下の構造を抜き出した一次元速度構造に基づいて、波数積分法 (Bouchon, 1981)と反射・透過係数行列法 (Kennett and Kerry, 1979)によって計算している。KiK-net観測点については速度検層の情報も含めている。各小断層における破壊伝播の効果を含めるために、走向・傾斜ともに5個ずつの点震源を各小断層において配置し、等しい地震モーメントのもとに積算し、各小断層のグリーン関数としている。インバージョンでは、Lawson and Hanson (1974)による非負の拘束を適用した最小二乗問題を解いた。これにより、すべり角はF-net MT解の99度を中心に90度の範囲に制約される。また、Sekiguchi et al. (2000)による時空間のスムージングも適用している。
波形インバージョンの結果、輪島市付近の浅部で最大8.8 m、震源から北東に40 kmの日本海直下の浅部で最大7.9 mのすべりが推定され、モーメントマグニチュードは7.6であった。全体の震源継続時間がおよそ50秒であったのに対し、初めの11秒程度のモーメントレートは15%程度に留まり、これは気象庁が前震とした地震の断層破壊に相当すると考えられる。このような序盤の小モーメントレートの特徴は先行研究と整合的である (Enomoto et al., 2025; Kobayashi et al., 2025; Okuwaki et al., 2024)。断層破壊伝播に着目すると、初めの11秒間は震源付近に破壊がとどまり、破壊開始後27.5秒頃までは南西 (輪島市方面)に向かって大きなすべりを持つ破壊が伝播した。破壊開始後27.5秒ごろからは北東に向かう断層破壊もみられ、断層端に達するまでおよそ20秒を要した。また、得られたすべり分布からOkada (1985)に基づいて地表における変位をフォワード計算したところ、輪島市付近で3 m程度の隆起、珠洲市付近で2 m程度の隆起と、干渉SAR解析 (Fukushima et al., 2024)による上下変位分布と整合的な分布が得られた。
