講演情報

[P15-05]2024年能登半島地震を例とした強震動予測手法における断層パラメターの不確定性および多様性の検討

*乘松 君衣1、遠田 晋次1 (1. 東北大学災害科学国際研究所)
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1.はじめに
地震ハザード評価では様々な観測データから設定された断層モデルを用いてシミュレーションと,ハザードの予測が行われる.しかし断層モデルの想定には多くの課題があり,特に過小評価は重要な課題である.2016年熊本地震は想定されていた断層モデルを上回る範囲の断層が破壊した.また,従来の強震動想定では対象とされていなかった地震発生層よりも浅い部分で発生した永久変位を伴うやや長周期の揺れが断層近傍の強い揺れに大きく関係したとされる.2024年能登半島地震は,その震源断層に相当する範囲の断層トレースは公表されていたものの,余震域北端部の断層の傾斜方向は震源近傍の断層とは逆であり,これらの連動破壊は想定されていなかった.
本研究では能登半島地震前に公表されていた情報のみを使用し,能登半島周辺で考え得る断層モデルのパターンを網羅的に設定し,これらのモデルから想定される強震動の大きさの範囲の中で能登半島地震はどの程度予測可能であったかを検証する(retrospective prediction).本研究で使用する断層モデル設定方法は基本的には強震動レシピ(地震調査研究推進本部,2017)のような一般的な手法を踏襲したものであるが,その中に複数パターンのパラメター設定方法や破壊の伝播など不確定性や多様性を考慮したものである.

2.断層モデルの設定と強震動計算 
断層モデルは既往調査およびプロジェクトで取りまとめられた断層情報および一般的なパラメター設定方法を参照し設定する.合計6枚の断層面の組み合わせにより複数パターンの断層の連動を考慮する.また,断層の巨視的パラメターの不確定性として断層傾斜角および断層下端深度に複数パターンのパラメターを設定する.地震発生層より浅い部分でのすべりについても考慮する場合と考慮しない場合を想定し,さらに破壊開始点を置く断層面についても2パターンの検討を行った.すべり角は不確定性の大きいパラメターであるため,逆断層の標準的な設定(90°)に加えて+45°の不確定性を考慮した. 
強震動予測計算は波数積分法により行った.26点の強震観測点とその間を埋めるように設定した35点の計算地点の合計61点で計算を行った.計算波形および観測波形には1秒のローパスフィルタを適用し,建物の損傷に関係しやすいやや長周期の揺れに着目した比較検討を行った. 
能登半島北岸の地点および佐渡では能登半島地震の観測データと同等からやや大きめの結果が得られていたことから事前情報のみでおおむね予測可能であったことが示された.志賀周辺の能登半島西岸においては,観測に対して同等かやや小さく予測される傾向にあった.

3.パラメターの不確定性・多様性が予測強震動に与える影響 
不確定性を考慮し複数パターンの断層連動や断層パラメターを検討した強震動予測結果について,それぞれの不確定性の影響について考察する.想定した不確定性は「断層の連動パターン」,「断層幅(傾斜角・断層下端深度)」,「地震発生層以浅を含む・含まない」,「破壊開始点の位置」,「すべり角」の5つである.この5つの要素について各観測点でそのばらつきの範囲として標準偏差を求め,大きいものから順位づけし,順位ごとに地図上にプロットした(Figure 1). 
多くの地点で最も大きく影響する不確定性は断層の連動パターンである.強震動は計算地点直近のすべりが大きく影響する.次に多くの地点で断層幅の設定が大きく影響している.おそらく断層幅に関係するパラメターの中でも傾斜角が大きく関係していると考えられ,傾斜角を低角に設定したほうが地下のすべりと計算地点の距離が近くなるためであると考えられる. 
これらの不確定性に加えてSMGAの位置の不確定性についても検討した.6枚の断層面に地震発生層内の浅い側の中央,右,左の3通りを設定し,総当たりで組み合わせることで729パターンのモデルを設定し,SMGAの設定位置による影響を検討した. 
能登半島北岸のSMGA直上においては特に門前周辺においてSMGAの設定位置の違いが計算結果に影響している(Figure 2a).能登半島西岸や南岸,佐渡島のようにSMGAから離れた場所ではばらつきの範囲はごく小さいが,能登半島北岸においては予測強震動に大きな幅を生じさせる要素である.能登半島北岸において中間値に対して1.5倍程度のばらつきがある(Figure 2b).

4.まとめ 
能登半島地震を例に,既往の手法に不確定性を考慮した場合にどの程度,能登半島地震の強震動は予測可能であったかを検証した.能登半島北岸および佐渡においては概ね予測可能であったと考えられる. 加えてパラメターの不確定性およびSMGAの位置の不確定性の影響について比較検討を行った.断層面と計算地点の位置関係で影響を受けやすい地点と受けにくい地点の地域性を示した.不確定性の検討は防災上の観点からもより詳細な考察が必要である.

(謝辞)本研究は応用地質(株)により設置された寄付研究講座研究費で実施されました.