講演情報
[P15-07]2024年11月26日石川県西方沖の地震の震源過程
*吉田 邦一1 (1. 福井大学)
2024年11月26日22時47分に能登半島西方沖の沖合約25km付近を震源としてMw6.2の地震が発生した。この地震の震源は、同年1月1日に発生した能登半島地震(Mw7.5)の余震域や2007年能登半島地震の震源の南西に位置し、広義の余震、あるいは誘発地震であると考えられる(図)。
日本海地震・津波プロジェクト(以下、日本海PJ)では日本海側の沿岸の断層モデルを示している。この地震の余震域は、日本海PJのKZ2断層の位置に対応し、余震域の大きさもこの断層モデルの範囲にほぼ対応する。
KZ2断層は2024年能登半島地震Mw7.5によるΔCFFの検討から、地震の発生が促進されていることが示されている(Toda & Stein, 2024)。このような状況で発生した地震の震源の特性を調べるため、震源のすべり分布や破壊過程を求めた。KZ2断層は南北走向で傾斜角60°の西落ちの断層面モデルとなっている。F-netおよび気象庁のモーメントテンソル逆解析ではモーメントはそれぞれ2.52×1018, 2.42×1018 Nmで、メカニズム解の西落ち断層面の傾斜角はそれぞれ34°, 47°であり、KZ2モデルよりも低角である。一元化震源の余震分布はほぼ南北20 kmほどの範囲に分布するが、東西断面に投影すると東西方向に約7 kmの幅で、深さ0~20 km程度の範囲で帯状に震源が分布し、断層面は不明瞭である。これは観測点が震源の東側のみに分布し、震源付近には海底下のため観測点が存在せず、震源決定精度が特に深さ方向に不十分なためと予想される。余震の震源の推定誤差も深さ方向の誤差が数kmあり、内陸の地震に比べかなり大きい。これらを考慮して、解析で用いる断層面は西落ちのものとし、傾斜角は34°と47°の2通りで解析を試み、結果の良好な47°を採用した。破壊開始点の座標には、気象庁一元化震源のN37.009°, E136.398°, 深さ7.5 kmとした。断層面の大きさは水平面の余震域を囲うように走向方向に20 km、傾斜方向に16 kmとした(図)。なお、ここでの断層面の設定に用いた震源決定の深さの不確かさの影響は今後の課題とする。
解析対象データは石川県や富山県のKiK-net観測点の加速度記録とした。これらの加速度記録に0.02-0.5 Hzのバンドパスフィルターを適用して積分し、速度波形とした。記録のうちP波到達時刻から40秒間を解析対象とした。
グリーン関数の計算に用いた地下構造モデルには、J-SHISモデルから各観測点直下の構造モデルを取り出したものを用い、基盤にはAsano & Iwata (2011)のcrust, mantleの構造を接続して用いた。この構造モデルをもとに、離散化波数法(Bouchon, 1981)と反射透過係数行列法(Kennett & Kerry, 1979)を用いて点震源からの波形を計算し、グリーン関数とした。
震源破壊過程の解析にはマルチタイムウィンドウ型波形逆解析法(Hartzell & Heaton, 1983)を用いた。断層面のすべりを空間方向には走向方向2 km×傾斜方向2 kmの小断層に、時間方向には0.9秒間隔に並べた幅1.8秒のスムーズドランプ関数を4つ並べて離散化して表現した。平滑化強さは求められた総モーメントがCMT解の値とできるだけ近づくものとした。第一タイムウィンドウの伝播速度VFTはいくつかの値を試み、すべり量分布に解析誤差の影響が比較的少ないと考えられるものが得られたVFT=1.5 km/sとした。
解析の結果得られたすべり量分布では、最大すべり量が約1.5m,断層面全体のモーメントはCMT解析に合わせた値を採用し2.5×1018 Nm (Mw6.2)であった。図に示すように、主たる破壊は破壊開始点周辺で発生し、その後北側に向けて破壊は伝播していた。また、最大すべり速度は破壊開始点付近で1.2 m/sであった。
今回の解析では、グリーン関数の高精度化のための速度構造モデルの調整や、断層面設定にあたり震源の深さの検討などの課題が震源過程をより詳細に明らかにするためには必要であるが、破壊が主に北側に進行したことなどが明らかになった。
参考文献
Asano & Iwata (2011) BSSA, 101, 2467-2480.
Bouchon (1981) BSSA, 71, 959-971.
Hartzell & Heaton (1983) BSSA, 73, 1553-1583.
Kennett & Kerry (1979) Geophys. J. R. Astr. Soc., 57, 557-583.
Toda & Stein (2024) https://temblor.net/temblor/intense-seismic-swarm-magnitude-7-5-japan-earthquake-15891/
日本海地震・津波プロジェクト(以下、日本海PJ)では日本海側の沿岸の断層モデルを示している。この地震の余震域は、日本海PJのKZ2断層の位置に対応し、余震域の大きさもこの断層モデルの範囲にほぼ対応する。
KZ2断層は2024年能登半島地震Mw7.5によるΔCFFの検討から、地震の発生が促進されていることが示されている(Toda & Stein, 2024)。このような状況で発生した地震の震源の特性を調べるため、震源のすべり分布や破壊過程を求めた。KZ2断層は南北走向で傾斜角60°の西落ちの断層面モデルとなっている。F-netおよび気象庁のモーメントテンソル逆解析ではモーメントはそれぞれ2.52×1018, 2.42×1018 Nmで、メカニズム解の西落ち断層面の傾斜角はそれぞれ34°, 47°であり、KZ2モデルよりも低角である。一元化震源の余震分布はほぼ南北20 kmほどの範囲に分布するが、東西断面に投影すると東西方向に約7 kmの幅で、深さ0~20 km程度の範囲で帯状に震源が分布し、断層面は不明瞭である。これは観測点が震源の東側のみに分布し、震源付近には海底下のため観測点が存在せず、震源決定精度が特に深さ方向に不十分なためと予想される。余震の震源の推定誤差も深さ方向の誤差が数kmあり、内陸の地震に比べかなり大きい。これらを考慮して、解析で用いる断層面は西落ちのものとし、傾斜角は34°と47°の2通りで解析を試み、結果の良好な47°を採用した。破壊開始点の座標には、気象庁一元化震源のN37.009°, E136.398°, 深さ7.5 kmとした。断層面の大きさは水平面の余震域を囲うように走向方向に20 km、傾斜方向に16 kmとした(図)。なお、ここでの断層面の設定に用いた震源決定の深さの不確かさの影響は今後の課題とする。
解析対象データは石川県や富山県のKiK-net観測点の加速度記録とした。これらの加速度記録に0.02-0.5 Hzのバンドパスフィルターを適用して積分し、速度波形とした。記録のうちP波到達時刻から40秒間を解析対象とした。
グリーン関数の計算に用いた地下構造モデルには、J-SHISモデルから各観測点直下の構造モデルを取り出したものを用い、基盤にはAsano & Iwata (2011)のcrust, mantleの構造を接続して用いた。この構造モデルをもとに、離散化波数法(Bouchon, 1981)と反射透過係数行列法(Kennett & Kerry, 1979)を用いて点震源からの波形を計算し、グリーン関数とした。
震源破壊過程の解析にはマルチタイムウィンドウ型波形逆解析法(Hartzell & Heaton, 1983)を用いた。断層面のすべりを空間方向には走向方向2 km×傾斜方向2 kmの小断層に、時間方向には0.9秒間隔に並べた幅1.8秒のスムーズドランプ関数を4つ並べて離散化して表現した。平滑化強さは求められた総モーメントがCMT解の値とできるだけ近づくものとした。第一タイムウィンドウの伝播速度VFTはいくつかの値を試み、すべり量分布に解析誤差の影響が比較的少ないと考えられるものが得られたVFT=1.5 km/sとした。
解析の結果得られたすべり量分布では、最大すべり量が約1.5m,断層面全体のモーメントはCMT解析に合わせた値を採用し2.5×1018 Nm (Mw6.2)であった。図に示すように、主たる破壊は破壊開始点周辺で発生し、その後北側に向けて破壊は伝播していた。また、最大すべり速度は破壊開始点付近で1.2 m/sであった。
今回の解析では、グリーン関数の高精度化のための速度構造モデルの調整や、断層面設定にあたり震源の深さの検討などの課題が震源過程をより詳細に明らかにするためには必要であるが、破壊が主に北側に進行したことなどが明らかになった。
参考文献
Asano & Iwata (2011) BSSA, 101, 2467-2480.
Bouchon (1981) BSSA, 71, 959-971.
Hartzell & Heaton (1983) BSSA, 73, 1553-1583.
Kennett & Kerry (1979) Geophys. J. R. Astr. Soc., 57, 557-583.
Toda & Stein (2024) https://temblor.net/temblor/intense-seismic-swarm-magnitude-7-5-japan-earthquake-15891/

