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[P15-11]長周期地震動階級の揺れから揺れ予測の手法の検討

*西宮 隆仁1 (1. 気象庁気象研究所地震津波研究部第三研究室)
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1.はじめに
気象庁は、長周期地震動階級3以上を予測した場合も緊急地震速報(警報)を発表している。緊急地震速報における震度の予測は、震源即時推定(IPF法; 溜渕・他, 2014)とマグニチュードに基づき地震動予測式を用いて行う予測と、揺れから揺れの予測(PLUM法; Kodera et al., 2018)のハイブリッドで行うが、長周期地震動階級の予測は前者の地震動予測式(Dhakal et al., 2015)のみである。PLUM法の導入前は過小予測も見られた特に大きな震度に対してPLUM法は過小予測を減らすことができており(例えば Kodera et al., 2021)、長周期地震動階級予測でもPLUM法的な予測手法の開発を目指している。

2.基本的考え方
長周期地震動階級は基本的に、減衰定数を5%とした絶対速度応答スペクトルを用い、周期1.6秒から周期7.8秒まで0.2秒ごとのスペクトルの最大値から決定する(気象庁 長周期地震動に関する情報検討会 平成 24 年度報告書)。絶対速度応答は地動加速度に対して長周期側で増幅・発散する振幅特性を有し、このため周期20秒以上をカットするフィルタを適用している(気象庁 第7回 長周期地震動に関する情報検討会 資料2)。つまり、当該スペクトル値は周期20秒程度の帯域まで広く影響を受けかねない。
大きな階級の長周期地震動が表面波によってもたらされると考えると、地下構造等の影響を受けて周期帯が異なれば伝播速度も異なることが想定され、当該スペクトル値そのものに対してPLUM法のような伝播を前提とする予測手法を適用すべきではないと考えた。そこで、
(1) 狭帯域フィルタ群を用意し、フィルタ群を適用した波形データから長周期地震動階級のもととなるスペクトル値の近似値がえられないか。狭帯域フィルタを適用した各波群であれば伝播を前提とした予測手法が適用できそうであり、それをもとに予測近似値が得られないか。
(2) 実際の地震観測点分布は狭帯域フィルタ適用後の波群の波長に比べて疎であり観測から伝播を追えるのか。
について検討を進めている。

3.今回の発表
(1) 前項(1)について
複数の狭帯域フィルタ群を適用した波群時系列をもとに、絶対速度応答時系列における極大値を近似する方法を検討した。
フィルタはリカーシブフィルタとし、6次相当のベッセルフィルタで構成した(例えば勝間田, 1993)。ベッセルフィルタは減衰特性がゆるやかなため狭帯域フィルタに向かないことは承知しているが、遅延特性の変化も緩やかであり、それを期待した。
絶対速度応答の近似のための狭帯域フィルタのゲインの値については、周期1秒から20秒までの間に130点ほどの評価点を設け、評価点において各狭帯域フィルタ群の振幅特性の和と対象周期の地動速度に対する絶対速度応答の振幅特性との残差が小さくなるように求めることとし、非負最小二乗法を用いて決定した。
観測記録をもとに、水平2成分から算出した絶対速度応答の極大値と、近似手法による極大値の時系列の例を図1に示す。ピークが急峻な絶対速度応答に対して減衰特性がゆるやかなフィルタを用い、かつ位相を気にせず処理をした割には一定の水準で極大値の近似値が得られそうであり、他の例も含め整理した結果を発表する。

(2) 前項(2)について
寺島・福和(2019)で議論された新潟県中越の地震の関東平野での地震動をOpenSWPC(Maeda et al., 2017)を用いてシミュレートし、それに狭帯域のフィルタを適用して波形を得て伝播が追えるか検討を行っている。
K-NET観測点をいくつか選び、観測点付近では3km弱の間隔で波形をシミュレートした。そして範囲12km以内の地点の狭帯域フィルタを適用した波形でもってセンブランス解析を行い、グリッドサーチで最大値をもたらす伝播速度と方向を得て、それを当該観測点付近の狭帯域地震動の伝播とみなした。
次に疎な観測点分布を模して30km弱間隔の地点のみの波形を用いてセンブランス解析を行った。波長に対して間隔が空き過ぎているため、そのまま解析し最大値を得ても適切な値が得られないのは明らかであることから、波形をもとにエンベロープの時系列も用意し、範囲60km以内の地点の波形のセンブランスとエンベロープのセンブランスの積の最大値をもたらす伝播速度と方向を得ることとした。これを、狭帯域ごとに地震動伝播とみなした結果に対して比較を行っているところであり、整理して発表する。
なお、シミュレーションでは地下構造にJIVSM(Koketsu et al., 2012)を用い、計算条件に基づく最小伝播速度を0.4km/sとした。計算地点におけるサイト特性の考慮は行っていない。

謝辞:防災科研のK-NET観測波形データを使用しました。