講演情報
[P15-19]不均質媒質が単独観測点処理による震央方位推定精度に与える影響
*松嶋 亮弥1、野田 俊太1、是永 将宏1 (1. (公財)鉄道総合技術研究所)
地震時における新幹線の安全性向上のためには,より早期に地震を検知し,その破壊開始点の位置とマグニチュードを推定し,警報を発出することが重要である.新幹線では早期性の観点から,単独観測点の情報のみを使用し警報出力を行っている(単独観測点処理)(e.g., Yamamoto and Tomori, 2013).単独観測点処理では,震央距離と震央方位をそれぞれ独立して決定論的に推定することにより震央位置を推定する(e.g., 岩田他, 2016).震央位置推定精度はそれぞれの手法の精度に依存するため,警報精度向上のためには震央方位と震央距離の推定精度をともに向上させることが必要である.
震央方位の推定精度は様々な手法,観測点で評価されている(e.g., Lockman and Allen, 2005; Noda et al., 2012).例えばNoda et al. (2012)は,P波到達後1/2波長の変位波形に主成分分析を適用し震央方位を推定する手法を提案し,その誤差RMSを49.0°と評価した.震央方位推定誤差の原因としては,ノイズの影響(e.g., Jurkevics, 1988)やP波検測誤差の影響,後続波や変換波の影響が考えられる .また,単独観測点処理における震央方位推定手法は,厳密にはP波初動の到来方位を推定している.これは,P波到来方位と震央方位が一致するとの仮定に基づくものであるが,媒質中の地震波速度に不均質が存在する場合はこの仮定が成立せず,誤差の原因となる.
実際,地殻には地震波速度の不均質が存在することが指摘されており,不均質性を考慮する場合は確率論的な議論が必要である(Sato et al., 2012).そのため,地震波速度の不均質性は,新幹線の単独観測点処理で使用される決定論的な震央方位推定手法の本質的な限界を規定する要因の一つになると考えられる.
しかしながら,単独観測点処置における震央方位推定精度について,不均質性の影響を評価した研究は見当たらない.そこで本研究では,不均質媒質中のP波の伝播を3次元有限差分法(FDM)で計算し,地震波速度の不均質性がP波の到来方位に与える影響を調べた.
FDMでは,270km×270km×50kmの大きさの媒質の中に,P波のみを放出する等方爆発震源を設定した.不均質性は,一様均質構造の媒質にvon Kármán型のパワースペクトル密度関数(PSDF; Sato et al., 2012)で表されるランダムなゆらぎを重畳することにより考慮した.FDMの計算にはOpenSWPC(Maeda et al., 2017)を使用し,地表面に仮想的に設置された観測点の変位波形を計算した.得られた波形からP波到達後0.5秒間の波形を抽出し,主成分分析を適用することによりP波到来方位を推定した.
von Kármán型PSDFによるランダムな不均質の特徴的スケールを5km, ゆらぎのRMSを0.05, κを0.5としたところ,震央方位推定誤差RMSは11.7°となった.頻度としては,誤差が10°未満である観測点が最多であるものの,30°以上の誤差が生じる観測点や,180°反転した方位を推定する観測点も見られた(図1).この傾向は,Noda et al. (2012)の手法による震央方位推定誤差の度数分布と調和的である.また,PSDFのパラメータ依存性等も考慮した議論を行い,単独観測点処理における震央方位推定手法の限界についても報告する予定である.
震央方位の推定精度は様々な手法,観測点で評価されている(e.g., Lockman and Allen, 2005; Noda et al., 2012).例えばNoda et al. (2012)は,P波到達後1/2波長の変位波形に主成分分析を適用し震央方位を推定する手法を提案し,その誤差RMSを49.0°と評価した.震央方位推定誤差の原因としては,ノイズの影響(e.g., Jurkevics, 1988)やP波検測誤差の影響,後続波や変換波の影響が考えられる .また,単独観測点処理における震央方位推定手法は,厳密にはP波初動の到来方位を推定している.これは,P波到来方位と震央方位が一致するとの仮定に基づくものであるが,媒質中の地震波速度に不均質が存在する場合はこの仮定が成立せず,誤差の原因となる.
実際,地殻には地震波速度の不均質が存在することが指摘されており,不均質性を考慮する場合は確率論的な議論が必要である(Sato et al., 2012).そのため,地震波速度の不均質性は,新幹線の単独観測点処理で使用される決定論的な震央方位推定手法の本質的な限界を規定する要因の一つになると考えられる.
しかしながら,単独観測点処置における震央方位推定精度について,不均質性の影響を評価した研究は見当たらない.そこで本研究では,不均質媒質中のP波の伝播を3次元有限差分法(FDM)で計算し,地震波速度の不均質性がP波の到来方位に与える影響を調べた.
FDMでは,270km×270km×50kmの大きさの媒質の中に,P波のみを放出する等方爆発震源を設定した.不均質性は,一様均質構造の媒質にvon Kármán型のパワースペクトル密度関数(PSDF; Sato et al., 2012)で表されるランダムなゆらぎを重畳することにより考慮した.FDMの計算にはOpenSWPC(Maeda et al., 2017)を使用し,地表面に仮想的に設置された観測点の変位波形を計算した.得られた波形からP波到達後0.5秒間の波形を抽出し,主成分分析を適用することによりP波到来方位を推定した.
von Kármán型PSDFによるランダムな不均質の特徴的スケールを5km, ゆらぎのRMSを0.05, κを0.5としたところ,震央方位推定誤差RMSは11.7°となった.頻度としては,誤差が10°未満である観測点が最多であるものの,30°以上の誤差が生じる観測点や,180°反転した方位を推定する観測点も見られた(図1).この傾向は,Noda et al. (2012)の手法による震央方位推定誤差の度数分布と調和的である.また,PSDFのパラメータ依存性等も考慮した議論を行い,単独観測点処理における震央方位推定手法の限界についても報告する予定である.

