講演情報
[P15-20]埼玉県南東部における浅部地質と微動H/Vスペクトルのピーク周波数の分布
*長 郁夫1、先名 重樹2、野々垣 進1 (1. 産業技術総合研究所 地質情報研究部門、2. 防災科学技術研究所)
産業技術総合研究所は,インフラ整備や災害リスク評価,地下水環境評価等に資する地質地盤情報の整備を目的として,多数のボーリングデータを用いて都市域の地下数10 mまでの地質地盤構造を3次元でモデル化し,「都市域の地質地盤図」(以下,地質地盤図)として公開している(https://gbank.gsj.jp/urbangeol).我々は,地質地盤図をプラットホームとする情報提供の高度化の観点から,微動のH/Vスペクトルのピーク周波数マップを新たなコンテンツとして追加したいと考えている.そこでここでは近年公開された埼玉県南東部(米岡他,2025;図1左)に着目してピーク周波数マップを作成し同地域における浅部地質とH/Vスペクトルのピーク周波数の分布を比較した.
その結果,ピーク周波数(fp)は荒川低地や中川低地では多くの部分でピーク周波数が1.7 Hzよりも低く,道路橋示方書(日本道路協会編,2017)における第三種地盤すなわち軟弱な地盤であることが示唆された.その一方で,大宮台地では,基本的にそれらよりも周波数が高く,相対的に良い地盤(第一種もしくは第二種地盤)であることが示唆された(図1右).
地質地盤図では沖積層基底の標高をモデル化しているので,沖積層分布域におけるfp と沖積層厚Hとの関係を抽出してグラフにプロットしたところ,4分の1波長則が良く成り立っていることが示された(ただし,fpを地盤の共振周波数f0を見做し沖積層の典型的なS波速度として100〜200 m/sを仮定した場合).
地質地盤図によれば,沖積層は大宮台地を刻む谷(谷底低地)にも分布し,上流域では非常に薄く,下流域では厚くなる.元荒川,綾瀬川,芝川流域において,沖積層厚の変化に依存すると考えられるfpの変化が確認された.
沖積層の非分布域における平均fpは5 Hz程度となり,沖積層分布域における平均値の約2.5倍となることが確認された.台地部では関東ローム層,大宮層,場合によっては下位の木下層上部までを含む相対的な軟弱部が一体として「2層地盤モデル」の上層として振る舞い,この地域の地盤震動を特徴付けていると考えられた.
大宮台地内においては,軟弱な沖積層がほとんど存在しないにも関わらずfpが低い領域があることが明らかとなった.地質地盤図によって示される地質モデルとの比較により,そのような領域は木下層下部が厚く分布していることが示された.木下層下部は軟弱な泥層でS波速度が小さいため,沖積層の有無にかかわらず,低fpを形成する要因となる.実際,木下層下部が厚く分布する領域ではH/Vスペクトルに約1 Hzのピークが出現する傾向がある.
一方,その上位層(木下層上部,大宮層,関東ローム層)は木下層下部の分布によらず4−5 Hzもしくはさらに高周波数帯域にこの台地を特徴付けるピークを形成する傾向がある.その結果,木下層下部の分布域は,浅部地盤による2つのピークが共存する場となっているようである.
以上のとおり,地形,3次元地質地盤,H/Vスペクトルは,それぞれが地盤の良否の判断や地震ハザードの評価において互いに情報を補い合う1セットの基礎データとして理解することができる.ここで得られたピーク周波数マップは拡大縮小や地質分布との詳細な比較ができるように地質地盤図のホームページで公開する予定である.今後は他の地域においても同様にピーク周波数マップを作成しそれぞれ公開していきたいと考えている.
文献米岡佳弥,野々垣進,小松原純子,尾崎正紀,中里裕臣,中澤努,八戸昭一:都市域の地質地盤図「埼玉県南東部」(説明書),産業技術総合研究所地質調査総合センター,74 pp., 2025
日本道路協会編:道路橋示方書・同解説,V耐震設計編, 丸善,302 pp., 2017.
その結果,ピーク周波数(fp)は荒川低地や中川低地では多くの部分でピーク周波数が1.7 Hzよりも低く,道路橋示方書(日本道路協会編,2017)における第三種地盤すなわち軟弱な地盤であることが示唆された.その一方で,大宮台地では,基本的にそれらよりも周波数が高く,相対的に良い地盤(第一種もしくは第二種地盤)であることが示唆された(図1右).
地質地盤図では沖積層基底の標高をモデル化しているので,沖積層分布域におけるfp と沖積層厚Hとの関係を抽出してグラフにプロットしたところ,4分の1波長則が良く成り立っていることが示された(ただし,fpを地盤の共振周波数f0を見做し沖積層の典型的なS波速度として100〜200 m/sを仮定した場合).
地質地盤図によれば,沖積層は大宮台地を刻む谷(谷底低地)にも分布し,上流域では非常に薄く,下流域では厚くなる.元荒川,綾瀬川,芝川流域において,沖積層厚の変化に依存すると考えられるfpの変化が確認された.
沖積層の非分布域における平均fpは5 Hz程度となり,沖積層分布域における平均値の約2.5倍となることが確認された.台地部では関東ローム層,大宮層,場合によっては下位の木下層上部までを含む相対的な軟弱部が一体として「2層地盤モデル」の上層として振る舞い,この地域の地盤震動を特徴付けていると考えられた.
大宮台地内においては,軟弱な沖積層がほとんど存在しないにも関わらずfpが低い領域があることが明らかとなった.地質地盤図によって示される地質モデルとの比較により,そのような領域は木下層下部が厚く分布していることが示された.木下層下部は軟弱な泥層でS波速度が小さいため,沖積層の有無にかかわらず,低fpを形成する要因となる.実際,木下層下部が厚く分布する領域ではH/Vスペクトルに約1 Hzのピークが出現する傾向がある.
一方,その上位層(木下層上部,大宮層,関東ローム層)は木下層下部の分布によらず4−5 Hzもしくはさらに高周波数帯域にこの台地を特徴付けるピークを形成する傾向がある.その結果,木下層下部の分布域は,浅部地盤による2つのピークが共存する場となっているようである.
以上のとおり,地形,3次元地質地盤,H/Vスペクトルは,それぞれが地盤の良否の判断や地震ハザードの評価において互いに情報を補い合う1セットの基礎データとして理解することができる.ここで得られたピーク周波数マップは拡大縮小や地質分布との詳細な比較ができるように地質地盤図のホームページで公開する予定である.今後は他の地域においても同様にピーク周波数マップを作成しそれぞれ公開していきたいと考えている.
文献米岡佳弥,野々垣進,小松原純子,尾崎正紀,中里裕臣,中澤努,八戸昭一:都市域の地質地盤図「埼玉県南東部」(説明書),産業技術総合研究所地質調査総合センター,74 pp., 2025
日本道路協会編:道路橋示方書・同解説,V耐震設計編, 丸善,302 pp., 2017.

