講演情報
[P15-21]解放地震基盤相当面における地震動の推定手法の比較
*田島 礼子1、儘田 豊1 (1. 原子力規制庁)
地盤による増幅特性の影響を大きく受けない解放地震基盤面(Vs 3000 m/s程度)における地震動を精度よく推定することは、地域特性を低減した安定的な地震動レベルを把握する上で重要である。従来研究1)では、KiK-netの地中観測記録(層内波)から、地震基盤に相当する地盤の解放面(解放地震基盤相当面:Vs 2200 m/s以上)における地震動の応答スペクトルを推定するために、図1 (1)に示すように、まず、重複反射理論に基づく地盤応答解析(はぎとり解析)により地中地震計位置での露頭波を算出し(ステップ1)、つぎに、必要に応じて地盤増幅率の経験式2)を用いて応答スペクトルを解放地震基盤相当面に補正していた(ステップ2)。しかし、ステップ1については、はぎとり解析の精度が低い場合に応答スペクトルに顕著なピークが現れる、ステップ2については、一般化された経験式による補正ではサイト固有の特性を詳細に補正することが難しい等の課題があった。そこで、本研究では、解放地震基盤相当面における地震動推定手法の信頼性向上を目的に、以下のとおり、既往研究を参考とした複数の手法による解析・比較を行った。
(1) 地中地震計位置におけるはぎとり解析(従来手法の精度向上)
従来手法におけるステップ1の精度向上を目的に、複数のはぎとり解析手法(手法1~4)を、地震計位置の地盤物性速度が異なるKiK-netの地中観測記録に適用し、従来研究の解析手法(公開情報に基づく線形地盤モデルを用いて鉛直入射を仮定した手法)による結果と比較した。
その結果、観測伝達関数(地表/地中比)に適合するように従来の線形地盤モデルを最適化した手法(手法1)は、観測点によって程度は異なるものの、水平動・上下動ともに多くの記録ではぎとり解析精度が改善し、解析精度が低いことによる顕著なピークが低減する傾向があることが分かった。上下動を対象にSV波の地震基盤面への斜め入射を考慮した手法(手法2)3)は、特に斜め入射の影響が大きいと考えられる観測記録に対しては、手法1よりも解析精度が改善する傾向があった。他方、等価線形化法により地盤の非線形性を考慮した手法(手法3)4)及び浅部地盤物性のゆらぎを考慮した手法(手法4)5)は、今回の解析条件では改善効果は低いことが分かった。
(2) 解放地震基盤相当面における地震動の推定(新たな手法の試行)
上記(1)のはぎとり解析手法では、地盤モデルの設定、入射の仮定等の計算条件の影響を受け、また、地中地震計位置から地震基盤相当面に補正する処理も別途必要となる。そこで、スペクトルインバージョンから求めた経験的サイト増幅率を用いて、地中観測記録から解放地震基盤面での地震動を逆算する新たな手法(手法5:図1 (2))6)を試行し、従来手法による解放地震基盤相当面での応答スペクトル(上記(1)のはぎとり解析結果に地盤補正を施したもの)と比較した。
その結果、地中地震計が地震基盤相当面(硬岩)に位置し地盤補正が不要な観測点では、手法5は従来手法(特に手法1・2)による結果と概ね整合的であった。一方、地中地震計が軟岩に設置されており、地中地震計と地震基盤面の間の深度差が大きな観測点では、特に周期0.2秒程よりも長周期側において、両者の差異が大きく(手法5に基づく結果は小さく)なる傾向があった。これは、従来手法(図1 (1))では、ステップ2において一般化された経験式を用いた補正をしているが、本研究の手法では、観測点ごとに深部地盤による影響も考慮した増幅率を評価したことによる効果が現れたものと考えられる6)。
また、参考として、水平動については、拡散波動場を仮定して地表記録から解放地震基盤相当面での地震動を逆算する手法(手法6:図1 (2))7)を適用したところ、特に非線形地盤の影響が大きな場合には、記録によっては他手法との差異が大きくなる傾向があった。
文献
1) 田島, NRA技術ノート, NTEN-2024-4001, 2024.
2) Noda et al., OECD Workshop, pp. 399-408, 2002.
3) 吉田・宮腰, 日本地震工学会論文集, Vol. 19, No. 4, pp. 52-70, 2019.
4) 佐藤・他, 日本建築学会構造系論文集, Vol. 84, No. 760, pp. 781-791, 2019.
5) Shible et al., Proceedings of 16ECEE, 2018.
6) 田島・他, 日本地震工学会論文集, Vol. 25, No. 7, pp. 38-61, 2025.
7) 長嶋・川瀬, 日本地震工学会論文集, Vol. 22, No. 2, pp. 17-36, 2022.
(1) 地中地震計位置におけるはぎとり解析(従来手法の精度向上)
従来手法におけるステップ1の精度向上を目的に、複数のはぎとり解析手法(手法1~4)を、地震計位置の地盤物性速度が異なるKiK-netの地中観測記録に適用し、従来研究の解析手法(公開情報に基づく線形地盤モデルを用いて鉛直入射を仮定した手法)による結果と比較した。
その結果、観測伝達関数(地表/地中比)に適合するように従来の線形地盤モデルを最適化した手法(手法1)は、観測点によって程度は異なるものの、水平動・上下動ともに多くの記録ではぎとり解析精度が改善し、解析精度が低いことによる顕著なピークが低減する傾向があることが分かった。上下動を対象にSV波の地震基盤面への斜め入射を考慮した手法(手法2)3)は、特に斜め入射の影響が大きいと考えられる観測記録に対しては、手法1よりも解析精度が改善する傾向があった。他方、等価線形化法により地盤の非線形性を考慮した手法(手法3)4)及び浅部地盤物性のゆらぎを考慮した手法(手法4)5)は、今回の解析条件では改善効果は低いことが分かった。
(2) 解放地震基盤相当面における地震動の推定(新たな手法の試行)
上記(1)のはぎとり解析手法では、地盤モデルの設定、入射の仮定等の計算条件の影響を受け、また、地中地震計位置から地震基盤相当面に補正する処理も別途必要となる。そこで、スペクトルインバージョンから求めた経験的サイト増幅率を用いて、地中観測記録から解放地震基盤面での地震動を逆算する新たな手法(手法5:図1 (2))6)を試行し、従来手法による解放地震基盤相当面での応答スペクトル(上記(1)のはぎとり解析結果に地盤補正を施したもの)と比較した。
その結果、地中地震計が地震基盤相当面(硬岩)に位置し地盤補正が不要な観測点では、手法5は従来手法(特に手法1・2)による結果と概ね整合的であった。一方、地中地震計が軟岩に設置されており、地中地震計と地震基盤面の間の深度差が大きな観測点では、特に周期0.2秒程よりも長周期側において、両者の差異が大きく(手法5に基づく結果は小さく)なる傾向があった。これは、従来手法(図1 (1))では、ステップ2において一般化された経験式を用いた補正をしているが、本研究の手法では、観測点ごとに深部地盤による影響も考慮した増幅率を評価したことによる効果が現れたものと考えられる6)。
また、参考として、水平動については、拡散波動場を仮定して地表記録から解放地震基盤相当面での地震動を逆算する手法(手法6:図1 (2))7)を適用したところ、特に非線形地盤の影響が大きな場合には、記録によっては他手法との差異が大きくなる傾向があった。
文献
1) 田島, NRA技術ノート, NTEN-2024-4001, 2024.
2) Noda et al., OECD Workshop, pp. 399-408, 2002.
3) 吉田・宮腰, 日本地震工学会論文集, Vol. 19, No. 4, pp. 52-70, 2019.
4) 佐藤・他, 日本建築学会構造系論文集, Vol. 84, No. 760, pp. 781-791, 2019.
5) Shible et al., Proceedings of 16ECEE, 2018.
6) 田島・他, 日本地震工学会論文集, Vol. 25, No. 7, pp. 38-61, 2025.
7) 長嶋・川瀬, 日本地震工学会論文集, Vol. 22, No. 2, pp. 17-36, 2022.

