講演情報

[P15-22]ボアホール式地震計を用いた地表での計測震度の推定

*田中 哲誠1、麻生 尚文1 (1. 東京理科大学)
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Hi-netに代表されるボアホール式高感度地震計は、低ノイズで高品質な地震波形記録を提供し、地震学の発展に大きく寄与している。微小な揺れをリアルタイムで捉えることができるため、気象庁の緊急地震速報システムにも活用されている。しかし、ボアホール記録は地盤増幅の影響を含まないため、地表での地震動を直接評価できないという課題がある。地盤増幅特性の推定方法として、地質情報から得られるS波平均速度を用いる方法[Matsuoka and Midorikawa, 1994]や、地震発生時のボアホール記録と地表記録の最大速度振幅(PGV)の比を用いる方法[Hayashida and Tajima, 2007]が提案されている。
本研究では、PGVを介さずに、震度に関する地盤増幅特性を直接補正することで、ボアホール記録から地表での計測震度を推定する手法を提案する。補正には、Hi-netが併設されており地表での記録があるKiK-netを用いた。
本手法は、計測震度に関する2段階の線形モデルで構成される。地表記録の3成分を合成して求めた計測震度のほか、地表の成分ごとに算出した震度、地中の成分ごとに算出した震度を計算し、これらの相互関係を定式化する。まず、第1段階で、地表の各成分で計算した震度を地中の各成分で計算した震度で線形回帰する。続く第2段階では、地表3成分の合成で求めた計測震度を地表の各成分で計算した震度で線形回帰する。それぞれの線形回帰の際には各比例係数だけでなくオフセット定数も推定するため、合計で16の未知のパラメータがある。2010年から2019年までのKiK-netイベント波形がある地震について、地中のHi-net連続波形記録と地表のKiK-net波形記録を用いて、モデルパラメータを最小二乗法によって決定した。推定できたのは、KiK-netとHi-netの記録が揃っている日本全国の677地点である。
本手法の有効性を確かめるため、推定した係数を用いて、Hi-netの地中記録から地表の計測震度を求め直したところ、92.09%の地震・観測点ペアにおいてKiK-net地表記録の3成分を合成して求めた計測震度との誤差は±0.5以内に収まった。なお、Hi-net地中記録の3成分を合成してそのまま求めた震度では、全体的に過小評価となっていた。本手法による補正精度は観測点にも依存し、補正後も残差の大きい地点ではマグニチュードに依存した系統的な誤差が現れており、本手法では考慮できていない周波数依存性による影響ではないかと推測される。また、KiK-net地中記録に対して同様なパラメータ推定をして適用したところ、大規模な地震において震央距離が大きくなるほど震度を過大評価する傾向が見られた。

参考文献
Matsuoka, M. and S. Midorikawa (1994), The digital national land information and seismic microzoning, Proceedings of the 22nd Symposium of Earthquake Ground Motion, AIJ, 23–34
Hayashida, T. and F. Tajima (2007), Calibration of amplification factors using KiK-net strong-motion records: toward site effective estimation of seismic intensities. Earth Planet Sp 59, 1111–1125. https://doi.org/10.1186/BF03352054