講演情報

[P16-05]高密度微動アレイ探査による地盤構造の解釈と意義

*先名 重樹1 (1. 国立研究開発法人防災科学技術研究所)
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1.はじめに地震時の被害想定、防災施策の検討のための地震動の事前予測においては、地震基盤から地表までの地盤構造モデル(先名ほか(2024))が使用されている。これらのモデルは、地震時の被害想定、防災施策の検討に有効であるが、250m メッシュで構築されていることが多い。実際の地盤、特に工学的基盤以浅の地盤構造は、このスケールよりも小さい範囲で変化することが多いが、使用できる地盤データの数や密度の限界、被害想定に用いられている被害曲線の不確実性などを考慮すると、現状ではこのメッシュサイズのモデルが有効性と求められる精度のバランスの上で妥当なものといえる。その上で、さらに詳細な地盤モデルの構築のためには、より稠密な実証的地盤データにもとづいた地盤評価が必須である。本研究では、主に関東地域の低地部(利根川等流域等)について、低地や河川を横断する間隔15-100m 間隔の測線上の稠密・多点の微動アレイ観測を実施し、沖積層基底面相当のS波速度構造の不整形とそれに伴う地盤の振動特性の分布についての詳細な検討を行った。2.高密度微動アレイ観測から推定される地盤構造の解釈と意義微動観測で得られるS 波速度構造と周辺の地形・地質情報を総合した検討により、低地の地盤評価に関連する次のような有効な結果が得られた。(1)地形・地質情報の補間・詳細化稠密な微動探査により得られる位相速度の変化、S 波速度構造・AVS の特性と変化から、既往の地形・地質情報や離散的なボーリングの地質情報では詳細な構造の分評価が難しい、地下に伏在する「埋没平坦面」と「埋没谷」が推定できた(図1)。前者の箇所では、沖積層は分布しないかごく薄く、後者の箇所では、沖積層が厚く分布する。既往の微地形区分では、このような低地は、後背湿地、自然堤防、旧河道、三角州・海岸低地、干拓地等に区分されているが、「埋没平坦面」や「埋没谷」を区分できるような情報にはなっていない。地表の地形情報からだけでは、沖積層基底面の2つの領域は区分できない。(2)台地・低地の地盤の形成過程解明に繋がる情報の取得埋没谷と埋没平坦面の存在は、東京低地や中川低地では報告があるが、そのほかの南関東の台地部周辺ないしその中の低地の地下についての報告事例は多くない。既往のボーリングデータ等による予察的検討ではかなり広く分布するようである。このような情報の積み重ねにより、地史的推定をもとに埋没地形面の構造を推定するあらたな認識の枠組みを作ることができる可能性がある。(3)地震動予測の高精度化への貢献厚い沖積層が分布する埋没谷の箇所では、家屋に被害をもたらす周期1秒程度の揺れの増幅が大きく、沖積層の薄い埋没平坦面の箇所では、この周期の地震動の増幅が大きくないと推定される。このような地震時の地盤の振動特性の多様性を評価することは、沖積低地の地震動を的確に予測するという防災上の要請への対応として重要であるが、低地地盤の多様性の実証的な評価はいまだ十分ではない。稠密微動探査によって得られる情報は、このような要請に有効に応えるものである。(4)地盤モデルの認識論的不確実性の評価沖積層基底面の複雑な構造は、堆積層のような水平性を示さないと考えられる。すなわち、ボーリングの情報のみから地下に伏在するこのような面の構造を推定する作業には、かなり大きな認識論的不確実性が伴う。地盤構造モデルの構築のためには、本報告のような稠密な微動観測などにより、離散的な地質情報を補間する作業が必要かつ有効である。また、地盤振動特性の変化は、台地と低地のようなおおまかな区分との対応はみられ、微地形区分毎の統計的な傾向としては表現できる。この意味で微地形区分を用いた従来の地盤モデル構築方法は有効であり、さらに、先名ほか(2024)が示したように、国土地理院の「ベクトルタイル地形分類」データ等の活用により、広域の地震動増幅率や液状化危険度の評価精度が向上する。微動探査の情報を考慮することで、認識論的不確実性を定量的に評価し、より有効なモデルとすることが可能となる。3.まとめ微動観測は、調査・解析手法がマニュアル化されており調査者の技術や判断によらない認識論的不確実性の小さい地盤情報を得ることができる。かつ、場所の制約が小さく、簡単に実施でき、ボーリング調査より安価で効率的な調査手法である。条件を考慮すれば、本報告で述べたような有効な情報が取得できる。また、観測・解析手法が国際標準化(ISO24057:2022)されており、広く地盤に関わる技術者、研究者に使用されることが望まれる。<参考文献>先名重樹・藤原広行・前田宜浩・森川信之・岩城麻子・河合伸一・谷田貝淳・佐藤将・鈴木晴彦・稲垣賢亮・松山尚典(2023): 強震動評価のための浅部・深部統合地盤構造モデルの構築, 防災科学技術研究所研究資料 第498 号.