講演情報
[P16-07]微動H/Vに基づく断層位置推定およびS波反射法地震探査ー福岡県福津市西山断層帯西山区間
*吉見 雅行1、丸山 正1、宮下 由香里1、大上 隆史1、太田 耕輔1 (1. 産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)
西山断層帯は,福岡県宗像値沖ノ島付近から朝倉市にかけて分布する長さ約110 kmにも及ぶ長大な活断層である.このうち中央部の西山区間は宗像市大島の北岸から福津市津屋崎を経て飯塚市西部に至る長さ約43 kmの区間であり,人口密集地のほか新幹線や各種鉄道路線および高速道路を横切る.左横ずれ主体の断層であり,断層沿いの上下方向のずれの向きは一定ではないとされる.過去の活動に関しては,最新活動時期は判明しているものの平均変位速度が不明であり,地震本部では地震発生確率が評価できていない(地震調査研究推進本部地震調査委員会,2013).
西山区間の陸域北端部にあたる福津市勝浦地区では,西東−大井の断層と桂区−奴山の断層の2本の断層トレースが報告されている.このうち,西東−大井の断層は,谷の左屈曲に加えて南西側低下の地形を根拠に,断層トレースが北西ー南東走向の丘陵の南西麓に認定されている(千田ほか,2004).宮下ほか(2013)は,西東‐大井の断層のうち,複数の活断層図がほぼ同一地点に断層トレースを認定している場所で群列ボーリングとトレンチ調査を実施した.基盤岩内に断層が出現したものの,基盤を覆う地層(約5,000年前に堆積)には断層活動の痕跡は確認されず,基盤に顕著な上下変位は確認されなかった.
本研究では,西東ー大井の断層は北東側隆起を伴うとされることから,南西に広がる低地帯に断層が伏在している可能性を考えた.既往断層トレースの南西に広がる福津市勝浦地区の低地帯に着目し,基盤岩上面深度を調査した.
既往断層トレースの主に南西側の幅500m程度の範囲にて,3成分(水平2成分,鉛直1成分)の単点微動観測を観測した.使用機材は,固有周期10秒の3成分速度計(SE-321,東京測振製)およびGPS時刻校正機能付きのデータロガー(LS-8800,白山工業製)である.サンプリング周波数200Hzで1箇所につき15分間以上の観測を実施し,得られたデータを81.92秒間の区間に分割してH/Vスペクトル比を計算し,突発的な振動等のノイズがない区間について平均したものを観測H/Vスペクトル比とした.本地区のH/Vスペクトル比は,概ね単一のピークをもつ形状をしていた.
既往断層トレースに直交する複数の測線にて,H/Vピーク周波数が急変する領域が見出された.断層の北東側ではピーク周波数が2〜5 Hzであるのに対し,南西側では0.6〜1.2 Hz程度であった.このH/Vピーク周波数の急変帯は,概ね北西ー南東走向を有しており,既往断層トレースの100 m程度南西から既往断層トレースとほぼ一致する地点の範囲を通る.このピーク周波数の急変は測点間隔を10 m程度にしても見出されることから,急変帯にて基盤深度が変化(南西側低下)していると考えられる.なお,急変帯のさらに南西側(概ね500m以上南西)ではH/Vピーク周波数は緩やかに高周波数化する.
この実体把握のために,S波反射法地震探査を実施した(吉見ほか,2025JpGU).延長約298 mで,傾斜部,耕作地部および農道部で構成される.傾斜部は宮下ほか(2013)による群列ボーリングが実施された場所であり,測線は国道495号線北東の未舗装道路と南西の舗装道路に設定した.農道部は用水路脇の舗装道路とした.その結果,測線上の3箇所に反射層の不連続部が認められ,不連続部を境に南西側(断面の左側)が低下する構造が推定された.不連続部のうち1箇所では,横ずれに伴う花弁状構造(フラワーストラクチャー)に相当するイメージが得られた.この花弁状構造の南西側では基盤深度が緩やかに浅くなる.追加で実施したボーリング調査では,この花弁状不連続部で正断層を伴う堆積層の試料が得られた.
以上のことから,西東ー大井の断層は,南西側低下の構造を伴うものであり,勝浦地区ではほぼ直線的に北西ー南東走向に延びると推定される.
謝辞:
福津市勝浦地区の地権者,耕作者の方々にご協力いただきました.S波反射法地震探査は阪神コンサルタンツが実施しました.本研究は産業技術総合研究所が実施する「防災・減災のための高精度デジタル地質情報の整備事業」の一環として実施しました.
西山区間の陸域北端部にあたる福津市勝浦地区では,西東−大井の断層と桂区−奴山の断層の2本の断層トレースが報告されている.このうち,西東−大井の断層は,谷の左屈曲に加えて南西側低下の地形を根拠に,断層トレースが北西ー南東走向の丘陵の南西麓に認定されている(千田ほか,2004).宮下ほか(2013)は,西東‐大井の断層のうち,複数の活断層図がほぼ同一地点に断層トレースを認定している場所で群列ボーリングとトレンチ調査を実施した.基盤岩内に断層が出現したものの,基盤を覆う地層(約5,000年前に堆積)には断層活動の痕跡は確認されず,基盤に顕著な上下変位は確認されなかった.
本研究では,西東ー大井の断層は北東側隆起を伴うとされることから,南西に広がる低地帯に断層が伏在している可能性を考えた.既往断層トレースの南西に広がる福津市勝浦地区の低地帯に着目し,基盤岩上面深度を調査した.
既往断層トレースの主に南西側の幅500m程度の範囲にて,3成分(水平2成分,鉛直1成分)の単点微動観測を観測した.使用機材は,固有周期10秒の3成分速度計(SE-321,東京測振製)およびGPS時刻校正機能付きのデータロガー(LS-8800,白山工業製)である.サンプリング周波数200Hzで1箇所につき15分間以上の観測を実施し,得られたデータを81.92秒間の区間に分割してH/Vスペクトル比を計算し,突発的な振動等のノイズがない区間について平均したものを観測H/Vスペクトル比とした.本地区のH/Vスペクトル比は,概ね単一のピークをもつ形状をしていた.
既往断層トレースに直交する複数の測線にて,H/Vピーク周波数が急変する領域が見出された.断層の北東側ではピーク周波数が2〜5 Hzであるのに対し,南西側では0.6〜1.2 Hz程度であった.このH/Vピーク周波数の急変帯は,概ね北西ー南東走向を有しており,既往断層トレースの100 m程度南西から既往断層トレースとほぼ一致する地点の範囲を通る.このピーク周波数の急変は測点間隔を10 m程度にしても見出されることから,急変帯にて基盤深度が変化(南西側低下)していると考えられる.なお,急変帯のさらに南西側(概ね500m以上南西)ではH/Vピーク周波数は緩やかに高周波数化する.
この実体把握のために,S波反射法地震探査を実施した(吉見ほか,2025JpGU).延長約298 mで,傾斜部,耕作地部および農道部で構成される.傾斜部は宮下ほか(2013)による群列ボーリングが実施された場所であり,測線は国道495号線北東の未舗装道路と南西の舗装道路に設定した.農道部は用水路脇の舗装道路とした.その結果,測線上の3箇所に反射層の不連続部が認められ,不連続部を境に南西側(断面の左側)が低下する構造が推定された.不連続部のうち1箇所では,横ずれに伴う花弁状構造(フラワーストラクチャー)に相当するイメージが得られた.この花弁状構造の南西側では基盤深度が緩やかに浅くなる.追加で実施したボーリング調査では,この花弁状不連続部で正断層を伴う堆積層の試料が得られた.
以上のことから,西東ー大井の断層は,南西側低下の構造を伴うものであり,勝浦地区ではほぼ直線的に北西ー南東走向に延びると推定される.
謝辞:
福津市勝浦地区の地権者,耕作者の方々にご協力いただきました.S波反射法地震探査は阪神コンサルタンツが実施しました.本研究は産業技術総合研究所が実施する「防災・減災のための高精度デジタル地質情報の整備事業」の一環として実施しました.
